池袋駅が人酔いすると言われる理由を考えてみた
「池袋って人混みが多いから苦手」とたまに言われることがあり、いや、新宿とか渋谷の方が人とか多くないか?どうしてそうなの?ということを考えていました。そんな中、色々考えた結果なるほどと思ったので、書いてみようと思います。
1 1日の乗客人数
まず最初にどの程度人がその駅を利用しているのか?について確認します。(コロナで例年より少ないですが)2021年のJR東日本の1日の乗降人数のデータです。第1位は新宿駅の52万人、そして第2位が40万人で池袋、そして第3位が横浜30万人ということで池袋余裕の2位でした。それは混むと言われる理由もわかります。ヨドバシが、そごう・西武を買収するのもわかります。渋谷はJRだと少ないんですね。
これはJRだけの数字なので、ここにその他の私鉄・地下鉄も加えていきます。その場合下記の数字になりました。
■新宿駅(すべて2021年1日の乗降人数データより)
・丸の内線 160,781人
・小田急線 355,563人
・京王線 548,622人
・都営地下鉄(新宿線)219,197人
・都営地下鉄(大江戸線)95,507人
上記のJRと足しあげると・・・1,901,848人
■池袋駅(すべて2021年のデータ)
・西武線 355,767人
・東武線 351,651人
・地下鉄(有楽町・丸の内・副都心) 403,964人
上記のJRと足しあげると・・・1,518,872人
■横浜駅(相鉄線、京急線は2020年のデータ、それ以外は2021年)
・東横線 275,095人
・相鉄線 305,183人
・京急線 223,343人
・地下鉄 112,369人
上記のJRと足しあげると・・・1,219,749人
■東京駅(すべて2021年のデータ、東海道新幹線は概算)
・地下鉄丸の内線 131,037人
・東北新幹線 32,080人
・東海道新幹線 47,000人
上記のJRと足しあげると・・・492,755人
■渋谷駅(すべて2021年のデータ)
・地下鉄銀座線 131,457人
・京王線 235,291人
・東急東横線 338,257人
・東急田園都市線 490,046人
上記のJRと足しあげると・・・1,453,556人
つまり、JRの上位5駅のエリアの実際の乗降人数ランキングは下記となります。
1位 新宿 1,901,848人
2位 池袋 1,518,872人
3位 渋谷 1,453,556人
4位 横浜 1,219,749人
5位 東京 492,755人
渋谷は3位に上昇しました。が、私鉄や地下鉄を加えたとしても池袋2位となっています。これは混んでいると言われる理由は納得です。
2 上位駅の面積
次に、重要なのは駅の面積です。どれくらいの敷地の中にその人混みができているのか(=密集率)も考えてみようと思います。今回の方法としては、JRの駅を中心として、実際にgoogleマップで地図を出し、地図の尺度を同じにしながら、大体の駅の敷地をものさしで計算しました(かなりざっくりと)。では見ていきます。
① 新宿駅
最初に最も大きい新宿駅です。新宿駅はJRは8面16線という東京駅に次いで多い路線が走っている駅となっています。そして駅は南北を中心に広がっています。特徴としては、北はB1を中心とした地下で色々つながっており、南は2Fを中心に地上で繋がり、道路(甲州街道)に面しているところです。
② 池袋駅
池袋駅のJRは4面8線とやや多い路線が走っています。ただ、山手線が進行方向1つにつき1面(2線)を使っているので実質は4面6線です。駅の広さを見ると(利用者の少ないメトロポリタン口は例外として)基本はB1の構内でつながっており広場のようなものはありません。そのためJR駅としての東西への広がりは少ないです。元々からJRとしてターミナル駅の位置付けがなかったからでしょうか。なお、西は東武東上線、東は西武池袋線に挟まれています(どうして西が東武で、東が西武の駅があるのかは説明するとキリがありませんが、試しにChatGPTで聞いてみました)。
