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2024 全米プロゴルフ選手権


1.日程及び会場

〇日程 2024年5月16日~19日
〇会場 バルハラGC(ケンタッキー州)
〇全長 7609Y(Par71)

2.結果

優勝 ザンダー・シャフリー   -21
  (メジャー初優勝、ツアー通算8勝目)

2  ブライソン・デシャンボー -20

3  ビクトル・ホブランド   -18

T4 トーマス・デトリー    -15

T4 コリン・モリカワ     -15

T6 シェーン・ローリー    -14

T6 ジャスティン・ローズ   -14   


3.28度目の挑戦でやっと頂点に、ザンダー・シャフリーメジャー初優勝

 28度目の挑戦で、ようやく悲願達成となりました。
 全米プロゴルフ選手権最終日、トップタイでスタートしたザンダー・シャフリーが、7バーディー1ボギーの6アンダー65をマーク。トータル21アンダーで念願のメジャー初優勝を果たしました。
 一昨年7月のスコティッシュオープン以来、ツアー通算8勝目を初日から首位を明け渡さないワイアートゥワイアー(完全優勝)で挙げました。
※タイ含む

〇ほぼ完璧に近い戦いだった4日間

 コリン・モリカワと15アンダーで並んだ最終ラウンド。
 モリカワが全くバーディーを奪えないのに対し、1H(Par4)からバーディーを奪い先制パンチをお見舞いすると、前半だけで4バーディーを奪う圧巻の内容。
 2組前で回るブライソン・デシャンボーとビクトル・ホブランドが揃ってスコアを伸ばす中、チャンスホールの10H(Par5)でボギーを叩き、また”負のスパイラル”に入りそうになりかけたシャフリーでした。
 しかし11H(Par3)、12H(Par4)でバーディーを奪いバウンスバック。その後は危なげないプレーでパーを積み重ねて迎えた最終18H(Par5)
 ティーシショットが左バンカー際のセカンドカットラフに止まり、スタンスはバンカー内という悪い状況ながらも確実にレイアップ。
 3打目をピン左約2mに寄せ、最後右に曲がるバーディーパットを決めて勝負にケリをつけました。
 4日間を通してボギー2個ダブルボギー1個という安定した内容、そして以前から終盤に見せる”勝負弱さ”の影は完全に潜め、栄冠を掴みました。

〇今年も悔しい思いが続いたシャフリー、やっと晴れやかに

 今年もこれまでシャフリーの惜敗が続きました。
 2月のジェネシスインビテーショナルで松山英樹、3月のプレーヤーズ選手権でスコッティ・シェフラー、そして先週のウェルズファーゴ選手権でロリー・マキロイにそれぞれ敗れましたが、それでも悔しい素振りは見せずにメディアやファンに対応してきたシャフリー。
 今度は晴れやかに思う存分対応できます。

〇記録更新ずくめの優勝

 初日にメジャー大会タイ及び全米プロゴルフ選手権史上最少ストロークの62をマークしたのに続き、この優勝で以下の記録も更新しました。

全米プロゴルフ選手権史上大会最少ストローク 263
(これまでは15年ジェイソン・デイの268)

メジャー大会最多アンダーパー 21
(これまではデイ(15年全米プロ)、ヘンリック・ステンソン(16年全英)、ダスティン・ジョンソン(20年マスターズ)、キャメロン・スミス(22年全英)でマークした20アンダー)

〇世界ランクも自己最高位の2位に上昇

 最新の世界ランクも、マキロイを抜いて自己最高位の2位になることが判明しました。
 残る2つのメジャー、来月の全米オープンと再来月の全英オープンも優勝候補になることは想像に難くありませんし、そしてパリ五輪の米国代表になることも確実視されているシャフリー。
 前人未踏の五輪連続金メダルも視野に入れていることでしょう。
「シン・ザンダー・シャフリー」が完成した今大会でした。

4.今年のメジャーは連続トップ10、三十路になって一味違う内容は今後に期待が持てる、ブライソン・デシャンボー

 3日目最終18Hでイーグルを奪い、最終日に向け上昇気流となる終わり方をしたデシャンボー。
 同組のホブランドと共闘状態でバーディーを奪い合い、懸命にシャフリーを追いかけました。
 16H(Par4)ではティーショットが左に引っ掛けたものの、ボールが木に当たりフェアウェイに戻ってくるラッキーも。
 この幸運を生かしバーディーとし、優勝争いを途切れさせませんでした。
 最終ホールもティーショットがバンカーに捕まるものの冷静にリカバリーしバーディー。
 シャフリーが最後抜け出して2位には終わりましたが、デシャンボーにとって十分な内容の最終日でした。
 かつての体格ではないものの平均飛距離は1位と他の選手を寄せ付けなかったのはPGAツアーの時と変わりません。
 LIVゴルフでしか現在見られないのが残念ですが、デシャンボーここにありというのを再び大勢のファンに見せつけた一週間でした。

