人生の終わる音
友達のAちゃんとランチを一緒に食べた。
仕事の合間に、自分に戻れる時間だ。
Aちゃんは大学時代からの友達で、お互い別々の土地で働いていたのだが、去年からわたしがこの辺りで働きだしてから職場エリアが一緒になったのだ。
今日のように時々会ってお昼を食べている。
なんとなしに、人生の終わりの効果音の話になった。
「ひとしくん人形みたいにボッシュートで終わりたいな」
「タラッタラッタ〜ンて音で終わるん」
「没するねんなそのまま。
ほんであれでもええな、のど自慢の鐘の音」
「鐘なんぼ鳴らしてもらうん」
「カンカーン でええな」
「来てくれてありがとう〜くらいやん」
「そんな感じでええで人生」
こういう話とか、彼女の入試前警察事情聴取大事件の話とか、ゲラゲラ笑ってコーヒーを飲んで、それぞれのオフィスに戻るのだ。
14時過ぎだろうか。
黙々とキーボードを叩いて時々肩も揉んで画面をにらんでいると、打ち合わせブースがある方向から、ちりん、と音がした。
わたしの前に座っている2人と左手のパート仲間とで顔を見合わせる。
「…風鈴?なわけないか」とジョギングが趣味で真っ黒に日焼けして余計な脂肪分の無いNさんが笑う。
音のした方向は薄暗く、人はいない。
窓は開かない。
誰かのスマホの着信音だろうか。
だとしたら渋すぎませんか。
誰かが風鈴を付けたのだろうか。
打ち合わせブースに勝手に風鈴を付けてはいけない。風も吹いていない。
ふとAちゃんと、人生最後の音の話をしたことを思い出す。
あ、まだもう少し生きたいです、と薄暗いブースの方向を目の端で見ながら思う。
でも、ちりん、で終わるのはすっきりしていていいかもしれない。
#日記 のような
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