(が、まだ精度が悪かったので、こっちの詳しい記事を貼ります。)
どうやら東武池袋駅の方が先に西側にできて埋まっていたため、西武鉄道は仕方がなく東側に駅を設けたようです。
さて、話を戻すと、上記の記事でもあるように元々山手線で池袋駅を設置する予定がなかったことに加え、今や大人気路線である埼京線、湘南新宿ラインが池袋に乗り入れたのは1980年代後半ということもあります。そのため、ただでさえ狭い駅に、無理やり路線を増やしたために窮屈な状態になっていることが考えられます。
③ 渋谷駅
渋谷駅は3面4線の路線があり、駅の大きさは南北に大きく伸びています。また、ホームから移動し、地下に半蔵門線や副都心線などの地下鉄・私鉄、またさらに上には銀座線などが走っており、水平というよりも垂直に広い駅と言えそうです。
④ 横浜駅
横浜駅は4面8線の路線があり、駅の大きさは東西南北バランスよく伸びています。
⑤東京駅
東京駅は11面22線と最大の路線があります。駅の敷地も非常に大きく、関東随一の広さです。東西南北にバランスよく伸びています。ただ、京葉線だけが突出しておかしな位置にあります。下記の記事によると、どうやら元々成田新幹線?の駅という構想で、成田〜東京〜新宿と繋ぐためにあの位置に駅を建設していたそうです。ただその構想が何らかの理由で頓挫したため京葉線が乗り入れているそうです。なお1990年ごろから東京駅の乗り入れということなので最近のようです。
さて、上位の駅群を比べてみて分かったことは、池袋は、東京や新宿、横浜駅と比べて圧倒的に敷地が少ないです。渋谷と似ていますが、渋谷は上下を使うことにより敷地の狭さをカバーしていますが、池袋はまだできていなさそうです。つまり、これらの事柄から、
”池袋駅は敷地が小さいのに、多くの人が利用しているため混雑度/人口密集率が上がっている。だからこそ、人混み感を強く感じてしまう。”
ということが言えそうです。さて、自分の中で、さらにもう一つ窮屈感を感じさせてしまう理由があると考えます。それは「導線の複雑さ」です。
3 各駅の動線想定
今回各駅の構造を考えていくうちに一つのことに気づきました。それはどのように各路線の動線が設計されているか、ということです。もう一度それぞれの駅を考えてみます。
① 新宿駅
まず、最初は新宿駅です。JRの駅を中心に西側に京王線・小田急線、北側に丸の内線、そして南に大江戸線・京王新線(都営新宿線)が並んでいます。メインの繁華街としては歌舞伎町エリアです。実はこのエリアへ行くには、新宿駅だけでなく新宿三丁目駅を使うことができます。そのため、人流は両サイドから流れることにより少し穏やかになっています。
また最近の大きな駅の改装工事により、京王線・小田急線などの西側ユーザーが歌舞伎町エリアに抜けるための大きな通路ができました。
そのため、非常に通路の利便性が良くなりました。上記記事でもわかるようにかなり広いです。
そして、非常に重要なポイントですが、JRからの直接の乗り換え改札が京王線、小田急線と行われていることにより、この3路線を利用する乗り換え目的のユーザーは駅の外に出ることなく乗り換えができます。また、京王線は都営線と構内が繋がっており、ここも改札を出る必要がありません。
つまり、新宿は計測上の乗降人数が多いですが、実は構内だけで乗り換えていることに加え、人の流れが移動しやすいように設計してあり、実際に言われているほど混雑さをそれほど感じない街であると言えそうです。
② 池袋駅
そして問題の池袋。JRを中心にというかJRの構内(B1)の中に地下鉄丸の内線と有楽町線があります。そして、東に西武池袋線(乗り場はB1,1F)、西に東武東上線(乗り場はB1,1F)、丸の内線からさらに西に行くと副都心線があります(※ここだけホームで繋がっている)。一方で繁華街は東にあるサンシャインシティがある方角です。
