映画館のみかん
先日、映画館で。
上映が始まり、突然柑橘の香りがふわりと漂った。
マンダリン…
アロマグッズ、なにかハンドクリームのようなものをだれかが出してきたんだろうか。とても香りが強い。ちらりと左二席離れた隣を見る。
みかん。
ご婦人がみかんを食べている。
アロマグッズじゃない。果実そのものを楽しんでいる。
映画館では上映前に鑑賞マナーについてアナウンスがある。携帯電話はオフにし、前の席を蹴らない、周りの人とお喋りしない、ビニール袋などカサカサ音がするものには気をつけて、飲食はなるべく音を立てないように。
さあみかんはどうだ。
袋に入ったスナック菓子と違い、取り出すときにガサガサ音が立つものではない。
でもとても、香りが良い、良すぎる。
こうやってわたしの意識の半分はみかんに侵食されている。みかんを食べるそこのご婦人。あなたが思うよりもそのみかんは香りを放っている。
みかんか、難しいな…
作品を楽しみながらみかんのことも考えてしまっていた。
しばらくしてご婦人はみかん2つめを食べ始めた。これはあやしい。みかんをずっともぐもぐするなんて映画館での佇まいとして、なにか反しているものを感じる。このスクリーンは人の家のこたつの前のテレビじゃない。
わたしのその予感はあたった。彼女はひとしきりみかんを楽しんだあと、ビニール袋をガサガサ言わせてほかの食べものを取り出し始めたのだ。
だからみかんは1つまでならふつうの人。
2つからは要注意、要観察、ということに心中で決めた。みかんは美味しいし大好きだけど…
(悲しいことにガサガサ音が続いたのでご婦人に注意する羽目になった)
(こういうことを注意しなくちゃいけないのは悲しい)
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