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DX Column 第五回:DX推進の処方箋【前編】~なぜ企画倒れなのか…DX組織の役割は?~


抜け出せない企画倒れの渦…

“DX”は、多くの企業や多くの方が認知し、言葉としては浸透しているものと思われます。但し、DXという言葉の意味するところは、企業の捉え方によって様々であるという状況です。そのような中で、本社部門、事業部門それぞれでDXに関する数多の施策や取組みが企画され、プロジェクトとして進められているかと思います。

特に業務部門においては事業の遂行がミッションの中心である事が多く、ITやDX等のデジタルに関するノウハウを持ったメンバーは数少ないのではないでしょうか。近年では、DXと名の付く組織も定常的に運用されるようになってきましたが、ITやDXの知見や経験が十分ではないケースも多いのではないかと推察されます。そのため、施策や取組み推進の前段であるDX企画や構想が不十分なまま試行を進めてしまい、企画倒れとなるものが山積みとなり、その渦に飲み込まれてしまう事があると推察されます。

そのような状況の中では、せっかく企画しても発展性が見いだせないプロジェクトとなってしまったり、個々の企画を全体として把握する事ができず、バラバラにプロジェクトが進められ、その成果を統合的・効果的に活用できない状態となってしまう事が起こります。

図1:DX施策の企画における典型的な課題例
(アットストリームコンサルティング㈱作成)

それでも、企業が持続的な成長を実現するためには、DXが最も重要な要素である事は事実であり、またその認識は共通化されています。Transformationの実現に向けて、統合的である事や発展性を踏まえて、確実に施策を企画し、効率的にプロジェクト化していかなければなりません。
そのためにも、DXの立ち上げから推進を担う組織を機能的に運営し、常に強化する事が不可欠なのです。

DX組織に求められる役割

冒頭にも記載した通り、DXの名の付く組織が設置され、運用される事が当たり前になっている中で、それらの組織は機能しているのでしょうか。組織を設置したものの、想定された動きになっていないケースが多いのではないでしょうか。そもそも、“何を”想定してDXに関連する組織を設置したのかが不明確なケースもあるのではないかと推察されます。
グループや企業全体、事業や部門いずれの範囲にも共通するDX関連組織の役割は大きく2つの側面があります。

ひとつ目は、DX戦略の浸透及び施策の企画・推進の役割です。グループや企業全体を対象とするDX組織の場合は、DX戦略そのものの立案やどのように戦略を展開し、浸透させていくかの検討、計画立案実行、管理が必要となります。それだけでなく、グループや企業全体でのDX施策の企画立案、推進とそれぞれの施策の管理運営も大きな役割と言えます。
また、事業や部門では、組織内におけるDX施策の企画立案、推進だけでなく、グループや企業全体でのDX戦略を浸透させる役割を担うのです。特にDX施策の企画、推進では「抜け出せない企画倒れの渦…」に飲み込まれないように運営する事が求められます。

ふたつ目は、組織・人材のリテラシー向上の役割です。グループや企業全体、事業や部門いずれにおいても、Transformationを加速・実現するために、組織のDX成熟度、組織を構成する人材のDXスキルを高める事が必要となります。そのためには、組織成熟度、人材スキルを適切に把握し、レベルアップのための打ち手を講じるだけでなく、それらを管理する事が求められます。また、社内外のデジタル知見を集積し、伝播する事も重要な役割であると言えます。

意思決定の権限を持て!

前述した役割を遂行するうえでDX組織に必要となる機能は何でしょうか。最も重要となるのは“意思決定”であると言えます。
グループや企業全体に対しての役割を保持するDX組織は全社に対して、事業や部門に対しての役割を保持するDX組織は事業に対して、従来の情報システム部門が保持している機能を超えて、横断的に意思決定が可能な権限を持つ事が必要となります。
そのためには、当然ながら経営がDX組織に対して意思決定の権限を持たせる事が必要不可欠なのです。経営から権限を与えられたDX組織はよりオープンな環境で、DXに特化した組織運営を求められます。

さて、意思決定の権限を持ったDX組織はどのように運営していけば良いのでしょうか。
DXを推進するために、これまで情報システム部門で行われていたIT企画とは異なる、よりオープンな発想と多様な知見を統合した創造的なIT企画を担う環境を持つ事が重要となります。このような環境を持つ場をWar Roomと呼びます。

<War Roomが持つ環境>

  • 課題に対する解決策を集中的に検討・決定する場

  • 多様な組織の関係者が議論に参加する場

  • 仮説検証のためのプロトタイプやデータ分析を行う場

  • 外部専門家や協力会社へも参加機会を提供する場

このような環境を保持し、効果的に闊達な議論を行うためには、以下の4つの要素が必要不可欠なのです。

1.オープンな参加体制

  • 組織、役職だけでなく、外部専門家や協力会社等所属に捉われない議論の場の提供

  • 率直な議論ができる風通しの良い雰囲気作り

2.アジャイル運営

  • 短期間での検討→実行→改善サイクルの繰り返し

  • 失敗を許容し、素早い改善の実行

3.課題駆動型アプローチ

  • 現場の具体的な課題に注力した検討

  • 実務視点を重視した課題の取り扱い

  • 定期的な進捗共有とフィードバック

4.柔軟な環境設計

  • 議論の場における自由な発想を促す空間の提供

  • オンライン参加も可能とする多様な参加形態の提供

これらの要素を前提として、意思決定可能なDX組織が環境を整えて運営する事で自由な発想と知見による課題の特定とデジタルを活用した解決策の立案を可能とし、アジャイルでスピーディな検証をサイクル化する事でグループや企業、事業や部門全体でTransformationを加速する事が期待できるのです。

前編では、多くのDX企画が企画倒れとなる要因やDX関連組織が本来持つべき役割について考えました。後編ではどのようにDX関連組織を運営すべきかについて、考えてみたいと思います。


アットストリームコンサルティング株式会社
DXアクセラレーションサービス

問い合わせ先:scnote@atstream.co.jp


投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社 マネジャー 原 佳広

㈱ビジネスブレイン太田昭和にて業務改革分野のコンサルティング、㈱ニトリホールディングスにて需給管理業務、経営企画業務等を経験し、アットストリームへ参画。中小企業診断士。


投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社
       執行役員・マネージングディレクター 北山 雄介

㈱長谷工アーベスト、不動産系SI会社、PCWORKS(現㈱ベイカレン
ト・コンサルティング)、日立コンサルティングにて様々なプロジェクトの企画・実行を経験し、アットストリームへ参画。DXアクセラレーションサービス責任者。