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【Fit to StandardでのERP導入 その1】 ERPの真価、見逃していませんか?

日本の企業において、基幹システムとしてERPが導入されるようになってから長年が経過していますが、当初期待したような業務効率化の効果を実感できていないケースも多く耳にします。なぜでしょうか?
多くの日本企業では、業務に合わせて様々なカスタマイズが施され、個社ごとに特化したシステムが構築されることで、ERPは業務遂行においてなくてはならないツールとなっています。
しかし、このことはシステム全体の複雑化を招き、企業全体の情報を統合して迅速な意思決定を支援するというERP本来の目的から遠ざかっていることを意味しています。
 
こうした状況を招いた原因と、その解決策を詳しく見ていきましょう。


図1:日本流ERP導入の移り変わり(アットストリームコンサルティング㈱作成)

1.日本流ERP導入(黎明期)

高度経済成長期、日本企業は独自の業務プロセスを構築し、それにより競争力を高めてきました。この業務を支えるために、基幹システムはスクラッチ開発によって、自社の業務に最適化・効率化された形でオーダーメイドで構築されていました。1990年代にERPが導入されてからも、多くの企業は過去の成功体験にとらわれ、従来の業務にシステムを合わせるべきとの方針から脱却できず、ERPの標準機能を十分に活用できませんでした。
 
これはERPを単なる開発ツールと捉えてしまった結果であり、自社の業務に合わせて過度なアドオン開発を行った結果、システムが複雑化し、開発コストの増大や保守性の低下といった問題が発生しました。このため、ERP導入の効果を十分に得られず、スクラッチ開発と大差ない状況に陥った企業も少なくありませんでした。

2.日本流ERP導入(転換期、近年)

近年、日本企業のERP導入は転換期を迎えています。従来の日本流ERPからグローバルスタンダードへの移行が求められる中、多くの企業が「Fit to Standard」を掲げながらも、完全な標準化には至らず、様々な課題を抱えています。
 
特に、現行システムをベースに新システムの要件定義を行うことで、ERPとの間に大きなギャップが生じ、多くのアドオン開発が必要になるケースが散見されます。この結果、開発費用が膨大になり、プロジェクトが遅延や、中止に追い込まれるケースも少なくありません。

3.真に「Fit to Standard」を実現するための取り組みポイント

ERP導入における「Fit to Standard」は、単なるシステム導入ではなく、業務そのものを標準化し、企業全体の変革を促す重要な取り組みです。しかし、その実現は容易ではありません。
 
多くの企業で活用されているグローバルEPRの標準業務は、欧米の業務に基づいて設計されています。そのため、日本企業において真に「Fit to Standard」を実現するには、標準プロセスの導入だけでなく、特定の業務にはJapanizeさせる工夫も必要になります。
 
本稿では、ERP導入を成功に導くための3つの重要な取り組みについて解説します。

図2:ERP導入の3つの重要な取組み(アットストリームコンサルティング㈱作成)

①『現行機能』の縛りから脱却せよ!

ERPの導入は、業務プロセスを見直す絶好の機会になります。現行の業務に固執せず、ERPの標準機能を最大限に活用することが重要です。競争力の源泉となる強みは維持しつつ、それ以外の業務はERPの活用を通じて標準化を進めることで、業務効率を大幅に改善することができます。

②スローガンを掲げろ!

「Fit to Standard」を成功させるためには、全社一丸となって取り組む姿勢が不可欠です。そのため、プロジェクトの推進方針を明確にし、トップダウンで社内展開を進めることが重要です。スローガンを掲げることで、社員一人ひとりが共通の目標を持ち、その実現に向けて高い意欲を持って取り組むことが出来ます。

③一つの巨樹だけでなく森を見よ!

業務全体を標準化するためには、ERPの導入だけでは不十分です。基幹システムには密に連携している周辺システムが多数存在しており、ERPとスムーズに連携できるように周辺システムの対応方針も合わせて整理し、実現することで、企業全体の業務効率化と生産性向上を実現できます。
 
これらの取り組みは、ERP導入における成功の鍵となります。
 
単純にERPをFit to Standardで導入するのではなく、日本企業が培ってきた歴史に根ざした『強み』を損なうことなく、それを活かす形でJapanizeされた真に「Fit to Standard」に沿ったシステムを構築することで、従来のERP導入と比べて、競争力の維持・強化や、グループ経営基盤の強化、変化への対応スピード向上などの効果を期待できます。

図3:Japanize Fit to Standardの効果(アットストリームコンサルティング㈱作成)

次回以降では、前述の各取り組みについてより詳細に解説し、具体的な進め方についてご紹介します。 


アットストリームコンサルティング株式会社
ITシステム導入の構想策定・計画立案支援サービス


投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社
シニアマネジャー 安田 悠生

複数の大手Sier会社を経て、アットストリームコンサルティング株式会社へ参画。基幹業務のシステム構想策定、プロジェクトマネジメント支援、業務改革などに関するコンサルティングサービスを提供。


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