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ネスターゲームズ(nestorgames)について その6

この記事は ボドゲ紹介 Advent Calendar 2022 の16日目の記事です。

前日はヴァントさんの「ソックスモンスター」についての記事でした。子供と遊ぶキッズゲームは微笑ましくてもちろん良いんですが、大人が真剣にやりきるキッズゲームってなぜかすごく盛り上がって別の良さがありますよね。

さて毎年ぐらさんのボドゲ紹介Advent Calendarに参加させてもらって7年、「せっかく書くなら他と違う路線を」ということで今回もテーマはnestorgamesです。

過去の記事でも色々と紹介しているので、興味のある方はそちらもあとで見てもらえたら嬉しいですね。(その1その2その3その4その5)

ご存じない方に向けて毎度書いていますが、 nestorgamesはスペインのボードゲームパブリッシャーで、下の写真のような統一されたフォーマット(最近はポーチ型と筒型)をベースに、アブストラクトゲームを中心にした多数のゲームをリリースされています。この写真のケース1個1個が1つのゲームです。

※アブストラクトゲームという言葉の解釈は色々ありますが、Kanare_Abstractの加藤香流さんの記事や、アブストラクトゲーム博物館の中島雅弘さんの記事が分かりやすいのでオススメです。ここではざっくり将棋やオセロのようなゲームをイメージしてもらえたらと思います。

このような方向性のため、これまで何十個と紹介した中でもテーマ性や運要素があるゲームは数えるほどしかありませんでしたが、今回はあえてそういったゲームにもフォーカスを当てたいと思います。

ということで、新作も旧作もガチアブストもパーティーゲームも混ぜこぜに、一挙10ゲームをオムニバス形式で紹介していきます。


マイクロチップ (Microchip)

再販やリメイクを除くと、この記事を書いている時点でnestorgamesの最新作です。

共通の場から順番にパーツを1個ずつ取っていき、自分の個人ボード上に回路を作るゲームという珍しいテーマ。個人ボードの色のレイアウトは全て違っています。

線の数が多いパーツほど高得点で、最高得点の回路を作るのが目的。
パーツはボードのマスの色と一致させて置く必要があり、かつ ゲーム終了時点で回路が閉じている、つまり末端が全て白四角(端子?IC?)で終わっている必要があります。配置できなかったパーツはそのまま失点に。

プレイヤー同士のインタラクションはパーツを取る部分で若干あるくらいなのですが、余りパーツ=即失点になるルールなので余計なパーツを強制的に取らされると悶絶します。かなり絡みが薄いゲームなのに、その僅かな絡みが絶妙に効いてくるのがニクい。

しかーし、なんとこのゲーム、パーツはいくらでも配置し直せるという大胆ルール!
最後まで進めて回路が気に入らなかったり、余計なパーツを取らされて計画が狂っても、白紙にして組み直すのが許されています。
それだけ聞くと長考が気になるところですが、実際にはゲーム本編が選択肢を適度に狭めてあって非常にサクサク進むので、じっくり最善の回路を考え直すくらいがちょうどいい塩梅です。

1プレイ15~30分くらいと短い割に、パーツをうまく使い切ったときの達成感も大きくて楽しいですね。うまくいかなくても次こそはうまくやれそうな気がして「もう1回!」と言いたくなります。

ポップな見た目に昨今流行りのソロパズル系&インタラクション薄めという、nestorgamesとしてはかなり珍しい方向性のゲームですが、お手軽かつソロでも多人数でもプレイ可能ですし、ゲーマー以外の方にもスッとオススメできるゲームです。


ナーング (Nanku)

プレイヤーの色が両方含まれた1種類だけの駒を使用した立体四目並べです。ただし、この独特の駒と、外側から見えているいずれかの平面で四目を並べる必要があるというルールによって、一般的な立体四目並べとはプレイ感がかなり違います。

nestorgamesには他にもこのタイプの駒を使ったゲームが色々とあるのですが(Taiji, Taigo, Blinqなど)、いずれも「相手の色がすぐ隣にくっついてくるので自分だけ有利な配置にするのが難しい」というジレンマがポイントで、共通する面白さでもあります。

初めは四目のリーチを見落としがちで、あっという間に決着するパターンが多いと思います。何度かリプレイして慣れてからが勝負なので、その前提でプレイすると面白くなるゲームです。


刃の飛び交う屋敷 (The House of the Flying Blades) / 刃の飛び交う寺 (The Temple of the Flying Blades)

