去年の夢日記
夕闇の中、橋を探してふらふらと歩く。気がつかないうちに蜘蛛の巣が身体に絡みつく。ねばねばと強くて気持ちが悪い。
そんな夢を見て起きたら夕食は納豆だった。
初夢がどうとか、この時期は普段よりみんなが夢についてツイートをして、読むのが楽しい。
年末に、長い夢を見た。
それは気まずさから始まった。
菊地さんというすてきな男性とゴツゴツした木のテーブルに向かい合ってランチをしよう。というのに、わたしたちの隣に座っているのは菊地さんがもともと関係を持っていた人だ。わたしは彼女を知っている。
彼女から菊地さんを奪うつもりは、八割方、無かった。八割方というのは、こんなにうまくいくとは思ってはいなかった、ということだ。きっと軽薄な菊地さんのほうがもう彼女に飽きていて、渡りに船とわたしの方へなびいてきたのだろう。わたしが奪ったというより、菊地さんの方が渡ってきたと思っている。
そうはいっても彼女と横に並んで菊地さんと昼食を食べるのは本当に気が引けて、菊地さんに話しかけられてもわたしは小さな声で「うん」とか「はあ」とか返すことしかできず、早く食べ終わってこの場を去りたい気持ちしか無かった。
食事が済み、菊地さんがわたしをお店の二階へと誘う。ここから離れられることに、ホッとする。明るいテラスのある一階と違い、お店の二階は窓を閉めきっていて、橙色の光が重くたゆたう。ここではみんなお酒を飲んでいる。
わたしが菊地さんの左隣に座り、ビールを飲み始めると、彼女が一階から上がってきて、とんでもないことに彼の右隣に座ってお酒を注文するではないか。一階ではこそこそとわたしに楽しげに話しかけてきた菊地さんは、今度は右隣の彼女と何てことなかったかのように笑い、話し始める。彼女もとても楽しそうに、まだ菊地さんが自分のもののように親しげに笑う。わたしは左隣でぽかんとビールを飲んでばかりいる。
いつのまにかわたしの左には菊地さんの知り合いの女性(また女性だ!)が座り、かわいそうに思ったのか、わたしと文学の話をしてくれる。左の彼女は、若い頃の山田詠美に似ている。
小一時間ほど山田さんとばかり話をしていたわたしの口に、突然菊地さんの指が押し込まれた。目を右に向けると菊地さんは右の彼女とまだ話し込んでいる。菊地さんの指だけが、わたしの口の中に差し込まれ、ゆっくりと動く。とうとう菊地さんに構ってもらえたことが嬉しくて、わたしは夢中で、少し上を向いて舐める。ご褒美をもらった犬のように、でもはしゃぎすぎず指が動く感覚を楽しみながら舐める。山田さんが文学の話を続けながら時々、「よかったわねぇ」とわたしを撫でる。ビールの酔いと、こちらを見ずにのんびりかき回す菊地さんの指と、親密な山田さんの眼差しに、わたしはうっとりとしてほとんど意識が無くなりそうに…
ひさしぶりに長い夢を見た。