夫婦関係に悩む男性が最初に手に取る本を目指して
とっくにコーヒーは冷めきり、3時間もスタバの固い椅子に座っていたぼくのお尻は石のように固くなっていた。
(やっと書き終わった……。)
ぼくは8万字を超える記事を書き終えたところだった。
冷たくなったコーヒーを喉に流し込み、雨に打たれる窓から外の通りを眺めた。
時刻は19時半、ぼくと同年代の30代、40代の男性たちが黒い傘を差して家路についている。
ぼくはラップトップをリュックにしまうと、すれ違った店員に軽く頭を下げ店を出た。
1年2ヶ月間かけて書き上げた記事は、妻との関係に悩む男性に向けて書いたものだ。夫婦関係改善のために調べた内容をこれでもかと詰め込んだ。
人類学、心理学、社会学の本を読みあさり、自分自身の体験も盛り込みながら「産後の夫婦関係改善方法」を男性視点で書き上げた。
当時はこの8万字の記事さえ書き上げれば、妻との関係に悩むすべての男性の悩みが晴れると思っていた。
確かにこの(あまりにも長すぎる)記事を読んだ方から、参考になったという声をいくつかもらったことはあるけれど、「夫婦関係を改善できた」という声をもらうことはできなかった。
その後も定期的に夫婦関係改善のヒントになる記事を書き続け、noteのサークル(今のメンバーシップ)を使って、夫婦関係に悩む男性の相談にも乗るようになった。
だけど、ページビューが大きく伸びることもなく、相談者さんの夫婦関係が改善されることもないまま、いたずらに時間だけが過ぎていった。
(ぼくは独りよがりのムダなことをしているのかもしれない……。)
そんな焦りを感じながら一年が経ったころ、ついに一人の相談者さんが絶望と思われるような夫婦関係を改善させることができた。
心から嬉しかったこの出来事を通して、ぼくはもっと多くの方の夫婦関係を改善させたいと願うようになった。
どうすればそれを、ただのサラリーマンであり、3人の子どもの父親でしかないぼくにできるのか?
3年前、固いスタバの椅子に座って8万字の記事を書き上げた日から、ぼくはずっと悩みのなかにいるけれど、それがぼくにとっての”踏み出した一歩”だったことは確かだと思う。
どうすれば、なにものでないぼくが、多くの男性の夫婦関係の悩みを解決させることができるのか?
この記事では過去にぼくが行ったチャレンジやその結果、これからやる予定のことについてまとめようと思う。
同じように、”なにかを変えたい”と願っている”なにものでもない一個人”の参考に、少しでもなれば幸いです。
まったく読まれない記事たち
(こんなに役立つことを書いているのに、なんでまったく読まれないんだろう……。)
冒頭の8万字の記事は検索で多少は引っかかるようで、少しは読まれるのですが、そのあとに書き始めた記事たちは悲しいほど読まれませんでした。
改めて読み返してみるとあまりの読みにくさに嫌になるほどですが、当時はなぜ読まれないのかよくわかっていなかったんです。
いっこうに読まれない記事を1年半ほど書き続け、もうやめてしまおうかと悩んでいたころ、編集者である野本響子さんが執筆サークルを始めるという投稿を読み、勇気を出して参加してみることにしました。
結果的にこれがぼくにとって大きな転機になりました。
執筆サークルのおかげで、ぼくはいままで”読まれる努力”をしていなかったことが、よくわかったんです。
「記事が読まれる」ためには、あたりまえですが「読まれるための工夫」をしないといけなかったんです。
ぼくはそれまで役立つことを書いていれば自然と読まれるようになるだろうというおごりがあったんだと思うんです。
冒頭の引き込み、こういった人に届けたいという読者を想定した文章や画像の選び方、気になるタイトルのつけ方。
まだまだ習得できてはいないけど、サークルの皆さんからいただいたアドバイスをもとに試行錯誤を続けたところ、少しずつ読まれるようになっていき、500を超えるスキをいただけた記事も出てきました。
1年半前とは違い、夫婦関係に悩んでいる方に自分の情報が届き始めた手応えを感じ始めたのもこの頃でした。
13秒でリスナーが消えたポッドキャスト
もっと多くの夫婦関係に悩む人たちに情報を届けたいと思い、ポッドキャストも始めました。
ポッドキャストはデータ分析を細かくできるので、noteよりは分析がしやすく、自分でも改善がしやすいと思います。
でも、文章と違って「話す」ポッドキャストは聴かれなかったときの辛さがすごく強くて、最初の頃は先の見えない暗闇に向かって話しているような孤独感がありました。
ぼくの一番最初の放送回なんて、開始13秒で半分のリスナーが消えて、10分後にはすべてのリスナーが消えていますからね。
その後はこの記事に書いたような施策を打って、なんとか盛り返しましたが一番よかったなと思ったのは、臨床歴25年の大ベテランの臨床心理士さんにインタビューをしたことでした。
臨床心理士さんにご出演いただいた放送回は離脱率が低く、今でもよく聴かれています。
せっかくなのでポッドキャスト収録内容をもとに、記事も書かせていただきました。