プレイヤーは忍術の1流派となり、狭い屋敷内で生き残りを賭けた戦いを行います。2~3人用の基本ゲームが「屋敷」、4~5人用の拡張が「寺」です。(写真はボードを2枚使った5人プレイの「寺」)
ここでは一番オーソドックスな3人プレイで説明していきます。

基本的には自分の忍者を縦横に隣接する敵の忍者がいるマスに移動させて敵の忍者を攻撃していき(取り除いていき)、全員が連続してパスした時点でゲーム終了、最も多く忍者が残っている流派の勝利です。

そして、ゲームの肝は、各流派(プレイヤー)がじゃんけんと同じ三すくみの関係にあり、自分の攻撃対象の流派しか攻撃できないという点。

勝利のため毎手番攻撃対象の流派(下家)を削っていくわけですが、それはイコール自分を攻撃してくる流派(上家)を削ってくれる忍者も少なくなるということ。自分はうまく待避ルートを確保しつつ、下家が上家を削りやすくなるよう仕向けるにはどこを動かすべきなのかが悩みどころです。

そしてゲームのもう一つの肝が、各プレイヤーの持つ非公開の忍術カード。
1~6の価値を持った色々な効果を持つカードで、ゲーム開始前に配られたカードから合計価値10以内で自由に選ぶというものです。遠くを攻撃する手裏剣から敵味方全てを巻き添えにする爆薬まで、どれを手札とするかはプレイヤー次第。ちなみに初段拡張(1st DAN Expansion)という忍術カードの種類を増やす拡張があったりします。

個人的には忍術カードなしのアブストラクトな戦いも楽しいのですが、忍術カードを使ってうまく戦局をひっくり返せると気持ちいいですね。


キャメロットへの帰還 (Return to Camelot)

タイトルはアーサー王物語から。これまたnestorgamesとしては珍しく非公開情報があるタイプで、ガイスターのように駒の役割を隠して進めていくゲームです。nestorgamesでいうとミュルミドーン(Myrmidons)もこの系統ですね。

駒は領主、魔術師、騎士、兵士の4種類ありますが、基本的にどれもほぼ同じ動きで兵士以外に若干特殊能力がある程度なので、将棋やチェスに比べれば覚えるのは非常に簡単です。勝利条件は以下の3つ。

  • 相手の領主を捕獲

  • 自分の領主で相手の城を占拠

  • 自分の任意の駒2個で相手の城を2つとも占拠

捕獲ルールはほぼチェッカー(ドラフツ)と同じで、

  • 相手の駒を飛び越えることで捕獲する(取り除く)

  • 捕獲可能なら捕獲は必須

  • これ以上捕獲できなくなるまで連続して捕獲

というもの。チェッカーと違って縦横斜めに1歩移動できたり自分の駒も飛び越えることができたりしますが、チェッカー同様、捕獲ルールをうまく使って相手を強制する基本戦略はこのゲームでも有効です。

あと、このゲームは将棋のような駒の再利用ルールもあり、チェックメイトにするまでの道のりは見た目よりも複雑です。とはいえ、盤面が狭いために初回は連続捕獲であっという間に終了というケースが多いかもしれません(自分の時はそんな感じ)。何度かプレイすると勘所が分かってくるので、一回だけではなく何度かプレイしてみてほしいゲームですね。

相手の動きを強制できるルールは好物なんですが、実はルールを読んだ時点ではそれほど期待しておらず。しかし、ゲームがプレイヤーに何をやらせたいか理解してからはかなり面白くなって、「やっぱりルール読んだだけじゃ中々面白さは分からないもんだな」と再認識したゲームでした。


ネスターゲームズGP (nestorgames GP)

さてさて、お次はnestorgamesの名を冠しながらアブストラクトゲームの対極にあるようなこれ。見た目は由緒正しきnestorgames流クールテイストですけどね。

タイトルと写真でなんとなく想像が付くと思いますが、ダイスを振ってレーシングカーを進めていく、すごろくタイプのレースゲームになっています。

このゲームの特徴は前進するマス数の決定方法です。ダイスを1個振ったあと、さらに振るかやめるかを選択でき、出目がダブらない限り最大6個までダイスを振ることができます。そしてやめた時点までの合計分前進することができます。つまり、1周70マス程度のコースを、運が良ければ1手番で1+2+3+4+5+6=21マス進めたりするんですね。ルールブックの冒頭に「猛スピードレースゲーム」と書かれているのも納得。

ま、現実はそんなに上手くいかないんですけど。出目がダブったらお察しの通り0マスです。しかも自分の車がコーナーにいた場合は「クラッシュ」となり、いわゆる1回休みな上に振れるダイスの数が減ってしまいます。

