メジャー出場権や賞金王争いが激化?今年のジャパンゴルフツアー
ジャパンゴルフツアー今年のスケジュールについて、前回投稿しました。
世界を目指すために、今年のメジャー競技に出場したり、今年の賞金ランク上位、あわよくば賞金王になるという意思を持って臨む選手を多く見かけます。
今回はこの部分について、詳しく見ていきます。
1.メジャー出場権を手にするために
〇現在メジャー出場が決定している選手(おさらい)
・久常涼 (マスターズ :主催者推薦)
(全米プロ :世界ランク100位内 ※1)
(全英オープン:昨年のレーストゥドバイ30位内)
・星野陸也 (全米プロ :世界ランク100位内 ※1)
(全英オープン:オーストラリア予選会突破)
・中島啓太 (全米プロ :INF【※2】3位内 ※1)
(全英オープン:INF5位内)
・岩崎亜久竜(全英オープン:昨年の日本オープン優勝)
※1:現在のランクを保持していけば、出場が濃厚である。
※2:インターナショナルフェデレーション
※3:松山英樹は全て出場可能ですが、ジャパンゴルフツアーメンバー登録はしていないので、ここでは省きます。
現在4選手がメジャーの出場権を持っていますが、久常はPGAツアーに、星野と中島はDPワールドツアーで戦っているため、ジャパンゴルフツアー関係としては、岩崎の全英オープン出場だけが決まっている現状です。
〇これから出場権が獲得できるメジャー
ジャパンゴルフツアーを主戦場としている選手にとって、これからメジャー出場権が獲得できるのは2試合だけと言っていいでしょう。
マスターズと全米プロはもう出場条件のハードルが高過ぎるので、これから逆転で出場できるのはかなり望みが薄いです。
・全米オープン
毎年5月に開催される、USGA(全米ゴルフ協会)が主管の日本予選会を勝ち上がれば、6月の本戦(パインハーストNo.2)に出場することができます。
今年は5月20日(月)に、滋賀県にある日野GCキングコースで開催されます。競技方法は36Hのストロークプレーです。
同じ滋賀県の名神八日市CCで行われる、関西オープン終了後の翌日に開催です。
昨年の全米オープン日本予選は、エントリーが29選手。そして本戦に出場できたのが3選手でした。
(ガン・チャルングン、永野竜太郎、石川遼)
予選の出場人数によって、本戦に出場できる人数が変わってくるシステムです。
毎年30選手位がエントリーしてくるものと思われるので、今年も昨年同様な規模になるものと思われます。
久常、星野、中島の3選手はすでに最終予選から出場できるので、自分の戦っているツアー会場から近い予選会場で受けるかもしれません。
・全英オープン
5月23日~26日まで開催される「~全英への道~ミズノオープン」(岡山県・JFE瀬戸内海GC)で出場権を獲得することができます。
全英オープン日本予選を兼ねた大会です。
昨年までは既に出場権を獲得している選手を除く、大会成績上位者4名に与えられた資格ですが、今年からその枠が3名に削減されてしまいました。
そしてこれまでの出場資格だった、昨年のジャパンゴルフツアー賞金ランク上位2選手と、東建ホームメイトカップからBMW日本ゴルフツアー選手権森ビルカップまでの賞金ランク1位の選手という条文がなくなりました。
(インターナショナルフェデレーション上位5選手に出場権を与えるという条文に変わりました)
この変更により、昨年までのジャパンゴルフツアー関連枠が少なくとも2減ったことになります(インターナショナルフェデレーションを入れると3減る可能性も)。
昨年から比べると、出場権を持っていない選手にとって”狭き門”と化してしまいました。
・メジャー出場を目指す選手にとって、5月第4週は大変な1週間に
メジャーに出場したい選手は、5月第4週は大変な週になりそうです。
・5月20日(月)
全米オープン日本予選
・5月23日(木)〜26(日)
~全英への道~ミズノオープン(兼全英オープン日本予選)
1週間で今年2つのメジャー出場が決まるという、内容の濃い1週間。
特に両方出場したい選手は、緊張感の続く日々になります。
2.世界で戦うために
PGAツアー(DPワールドツアー)を目指したい選手は、”今年の賞金王になる”という目標は必要不可欠なものになるかもしれません。
〇DPワールドツアー出場権
2年前からジャパンゴルフツアーの賞金ランク上位3選手には、来シーズンのDPワールドツアー出場権(ツアーカード)が得ることができます。
ただこれを持っていたからといって、すぐに試合が出られるとは限らず、賞金王と2位、3位では試合出場のカテゴリーが違います。
・賞金王
カテゴリー17(前年各ツアーのランク1位になった選手)
・賞金ランク2位、3位
カテゴリー18(前年のクオリファイリングスクール上位選手と前年各ツアーのランク2、3位になった選手)
カテゴリーの数字が小さい方が試合出場権が回ってきやすいです。
・昨年と今年では”雲泥の差”
これも以前投稿したことがありますが、もう一度。
一昨年のジャパンゴルフツアー賞金ランク上位3選手(比嘉一貴、星野陸也、岩崎亜久竜)は、昨年のジャパンゴルフツアー開幕まで東南アジアや中東で開催される試合に2、3試合は出場できました。
ところが昨年のジャパンゴルフツアー賞金ランク上位3選手(中島啓太、蟬川泰果、金谷拓実)の内、賞金王の中島だけがここまで試合に出られたのに対して蟬川、金谷の両名はまだ1試合も出場できていません。
