審美眼
先日、岐阜・多治見のモザイクタイルミュージアムに行った。タイル好きの天国。ミュージアムの建物としての面白さもあり、かなり好みだった。
展示をひと通り見終わり、一緒に行ったぽんちゃんに誘われて、タイルグッズ手作り体験を申し込むことになった。
ためらった。なぜならわたしは美しいものが好きだからである。できる限り美しいものを見ていたい。そして、自分が不器用であり、美しいものが好きなことと美しいものを作り出せることはイコールではないことを知っているからだ。
そんな気持ちは、手作り体験をしながらもモヤモヤとして消えてくれなかった。
木のフォトフレームに小さなタイルを乗せていく。
木工用ボンドでくっつける前に、フレームの上にタイルをいくつも置いてみる。絶望的だ。つらい。センスが無いんだ。無いんだよ。
「つらいよ」
実際に声に出していたと思う。
わたしたちの前に座って、同じようにフォトフレームにタイルを乗せていたカップルの男の子のほうも同じように、つれぇーおれセンスねーと言っていた。
みんな、美しいものが好きで、凡庸な自分を見たくないのだ。
保母さんのようにおおらかなぽんちゃんになだめすかされ、ああでもないこうでもないとタイルの配置を変えていくうちに、凡庸さに目が慣れてきた。
家に持ち帰ると、生活感たっぷりのごちゃついたわが家に凡庸なフォトフレームが良く馴染む。卑下しているのではない。馴染んでいる。世界にひとつだけの、わたしの凡庸な生活感。
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