ということで、ボード上ではグランプリレースをしながら、ダイスではチキンレースみたいなことをしてるわけです。ここは性格が出るところですね。「もう1個振るべきかな?でもコーナーだしな…いや、いっとく、か?」みたいな。

そして、このゲームにはさらなる混乱と笑いを巻き起こす、マリオカート並の反則アイテムも目白押し。
後方から敵車両に打ち込む「ロケット」や最大の出目が2倍扱いになる「ターボブースト」、複数車両を巻き添えにしてスリップ&クラッシュさせる「オイル漏れ」など、プレイすればドタバタ劇必至の要素オンパレードで笑えます。

ちなみに写真のボードは旧版の大きめマップで、現行版は少しコンパクトになってコースの一部がループしています。ループ部分で衝突すると面白いことになるので、気になった方は公式サイトに提供している日本語ルールブックを見てもらえたら。

プレイ人数が2~8人と幅広く、完全にパーティーゲームに振り切ったゲーム性ということで、非アブストラクトゲーマーにオススメしたいところです。


ポゴ (PO-GO)

アブストラクト大好きな人でなければあまり食指が動かない割と地味な見た目をしていますが、実は個人的にオススメ。

PO-GOはPolarity-Goの略で、リング付きのディスクは正極、リングなしのディスクは負極の極性があると見なします。
手番では自分の色のディスクを正極で2個置くか、負極で2個置きます。置いた後、その周囲のディスクを今置いたディスクと同じ極性に変えます。
全てのヘクスが埋まったらゲーム終了。正極の白、負極の白、正極の黒、負極の黒の4パターンで最大のグループを確認し、その中でより大きなグループを作っていた色のプレイヤーの勝ちです。

周囲に置かれたディスクによって極性がコロコロ変化するのですが、周囲6ヘクスが埋まった時点でそのヘクスの極性は確定するので、それを考慮しながら相手に自分のグループを分断されないように立ち回るのがポイント。

これもアブストラクトゲームにありがちな「ルールを読んだだけでは面白さが分からない」系ですが、一度プレイしたらもう一度プレイしたくなる面白さがあると思います。


ヘクセンタフル (heXentafl)

ヴァイキングがプレイしていたゲームという触れ込みの「ネファタフル(Hnefatafl)」あるいはそのボード縮小版「タフル(Tafl)」というゲームがをご存じですか?
nestorgamesからもリリースされている古典ゲームの一種で、はさみ将棋のような捕獲ルールと、一方のプレイヤーは王をボードの隅まで到達させれば勝ち、もう一方のプレイヤーは侵略者で王を捕獲すれば勝ちという非対称の勝利条件が特徴です。

このタフル系ルールをその名の通りヘクスボードに持ち込んだのがこれ。
自分の駒で相手の駒を挟めばその駒を捕獲する(取り除く)ことができるという基本ルールは踏襲しつつ、ネファタフルやタフルにあった玉座周りの煩雑な例外ルールがなくなってスッキリしたルールになっています。
1辺4ヘクスと1辺5ヘクスのボードで遊べるようになっており、前者は王だけ1歩移動で他は何歩でも直線移動なのに対して、後者は王も含む全ての駒が何歩でも直線移動できます。

ネファタフルでは侵略者側が一方的に強い印象がありましたが(自分のやりこみ度が足りない??)、特に5ヘクス版ヘクセンタフルでは王が中央ヘクス(玉座)から一発で隅に到達できる筋があるので、侵略者側はそれを警戒しつつ相手を捕獲していかなければならず、一筋縄ではいきません。

個人的にはネファタフルよりこっちの方が好みですね。ネファタフルをやったことがある人はプレイ感の違いを楽しんでみては?


火星の庭 (Gardens of Mars)

ここからは同じフレーバーを持つ庭シリーズ3部作を紹介しましょう。

まずは第1弾の火星の庭。元々nestorgamesを知っている層なら比較的知っているかも?

