正しいモノを作ろう~要件定義の難しさについて~
大手電機メーカーでエンジニアをしている あつ(@atsu_zukai)と申します。モノづくりに限った話では無いですが、ユーザー(お客様だったり、場合によっては上司だったり部下だったり)の要求・意図を汲み取り切れず、結果としてちょっと残念な結果になってしまうことってありますよね。
ユーザー側の意図が固まっていない(または曖昧)ということも往々にしてあるとは思いますが…。そのような不確実な情報、さらに将来を予測することが難しい現代においては、”要件”を整理し、真に求められている正しいモノ(またはサービス)を提供する力が必要不可欠となってきています。
本記事では、要件定義の重要性と、失敗しないためのポイントについて解説します。
1.要件定義の不十分さによる失敗
「おししいカレーを食べたい」というAさんのRequestの例を考えてみます。これに対しBさんは、自慢の ”おいしい欧風カレー” を提供しました。しかし、Aさんが本当に食べたかったのは”グリーンカレー”だったようです…。
ここでのポイントは「Bさんは正しい方法でおいしいカレーを提供した」という点です。しかしながらAさんが求める真の要求を満足することはできませんでした。
「正しい方法で作る」ということと同時に「正しいモノを作る」という視点が大切ということですね。一般に「検証と妥当性確認(V&V)」と呼ばれる考え方です。以下で概要が解説されております。
2.「どう作るか」よりも「なぜ作るのか」
現代社会ではシステムが複雑に絡み合って全体を構成します。犬小屋が作れればログハウスは作れるかもしれませんが、その延長線上でスマートシティを設計すると確実に失敗することが予想されますよね。増改築を繰り返し、つぎはぎだらけとなった温泉宿のようなものでしょうか…。
技術者は特に「どう作るか(How)」をまず考えてしまいがちですが「なぜ作るのか(why)」に立ち返って考えることが大切だと思います。
3.ユーザーの要望とメーカーのギャップ
一般論になりますが、欧米ではユーザーとメーカーの役割がきっちり分かれていて”契約”という形でギャップが埋まった状態になります。
一方、空気を読む文化(必ずしも悪い面だけとは思いませんが)の我々は、ユーザーの要望とメーカーとの間にギャップがあるという前提を認識する必要があります。
その前提の上、ギャップを埋める作業(スキル)がメーカー側のバリューと考られるのではないでしょうか。情報を押し上げ、真の要望を聞き出す能力が必要不可欠と考えます。そのためには、多角的な視点で物事を捉え、本来の目的を意識する(常に意識する)ことが大切です。
4.要件定義のポイント
(1)目的思考と全体俯瞰
真の要望に応える(要望を聞き出す)には、解決策の前に本来の目的を考え、明確にすることが大切です。また、それを常に意識していないと気づかぬ内に方向性がずれる可能性があります。
(2)多様な専門分野を統合
先の読めない複雑な現代(複雑なシステム)において、独自の専門分野だけで問題を解決するのは難しくなってきています。多様な分野の知見を統合することが必須です。
(3)抽象化・モデル化
多視点から対象を抽象化・モデル化し、システムを明らかにする必要があります。また、抽象化したモデルを通せば、異なる分野での共通理解を深めることが可能となってきます。
(4)反復による発見と進化
進捗の中で、適切に再評価し結果にフィードバックしていくことが重要です。それによって新たな発見・進化へつなげることが大切ですね。
それではまた!
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