ポッドキャストは狭く深く刺せるメディアだと思うので、続けていけば届けたい人たちには届けられると思います。
ただ、マネタイズの仕組みが整っていないので参加者が少なく、そのため聴く人もブログと比べても少ないのがネックですが……。
noteはマネタイズ機能がありますが、ポッドキャストはまったくないんです。やってもやってもお金にならないことを続けるのって、それが好きじゃないと続けられないですよね。
お金にならないわ、聴かれないわで、初期の頃は本当に辛かったです。いまでも辛いときはありますが。
ただ、マネタイズの仕組みが整ってくると、参加者とコンテンツ数が増え、それにともない聴く人も増えるでしょうけど、競争率も上がるんでしょうね……。
でも「自分の声」というのは、記事と違って自分の熱量をそのまま伝えられるので、個人で特定分野の発信をしたい人には向いているんじゃないかなと思います。
いまなら発信者も少ないので競合も少ないし。
あと、ポッドキャストって、米国広告業界で注目されているらしい「オーセンティシティ(Authenticity)」の概念にも通じるものがありますよね。
ウソをつかず、背伸びをせず、発信を続ける
ぼくがやっている夫婦関係相談って、はっきりってうさんくさい人たちもたくさんいる世界なんですが、そんな中でご相談者さんがぼくにご連絡をくれるのは、ポッドキャストとnoteを通じて、ぼくの「オーセンティシティ」に触れてくれているからじゃないのかなって思ったりもしています。
インタビューを受けてくださった臨床心理士さんも、ぼくのnoteとポッドキャストを聴いてくださっていたので、インタビューの承認もすんなりいただくことができました。
アフィリエイトや広告費目的じゃなくて、「夫婦関係に悩む人を減らしたい」という気持ちでnoteやポッドキャストを続けてきたことがよかったんだと思います。
昔、wordpressでブログを作って、アフィリエイトリンクを貼った子どものおもちゃのレビュー記事を書いてお小遣い稼ぎをしていたことがあったんですね。
今でもそんなことばかりしていたら、相談者さんからの連絡もなく、臨床心理士さんへのインタビューもできなかったんだと思います。
自分が感じたことを、自分が大切だと思うことを、伝わる工夫をともなって伝えていくことで、自分のオーセンティシティをわかってもらえるようになるんじゃないかなって思っています。
愛着理論にたどり着く
インタビューを受けてくださった臨床心理士さんは、”愛着理論”というものをもとにカウンセリングをされているのですが、これがぼくにとっては大きな発見でした。
いままでは、自分の体験や読んだ本の内容をもとに相談者さんに夫婦関係のアドバイスをしてきたのですが、”愛着理論”を知ったおかげで、夫婦関係悪化の原因と対策を理論立てて学ぶことができたんです。
それまでは夫婦関係の相談を受けたときに、(いったいどうすればいいんだろう…?)と悩んでしまうことがあったんですが、最近では愛着理論に照らし合わせて考えると、答えが見えてくるようになってきました。
愛着理論については、この本がおすすめです。
ポッドキャストでは312話から338話にかけて本の解説をしています。
愛着理論にもとづいたアドバイスをするようになってから、夫婦関係を安定させることができた方が増えてきました。
過去のご相談者さんを振り返っても、妻との関係を改善させるために必要だったのは愛着であったり、お互いへの信頼だったんだと思うんです。
出版を決める
noteとポッドキャストで夫婦関係に悩む方たちにリーチしようとがんばってきましたが、それはこれからも続けるのですが、夫婦関係改善方法を一冊にまとめた本を出版することを決めました。
実際に夫婦関係に悩まれている方にお話を聞くと、「まず本を探す」ことが多いんですね。ぼくもそうでした。
次にネットで参考になりそうな記事を探すのですが、ぼくのnoteを発見してもらえるのはネットで散々さまよったあとなんだそうです。
ですので、夫婦関係に悩んだときに最初に探す「本」を出すことにしたんです。
過去に書いた8万字の記事を再編集して、少しずつ編集版の記事を公開していき、最後に一冊の本としてまとめます。
編集者の方の力も借りながら、読まれる工夫を凝らして、ちょっと時間はかかるかもだけど、「妻との関係に悩んだときに最初に手に取る本」を目指してがんばっていこうと思います。
ただのサラリーマンでしかなく、単なる3人の息子たちの父親でしかないぼくですが、夫婦関係に関する思いは誰よりも強いものがあるので、多くの夫婦の悩みを解決できるような本にしたいなと思うんです。
3年前、スタバの固い椅子に座り、8万字の記事を書き上げた一歩から始まった道を、まだまだ歩いていこうと思います。
出版用の記事はこのマガジンに無料でまとめていきますので、夫婦関係に悩む方の参考に少しでもなれば幸いです。
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