DX Column 第三回:なぜ“DX”は起きないのか?【前編】~Transformationを理解する~
トランスフォーメーション
第1回”DX”を進めるためには?で、ビジネスの世界ではDXを「デジタル技術を活用してビジネス(事業)変革する事」と表現しました。では、実際の現場で変革すなわちトランスフォーメーションは起きているのでしょうか。
ビジネスや我々の社会に影響を及ぼすようなトランスフォーメーションは、爆発的に起きているとは言い難い状況です。とはいえ、曖昧な表現になってしまいますが全く起きていないとも言い切れません。何故かというと、DXは「デジタル技術を活用してビジネス(事業)変革する事」ですが、DXを広義に捉え、企業の考え方に基づいた取組みそのものもDXであると言えるからです。
では、デジタルを活用したトランスフォーメーションにはどのようなものがあるのでしょうか。
オフェンスとディフェンス(Offense/Defense)
DXを分類する際、最も多く使われているものは「攻めのDX」と「守りのDX」ではないでしょうか。
攻めのDXは、フロントオフィスDXとも呼ばれ、デジタル技術を活用して、ビジネスそのものを生み出したり、これまでと全く異なるサービスの形を実現する事で、企業の収益構造や社会生活そのものにまで変化を及ぼす変革(=トランスフォーメーション)の事を指します。
守りのDXは、バックオフィスDXとも呼ばれ、デジタル技術を活用して、業務や業務プロセスを効率化したり、新たな組織の形を実現する事で、業務の在り方や仕事の仕方にまで変化を及ぼす変革(=トランスフォーメーション)の事を指します。
攻めのDX(組織外に影響する変革)と守りのDX(組織内に影響する変革)はターゲットによって分類できるのです。
本稿冒頭では、「ビジネスや我々の社会に影響を及ぼすようなトランスフォーメーションは、爆発的に起きているとは言い難い状況」と表現しましたが、その一因として、影響が組織外や社会そのものに渡るため、非常に難易度が高い攻めのDXであることがあります。
一方、「全く起きていないとも言い切れない」とも表現しました。これは、これまでも現在も効率化や生産性向上など、業務や組織、働き方に変化をもたらす施策はたくさん進められているからです。但し、これまでとは異なり、デジタル技術を活用し、より高度で強固な業務や組織を目指した取り組みを、守りのDXと呼びます。
DXの段階から見た分類
また、DXの状態を段階に分けて、Digitization、Digitalization、Transformationに分類するケースもあります。
経済産業省のデジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会では、Digitizationをアナログ・物理データのデジタルデータ化、Digitalizationを個別の業務・製造プロセスのデジタル化、Transformationを組織横断/全体の業務・製造プロセスのデジタル化、“顧客起点の価値創出”のための事業やビジネスモデルの変革、と定義しています*1。
もう少しわかりやすく、目的や達成状態を含めて表現すると、改めて以下のように定義する事が出来ます。
Digitization
自社の業務において、アナログでの業務や物理的な情報をデジタル化することで、業務の効率や情報の精度を向上させ、生産性を向上させる事と言えます。例えば、RPAの導入やペーパーレス等、これまでも当たり前のように進められていた施策もDigitizationに該当する施策であり、自社内部の生産性向上に寄与する領域です。
Digitalization
自社のビジネスプロセスにデジタル技術を有効活用し、製品やサービス・業務の価値を高める事と言えます。例えば、CRMに代表される顧客接点の改革やサービス提供モデルの高度化等の施策が該当します。この領域もこれまで取組みが進められてきましたが、新たなデジタル技術によってさらに高度化させる事で、内部の生産性向上だけでなく、顧客へ影響を与える領域です。
Transformation
新たなデジタル技術を活用し、既存の組織やビジネスモデルに捉われない新しい製品やサービスにより、自社のビジネスモデルそのものを抜本的に転換させ、業務だけでなく、制度や企業風土、収益の源泉までも変革する事で、自社の競争優位性を確立するだけでなく、顧客への新たな価値や体験の提供を実現する事であると言えます。Transformationは、これまでなかったサービスにより社会や生活にまで影響を及ぼす領域です。非常に難易度が高く、この領域こそが、DXは進めているものの、変革には至っていないと課題をお持ちのケースに該当するのです。
今の日本のX(トランスフォーメーション)レベル
では、「攻めのDX/守りのDX」と「Digitization / Digitalization / Transformation」はどのような関係にあるのでしょうか。
「攻めのDX/守りのDX」は、その施策が組織内外どちらに影響を及ぼすかという視点であり、「Digitization/Digitalization/Transformation」は、同様に組織内外への影響視点を持ちつつも、変革のレベルを表しているものと言えます。
すなわち、図1に示すような関係性にあるのです。
是非一度、本稿をご覧いただいている皆様の組織の中で進められているDX施策を、図1に当てはめてみていただければと思います。あくまで推察にはなりますが、左下の枠の施策が多くなっているのではないかと思われます。
推察の通りだとすると、左下の枠(守りのDX×Digitization)から右上の枠(攻めのDX×Transformation)の取組みを進めたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
右上の枠(攻めのDX×Transformation)は取組みを進めるうえでは、どのような課題があるのでしょうか。第一回:DXを進めるためには?で、挙げた代表的な課題の中で「デジタル止まりの施策」がありました。
「デジタル止まりの施策」は、多くの施策が企画され、推進されているものの、そのどれもが現状の延長線上でしか考えられていないケースで、どの施策も「情報のデジタル化」や「業務の自動化」の範囲に留まってしまうというものでした。すなわち、攻めのDX×TransformationをイメージしてDX化を進めようとするものの、守りのDX×Digitizationに留まってしまうという事です。
攻めのDX×Transformationは、推進だけでなく、その企画も難易度が高く、結果的に「情報のデジタル化」や「業務の自動化」の施策となってしまいがちです。(但し、「情報のデジタル化」や「業務の自動化」についてもDX施策である事は、本稿冒頭でも記載した通りです。)
では、どのように検討すると、攻めのDX×Transformationに近づく事ができるのでしょうか。
前編ではDXのステージや範囲から施策を分類を考えてみました。後編では、よりTransformationに近づくためのアプローチやそのポイントについて考えてみたいと思います。
アットストリームコンサルティング株式会社
DXアクセラレーションサービス
問い合わせ先:scnote@atstream.co.jp
投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社 ディレクター 北山 雄介
(株)長谷工アーベスト、不動産系SI会社、PCWORKS(現㈱ベイカレン
ト・コンサルティング)、日立コンサルティングにて様々なプロジェクトの企画・実行を経験し、アットストリームへ参画。DXアクセラレーションサービス責任者。