<第46話>外務省をぶっ壊す!~私、美賀市議会議員選挙に出ます!~
月曜日~金曜日更新
この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
<第46話>
「なんでお前に自首してくるんだよ」
私しか知りえない「秘密の暴露」に卓谷は腹を抱えて笑っている。
「お前、この店、美賀署のオマワリの溜まり場らしいぞww」
告示日を明日に控え、最終調整と称して卓谷を県庁舎横のカレー屋に呼び出していた。
「な!」
それは知らなかった。
このカレー屋には以前、「女性の人権講座」で知り合ったマダムたちと一緒に来た事があった。
「ここの女将はねぇ」と女将がいる横で一人のマダムがもったいぶって切り出し「日本の政治家を育ててはんねん」と宣い、当の女将も「どや!」という顔をして頷いていた。
まだ私が30歳になる前の事だが、昨日の事のように思い出す。
「な、訳あるかい!」と当時思ったものだが、今でもそう思う。
店が県庁舎の横に立地しているのだから県庁舎に用事のあった市民がたまたまカレーの一つでも食べに来る事はあっただろう。
たまたまその中から議員になる者もいれば、県議会議員を目指す者なら尚の事、庁舎に来たついでにカレーを食べる確率も増すに決まってる。
美賀市に誰よりも貢献した辻崎巌は国会議員に選出されるべくしてなった人でカレーとは関係ない。
これはカーセックスの朝田海男も同じだ。
すべては店の立地条件に起因するもので、それを「日本の政治家を育てた」とまで言われたんじゃたまらない。
百歩譲っても三重県民しか来ない。
あと観光客がチョボチョボ来るくらいだ。
「だって、ここの女将は日本の政治家を育てているから口が堅いのよ!」
苦し紛れに言い返した。
事実、それを期待してのチョイスだ。
「お前、疑われてるのに、本当に脇甘ぇ~な!ははっは」
さらに大口を開けて笑う。
卓谷の指摘通り、私は明日、立候補届けを出すまでのあと数時間、警察から逃げ切らねばならないのに痛恨のミスだった。
見た所、警官らしき客もいない。
念のため小声で話す。
「でも確かにあったんだものDVのTシャツに1907イイネが」
「ほう」
卓谷は他人事のように言うが、実際他人事だ。
たかゑとは特に何の進展もない事を確認して、とにかく自分の気持ちを整理して落ち着かせるためにも自分の推理を市外在住で一応信頼のおける卓谷に話す事にした。
大輔から聞いた話しは墓場まで持って行くと決めていた。
「井戸の失踪にはやはり中山が絡んでるのよ」
「もう消されてるやろな」
「ちょっ、デカイ声で言わないでよ!」
「で、自分も消えたのよ」
「簡単にまとめ過ぎだろ」
確かにそうだ。
うまく説明出来ないが、最初の点と終わりの点を繋ぐとそうなる。
「プロセスが大事だぞ!俺はいつも若い衆にそう言って教育してる」
「ああ、そう」
「だから、中山さんは辻崎さんに凄い恩があって、井戸が命の恩人の辻崎さんを虐めてるからチョメチョメしたのよ」
首を掻っ切るDEATHのジェスチャーをして見せた。
「でも中山も『美賀市に愛は無いのかー!』って辻崎さんにゲバ棒投げてたんだろ?」
「んなもん知るかよ!って話しだろがw」
ガハッハアアと大笑いして大盛りカレーを私に奢らせ、話が終わる前に仕事に行ってしまった。
全ての種類がトッピングされた大盛りカレーは高額になっていた。
「もし私がマグレで当選したら私もここの女将に育てられた事になるのか?」
そう思うと結構高い授業料だなと苦笑するしかなかった。
つづく。
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