クオリファイリングスクールからの人数が増加したことや、昨年のPGAツアー・フェデックスカップの126〜200位の選手で試合出場を希望するランク上位5選手が優先的に出場できるというシステムに変更された影響が大きいです。
正直な話、2人にとってこんなはずじゃなかったと思っているでしょう。
・クオリファイリングスクールに出場するのも一つの手だが
DPワールドツアーのクオリファイリングスクールに出場して、来年の出場権を得るという手もあります。
ただし最終予選からということになれば、秋までにある一定の成績を残さなければエントリーできないのでまずそこを目指し、そしてスペインで行われる、6ラウンドにも及ぶ最終予選会を勝ち上がらなくてはなりません。
長期戦になること、間違いなしです。
〇PGAツアー出場権(ツアーカード)
PGAツアーを目指すのは、昨年からはもっと大変です。
・昨年からQスクールが復活、でも出場するのに狭き門
昨年から復活した、フェデックスカップ126位以下の選手やコンフェリーツアーポイント26位以下の選手がメインで、1次からの予選会を勝ち上がってきた選手達が、4ラウンドストロークプレーで順位を決め、上位5選手だけが来年のツアーカードを得る、ファイナルQスクールがあります。
ファイナルからエントリーができるのですが、これが11月の太平洋マスターズ終了時点で賞金ランク1位の選手のみです。
まずファイナルに出場するだけでも”狭き門”と言えます。
・賞金王の喜びに浸る間もなくやって来る、Qスクール
エントリーしてからおよそ1か月後に、Qスクールが開幕します。
会場はTPCソーグラス。プレーヤーズ選手権でもお馴染みのコースですが、スタジアムコースではなく、ダイバレーコースを用います(もう一つはソーグラスCCです)。
すでにジャパンゴルフツアーは全日程を終了して、ほとんどの選手がオフに入る中、一人来年に向けた戦いを行っているのです。
昨年は中島がここで敗退し、DPワールドツアーで戦う選択をしました。
約140選手が出場し、上位5選手までしか来年のツアーカードが与えられない、厳しい戦いです。
・ツアーカードを得たとしても
こちらもツアーカードを得たとしても、試合出場とはいきません。
Qスクールから勝ち上がった選手のカテゴリーは、DPワールドツアーから勝ち上がった10選手、コンフェリーツアーから勝ち上がった25選手に次ぐ出場順位なため、出場機会が回ってこないというのが現状です。
カードを持っていても、マンデートーナメントに出場せざるを得ないこともあります。
こうしてみると”賞金王”だけしか世界に進出できないという、過酷な現状が待っています。
3.”何年も日本で賞金王になってから世界へ”という考えは、捨てましょう
ひと昔前までは、こんな考え方が主流になっていました。
「複数年日本で賞金王になれる実力を持ってから、世界に羽ばたく」
現在そんな考えでは、もう取り残されることは間違いなしです。
〇中島啓太、DPワールドツアー奮戦中
昨年賞金王の中島は、今週はヒーローインディアンオープンに出場するためインドにいます。
昨年は開幕戦で、三重にいたのとは大違いです。
中東、アフリカ、アジア、そしてヨーロッパの各国を巡るDPワールドツアー。2度目の”ルーキーシーズン”はいろいろな経験をしています。
岩場からのアプローチを独自で編み出したこのシーン。日本ではまずこんなところから打つことなんてないでしょう。
この見事な寄せが、この大会でベストショットになりました。
そしてこの解説を、自ら英語で語っています。
来月以降はアジア各国を巡りつつ、全米プロの出場の可能性もあるので、帰国してもISPSHANDA選手権にしか出場しないものと思われます。
そしていよいよヨーロッパ各国を巡ってゆくスケジュールです。
初めてのことで大変ですが、何とか今年のシードを守りつつ、あわよくば日本人選手6人目のDPワールドツアー優勝者に名を残し、PGAツアー出場を願っているのではないでしょうか。
〇松山英樹の”覚悟”を、現代の選手達はどう受け止めているのか
松山英樹がジャパンゴルフツアーのルーキーイヤーだった2013年。開幕戦の東建ホームメイトカップを迎え、火曜日の宿舎で当時の帯同キャディだった、進藤大典氏にこう言いました。
まだ10年前は、ジャパンゴルフツアー優勝で得られる世界ランクのポイントが今の倍以上あったため、2勝した時点で世界ランクは60位近くまで上昇することができました。
そして全米オープン10位、全英オープン6位などメジャーでの活躍や、スポット参戦したPGAツアーでも好成績を収め、前年125位までの賞金額またはポイント数を稼いだことで、翌年のPGAツアーカードを取得しました。
それに合わせ、世界ランクも50位内に入ることができました。
その後の活躍は、皆さんご存じの通りです。
10年以上前の松山の”覚悟”、現在の選手達はどう感じるでしょうか?
今は世界ランクの算出方法も変わり、ますます大変になったのは理解できます。
しかし「この”覚悟”がなければ、世界では戦えないよ」と松山自身が後輩達に身をもって教えてくれているとも感じます。
〇長期シードを持っている選手達へ
日本タイトルや賞金王を獲得し、3年や5年の長期シードを持っている選手がいると思います。
「長期シードを海外のツアー参戦に充てて、最高峰のPGAツアーに出場できる体制にする」
「そして世界ランクを上げて、4大メジャー競技に常時出場する」
このように意識を変える必要があるのでは、と素人の自分の考えです。