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【Fit to StandardでのERP導入 その2】 『現行機能』の縛りから脱却せよ!
前回の記事では、日本企業がERP導入において直面している課題について取り上げました。特に、「Fit to Standard」と乖離した導入方法が原因で、ERP本来の効果を十分に発揮できていない現状に着目しました。この状況を打破し、ERPの標準機能を最大限に活用し、業務効率を改善するために、3つの重要な取り組みを提示しました。
(前回の記事はこちらからどうぞ)
今回は、業務変革を目指したものの、最終的には現行機能に似たシステムを再構築してしまうという課題に焦点を当て、「『現行機能』の縛りから脱却せよ!」というテーマを深堀し、業務変革を行うための具体的な方法について解説していきます。
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1.現行機能の縛りがもたらす影響
ERP導入などによる大規模なシステム刷新を行う場合、現行機能を維持することが制約となってしまうと、多岐にわたる悪影響を引き起こす可能性があります。
例えば、現行機能を維持し続けることで、市場が求める変化に迅速に対応できず、競合他社に遅れを取るといったリスクが高まり、ビジネスの競争力を損なう恐れがあります。
さらに、最新のテクノジーや新たなビジネス要件を組み込む際に、現行機能の維持が制約となるとシステムが一層複雑化し、メンテナンスや機能拡張にかかる時間と費用が増大する可能性があります。
これにより、いわゆる「技術的負債」が蓄積され、本来は企業の成長を支えるはずのERPが、逆に成長の阻害要因となる危険性が高まります。
このようなリスクを背負ってまで、現行機能を維持し続ける必要があるのでしょうか。
2.なぜ現行機能に縛られるのか
現行業務に精通したユーザーの多くは、これまでの局所的な改善によって、現行の業務が最適化されていると思い込んでしまっている場合がほとんどです。
その思い込みに加え、業務やシステムを抜本的に変更することで、自身の役割が奪われてしまうのではないかという強い不安感が存在します。
このような心理的要因が、新しい機能の導入に対するネガティブな反応を引き起こしてしまい、現行機能に縛られてしまうのです。
また、過去の開発経緯や判断基準が不明確なまま機能が引き継がれるケースも多いため、予算や期間の制約の中では十分な分析と検証を行えず、リスク回避的な判断として現行踏襲を選択することも頻繁に見られます。
現行機能を踏襲する背景には、現行機能を積極的に維持したいという強い意志があるわけではなく、変更を実行できないことが原因にあるのです。
3.縛りから脱却するための方法
現行機能を変更する際の判断基準として重要なのは、システムの本質的な目的を再評価することです。
「なぜこの機能が必要なのか」「どのような価値を提供しているのか」という根本的な問いに立ち返り、現行機能を一旦白紙の状態から見直すことが有効です。
システムは特定の目的を満たすための手段でしかありません。他の手段で同じ目的を達成できるのであれば、必ずしもその機能が必要であるとは限りません。
しかし、全ての機能に同様のアプローチを適用するのは、予算や期間の制約がある中で現実的ではありません。そのため自社の強みを意識し、濃淡を付けた機能整理が必要となってきます。
例えば「短納期での対応力」が、自社の強みであり、その機能がなければ競争優位性を損なう場合には、予算や期間を割いてでも適切な手段を検討する必要があります。一方で、競争優位性に直結しない機能であれば、ERPの標準機能を活用するなど、業界の標準的な解決策を採用した方が賢明です。多くの場合、既存機能に似たものをゼロから製作するよりも、効率的で大きな効果が得られます。
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(アットストリームコンサルティング㈱作成)
4.現行機能の縛りを捨てて業務変革意識を維持するための方法
業務変革意識を持ってプロジェクトに取り組んだとしても、長期化するプロジェクトの過程でさまざまな問題が浮上し、知らず知らずのうちに変革の意識が薄れてしまうことがあります。
その結果、プロジェクトの目的が業務変革を行うことで達成できるものであるにも関わらず、システム導入が目的となってしまい、現行システムと類似の機能を持つシステムを新規に構築しただけで、当初の目的が達成されていないプロジェクトが散見されます。
ERP導入のように数年に及ぶプロジェクトの中で、業務変革の意識を持続させるためには、定期的な意識づけが必要不可欠です。
例えば、プロジェクトの目的を、プロジェクトルームに掲示し、常に目に触れる状態にする。あるいは会議の度に検討対象の機能がもたらす価値を会議メンバー全員で確認してから議論を始めるなど、意識づけを習慣化することが重要です。
業務変革を目指す長期的なプロジェクトの進行中には、予期せぬ状況によりプロジェクトのスコープ、スケジュール、チームメンバーなどが変わることがあります。しかし、プロジェクトの目的は安易に変更せず、守り通す必要があります。
本記事では、現行機能の縛りから脱却して業務変革を実現するためには、システムの本質的な目的を再評価することと、プロジェクトの目的について定期的な意識付けすることの必要性について取り上げました。
定期的な意識付けを行う前に、まずプロジェクトの関係者が共通の理解を持ち、プロジェクトを進めるために、プロジェクトの目的を具体的に定める必要があります。
次回は、この点に関して「スローガンを掲げろ!」というテーマで詳しく解説します。
アットストリームコンサルティング株式会社
ITシステム導入の構想策定・計画立案支援サービス
投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社
マネジャー 竹中 均
![](https://assets.st-note.com/img/1734504824-8mgEtKVocCOP1RijQrpnJH46.png)
大手Sierを経て、アットストリームコンサルティング株式会社へ参画。基幹システム再構築のプロジェクト化支援、基幹業務のシステム構想策定、プロジェクトマネジメント支援に関するコンサルティングサービスを提供。
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