2024年一級建築士製図試験課題「大学」
はじめに
今年の課題が発表になりました。
例年通り「所感」をまとめたいと思います。
念のため、内容は完全に個人的な見解であって資格学校等により客観的な妥当性が保証されているものではないことご承知おきください。
発表内容
まずは発表内容についてです。
ここ数年大きな変更点は見られませんでしたが今年は「建築物の計画にあたっての留意事項」に新規の項目「大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画とする。」が加わりました。
「建築物の計画にあたっての留意事項」はR2年以降、本試験問題に「再掲」という形で記載されており、また「試験問題を十分に理解したうえで〜」の注意事項も書かれているため「課題文そのもの」と捉えても良い重要項目です。
容易に「免震構造?」というイメージが湧きますが、これについては下記詳述します。
一昨年までは【要求図書】に記載のあった(注)が昨年からなくなり、代わりに最下部【注意事項】の文言が変わっているのも昨年同様です。
基本的には法令遵守の明文化ですがバリアフリー法については昨年と解釈が異なってくるため対応については考える必要がありそうです。
これも下記詳述します。
曖昧な用途
初見での感想は「なんて曖昧な用途なんだ」です。
具体的に過去問ではH25年の「大学のセミナーハウス」というものがありますが、「セミナー」を行うという用途が明確になっていました。
一方「大学」のみならばそのセミナーを始め、講義、講演、実験、運動、飲食といったあらゆる用途がきても「大学ではない」と否定出来ません。
具体的な使い方・使われ方のイメージが持てない、というのはここ数年の守備範囲の広い課題設定の中でも飛び抜けているように思います。
用途のイメージがつきにくいと同時に「基準階タイプ」か「ゾーニングタイプ」か絞りきれない、というのも曖昧さを冗長させています。
具体的に明治大のような都心部に建つ「ビル型」の大学もあれば東大のように低層と言えるような建物が一つの敷地内に集まる「キャンパス型」の大学もあります。
また「キャンパス型」であっても近年新築される建物は複層階の「ビル=基準階タイプ」になっており、敷地内に建つ建物を単純に「基準階タイプ」/「ゾーニングタイプ」に区分出来ません。
建築士試験においては「A2版の用紙に作図する」という制限から建物自体のフットプリントは1200㎡程度が上限になっています。
これを考慮に入れると建物単体で「大学」と呼べるようなものの場合間違いなく「基準階タイプ」になり内容も事務所ビルに近いものになるはずですが、「キャンパス型」で広大な敷地の一角が計画地となる場合、そのような「基準階タイプ」の建物だけでなくビジターセンターやラーニングホール、実験棟、学生交流施設のような「ゾーニングタイプ」になる建物の計画も可能性が出てきます。
また上記と関連しますが「キャンパス型」となる場合は配置計画において接道や周辺環境ではなく「キャンパス内」に主眼が置かれることになる可能性が高く(例:H30本試験)、一律に「アプローチは復員の広い道路から」といったエスキスのセオリーが通用しなくなります。
規模も用途もどのような建物になるかはっきりとせず、かつどのような敷地(計画地)に建つのかもはっきりとしない、ということで学習の的が定めにくい「さすが試験元」といった課題になっていると思います。
難易度は?
上述のように的が絞れない非常に曖昧な用途ですが難易度で考えた場合はどうでしょうか。
ここ数年非常に単純な課題用途でそれにより想定できることが多く、課題発表時には「難しい」と感じていました。
一方、本試験で蓋を開けてみればその課題用途のストレートな出題でありR1年のようにエスキスが難しくておさまらないというものもR2年以降は出ていません。
こうした事実を踏まえても曖昧すぎて難しいと感じるが本試験自体はさほど難しくならないのではないか、というのが個人的な印象です。
つまり「大学」としつつも構造や給湯の知識が必要なプールのある体育館や空気汚染に配慮が必要な実験棟などは(可能性はあるが)出ないのではないかと考えています。
基準階タイプであれゾーニングタイプであれ、せいぜい大ホールや小ホールを併設した講義棟、教室棟といったものになるのではないでしょうか。
ただ、本試験自体が難しくないものであることを想定していてもそこに至る学習が容易であるかといえばそんなことはありません。
本試験でそのように感じるために学習すべき項目、内容はその曖昧さゆえ多岐にわたり基本事項として押さえておくべきことはやはりここ数年の中でも多いと思います。
以下では発表内容や用途から考えられるポイントについて触れたいと思います。
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