主役はなぜか火星人。そして彼らの仕事はなぜか庭師。いったいどこの世界線の話??自分は理由を考えるのを諦めました。

プレイヤーは、共通の場にあるいずれかのダイス1個を使い、その目の数だけ自分の火星人を移動させて花(ディスク)を植えていきます。

植えた花とそれに連なる同色の花の個数がその手番で獲得できる点数になります(新版で若干ルールが変わっています)。
つまり孤立した花を植えたら1点ですが、9個繋がってる花の隣に同色の花を植えれば1個で10点なので、後から置いた方がお得なのは自明の理。

でもそうこうしてるうちに盤面が埋まってしまうと「もう孤立した場所に植えるしかないじゃん!」みたいになるので、みんな他プレイヤーの手持ちの花をチラチラ見て牽制しながら、どの色をどのタイミングで植えるか考えます。

ダイスの出目で適度にランダム要素が入りつつ、ルールも分かりやすく気軽に楽しめる、運と実力のバランスがいい感じに取れてるゲームかなと。「ガチのアブストラクトはちょっと…」という人にもオススメです。


イオの庭 (Gardens of Io)

第2弾の舞台は木星の第1衛星イオ。そして主役はやっぱり火星人の庭師。そこは木星人じゃないんかい!とツッコむ人がいたとかいないとか。

ダイスはなくなり、最初に配られる花(ディスク)以外にランダム要素はありません。
ゲームでは、火星人が外周を歩きながら自分の位置から内側の庭へ向かって直線的に花を投げ入れます。得点方法は火星の庭と一緒。

火星人の移動エリアである外周が得点トラックも兼ねていて、さらに他の火星人がいるマスはスキップするので「得点は多く取りたいけど、そうすると次の手番に山が邪魔で良いマスに花を置けないな…」みたいなことが結構起こるのが悩ましく面白いですね。

あと、今回はスペシャルアクションなるものがあり、各プレイヤーはゲーム中1回だけ、花の位置を入れ替えたり山を移動させたりといったアクションを早い者勝ちで実行できます。これを使って鮮やかにナイスムーブを決めれば、ゲームに勝利するよりヒーローになれるかもしれません。

個人的にはこのトリロジーの中で1番好きです。


エンケラドゥスの庭 (Gardens of Enceladus)

第3弾の舞台は土星の第2衛星エンケラドゥス。そして二度あることは三度ある、毎度おなじみ火星人の庭師の出番です。そして、今度のテーマは花植えではなくお花摘み。お可愛いこと、いや、その前にいつの間に植えたんだ。

前2作は何もない庭に花が増えていきましたが、3作目では花満開からスタートします。
プレイヤーは自分の火星人を縦か横に好きなマス数だけ移動させて、移動先のマスにある花1つを摘みます。そして、そこに隣接しているいずれかの花1つも摘みます。

これ以上誰も花を摘めなくなったらゲーム終了です。各自、色ごとに個数を数え、一番少ない個数が自分の点数です。同点の場合は次に少ない個数で勝負。以下同文。いわゆる頭脳絶好調(インジーニアス)方式ですね。

要は同じ色を取り過ぎると損なんですが、必ずしもそうとも言えないのが、前作から2倍の10種類に増えたスペシャルアクションの存在。同色の花3つを消費することで、早い者勝ちでアクションを実行できます。しかも今回は3つ消費さえすれば1人で何個でも実行可能!
余分な花をアクションで上手く消費して華麗に点数を底上げできれば、みんなから羨望の眼差しです。

あと、実は手番で花を摘んだ後、孤立した花(縦横に隣接した花がない花)ができたら、それらも全部まとめて自分のものになるというルールがあります。1個孤立させるのは簡単ですが、自分の手番で2個以上同時に孤立させるのは中々大変です。ただ、これも上手く決まれば爽快&俄然有利になって、さらにゲームが楽しくなると思います。

以上、ガーデントリロジーの紹介でした。三者三様の面白さがあるので、機会があれば3つとも遊んでみてほしいですね。


おわりに

今回の10選はいかがだったでしょうか。「nestorgamesといえばアブストラクトゲーム」なイメージは確かにあるんですが、今回みたいな非アブストラクトから入ってnestorgamesのミニマルルール×ミニマルコンポーネントの美しさを堪能したあと、その流れでアブストラクト系もちょっとやってみよっか、みたいなルートもありなんじゃないかなーと思います。今は日本にほぼ売ってないので公式サイトから入手する必要がありますが、興味のある方はぜひどうぞ。

最後に、新生nestorgamesになってリリースペースがかなり緩やかになったこともあって、10個一挙紹介というスタイルは今回で最後かなーと思ってます。ただ、色々な理由でまだ紹介していないゲームも実は結構あるので、またどこかで書ければー。

明日の担当は、蒸気の時代クローズ会でもよく一緒に遊んでいるhiroさん!2020年代 蒸気ムーブメントの立役者のhiroさん (もう1人は12/25担当のしいたけさん) が、蒸気をテーマに記事を書くということで楽しみです!

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