各路線の乗り換えの距離は近くB1でほぼ移動は完結できるのですが、すべて改札を出てからの移動です。それに加え、繁華街を目指すためには、(西武線を除く)すべての人がB1のJR構内を通り抜けていかなければなりません。残念ながら、新宿駅に新しくできたような大きな通路はなく、東武東上線ユーザーが東側の繁華街に向かおうとした際は、南側通路は有楽町線とJR改札の間を通り抜けねばならず、真ん中通路は丸の内線とJR改札の間を通り抜けねばならず、どの通路を通っても乗り換えで出てきた人に遭遇します。通路も狭いのでかなり苦痛です。
一方で西武線からJRに乗り換えたい人は、その逆流が起こるので衝突がしやすいです(西武線改札前の異常に柱が多い問題は一旦置いておきます)。
つまり、コンパクトなように見えるのだが、狭い敷地を異なる目的の人が縦横無尽に歩き回るので、通路の統一性がなく歩きづらい構内になっていると言えそうです。
③渋谷
渋谷も狭い構内です。しかし面白いのは、大きな改札が、北側(渋谷ハチ公口,1F)、真ん中(渋谷スクランブル口,3F)、南側(1F)と存在します。繁華街は西側で、そのためには北側の出口を利用する必要があります。そのためほぼすべての人がそちらを利用します。ちなみに北側の乗り換え目的の人は田園都市・半蔵門ユーザーが中心です。とにかく人は多いけれども二つの目的を持った人しかいません。
一方、真ん中の改札は、銀座線、井の頭線のユーザーが多く、南側は東横・副都心線のユーザーが多いです。またそれらのユーザーが繁華街に行こうと考えた場合、銀座線、井の頭線のユーザーは井の頭線の方から街にでれます。また、東横・副都心線ユーザーは、地下通路が発達しているので、渋谷スクランブル交差点を通ることなく繁華街側に抜け出ることができます。
そういった意味で、渋谷駅について言えば、北側の出口は人が多く混み合うことを除けば、敷地は狭いながらも比較的動線が設計されていることがわかります。ただ、この駅は、年柄年中何かしらの工事をしている関係で、改札がコロコロ変わるので、ちょっと行かなかっただけでかなり迷ってしまうのがネックです。
④ 横浜駅
横浜駅はある程度大きな構内を中心に、北側両サイドに東横線、京急線があります。そして繁華街は南側にあります。一方で、みなとみらい方面にいくために東側に行く人もそれなりにいます。ただ、土地が広い上に、下記のように駅自体の通路の整備がなされたために非常に動きやすくなっています。特に中央の通路は非常に広く、混雑するという印象はあまりないです。
また、横浜の繁華街が本当にここなのかと言われると怪しくて、実際に横浜で遊ぶ方は、みなとみらい方面や野毛など色々点在しているので、上記の3都市ほどは集中していないのかなと思います。
④ 東京駅
JRで最大級の構内を持ちながら、JR以外の乗り換え路線は丸の内しかありません。そのため、敷地に対しての乗降人数が非常に少ない印象です。つまり動線は、ほぼ東京駅の構内だけで完結するという印象です。
繁華街として西側を囲んでいますが、近隣の大きな商業エリアとして、銀座・有楽町があるので、東京駅で遊ぶ人は少ないと考えられます。
4 まとめ
以上、いくつかの大きな駅を見比べながら、分かったことは、
「池袋駅は日本で2位の乗降人数を誇る駅である。そして、乗り換え駅としての利便性は高い。しかしながら、敷地が小さいために混雑度/人口密集率がかなり上がっている。その上、商業施設に向かう人と、乗り換えの人の動線が複雑に絡み合う構造になっており、狭い通路を人を避けながら歩くスキルが常に必要とされる。だからこそ、それに慣れていないと、人が急に来たり、動線の目の前に入ってきたりと、人混み感を強く感じてしまっている。」
と言うことです。
そして、書きながら色々思ったのですが、東京や新宿は都市計画ありきで、鉄道が生まれたあたりからしっかりと都市開発されている一方、池袋や渋谷は、昔には想像できないくらい発展していったので、都市計画(土地など含む)が間に合わず、色々な工夫を組み立てていったのだなと感じました。そして大したこともないことを新年早々まとめてみましたw
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?