5.これまでの不調がうそのよう、再び元の鞘に戻ったコーチと二人三脚で今後の活躍に期待がかかる、ビクトル・ホブランド

 昨年のフェデックスカップ年間王者でありながら、今季これまで目立った結果をほとんど出していなかったホブランド。
 シーズン序盤に一度は決別したスウィングコーチに再び従事して臨んだ今大会は、昨年の勢いが戻ってきたように見えました。
 13H(Par4)でバーディーを奪い一時単独首位に立つこともありましたが、その後何度かチャンスをものにできず18アンダーで終了。
 結果としては残念だったものの、これまでの不調を考えれば復調したことが何よりの好材料となりました。
 もともと夏場以降に調子を取り戻すホブランド、昨年同様無双状態になる日もそう遠くはないはずです。

6.優勝候補が軒並みダウン

〇ハリケーン襲来以上の1週間、スコッティ・シェフラー

 今年の全米プロを振り返ったとき、この話題を外す訳にはいきません。
 2日目の早朝、大会の販売スタッフが交通事故に遭い近隣の道路が渋滞するということでスタート時刻が80分遅くなると公式発表がありました。
 それを避けようと早めにコースへ向かったシェフラーですが、この後前代未聞の出来事が起こりました。
 移動の途中に警察官から質問されたのに対しこれを拒否、一連の行動に対し逮捕され警察署に連行。しかし本来こういった混乱を避けるための警察官がいたはずが担当外の警察官だったため”誤解”を生じてしまいました。
 結局シェフラーは釈放され第2ラウンドを無事終了、優勝争いに加わり「さすがシェフラー」と感嘆しました。
 その後シェフラーと警察は双方謝罪し、事故に遭った関係者に哀悼の意を表していました。
 さて優勝を目指す3日目、今度はいつもの”相棒”であるテッド・スコットが娘の高校卒業式に出席するの為、リザーブのキャディで臨んだのですが、序盤からスコアを落とす今までのシェフラーだったら考えられない展開。
 結局3日目は2オーバーで、今年初めてのオーバーパーとなりました。
 そしてパープレー以下でのラウンドも41で潰えました。
 スコットが戻った最終日は6アンダーで回り、トータル13アンダーまで持ち直し大会を終了。
 今大会でファンの心を掴みますます人気が出ること、そして相棒の力は絶大だったことが証明されました。

〇こちらも3日目に大失速、ブルックス・ケプカ

 2日目ダブルボギーがあったものの連続バーディーでバウンスバックするなど2度目の全米プロ連覇を目指したケプカ。
 ところが3日目はストレスの溜まるラウンドとなり、3オーバーで終了。
 ケプカにとってはここで、事実上今年の全米プロが終了しました。
 最終日はシェフラー同様意地を見せ、トータル9アンダーに纏めました。
 メジャーハンターは今度、パインハーストを的にしています。

〇絶好調で臨むも週末伸ばせず、ロリー・マキロイ

 出場大会2連勝、そして10年前ここで行われた本大会のチャンピオン、ロリー・マキロイ。
 序盤は好位置につけて大会3勝目も狙えましたが、中盤以降はなかなかチャンスをものにできず、最終日は池やクリークに捕まるなどショットも乱れてしまい、12アンダーでバルハラを去りました。
 大会前に私事で話題を振り撒きましたが、シェフラーの一件で一気に霞んでしまいました。
 世界ランクもシャフリーに抜かれ3位に後退、巻き返しを図ります。

6.雑感

〇週末進めなかった選手達

1.ルドビグ・オーバーグ
 前週のウェルズファーゴ選手権を膝痛が原因で棄権し、ぶっつけ本番で臨んだ今大会。
 練習場では膝痛の影響を見せることなくショットの練習に打ち込んではいたものの、RBCヘリテージから3週間も実戦から離れていたことで感覚を取り戻せないうちに大会を終えました。
 チャンスを作る回数が少なかったのと、同組のシャフリーとトーマスの好調に焦りを見せたことがこの結果につながったものと考えられます。

2.ジョン・ラーム
 マスターズのグリーンジャケット授与式でどこか寂しそうな表情を浮かべていたラーム。
 その後LIVゴルフ2戦を戦ってはいるものの、”本格的”な競技には近づけないもどかしい状況での試合ばかりをこなしては、メジャーの厳しいコースセッティングに跳ね返されてしまいます。
 初日4ボギーを叩きこれではいけないと奮起し、最終的には1アンダーまで盛り返して終えたラーム。
 しかし2日目はその貯金を費やしイーブンパーで終了、コースを後にしました。

3.ウィンダム・クラーク
 ショットやパットなどのスタッツが高く、バルハラに適していると下馬評では高かったクラーク。
 初日はイーブンパーで出遅れ、何とか挽回しようとしたところでの7H(Par5)で躓きました。
 ティーショットを浮島の左ラフに打ち込み、そこからグリーンを狙った第2打を池に入れた結果ダブルボギーで終了。
 ここが大きな足かせとなり、トータル4オーバーで思ってもみなかった結果で今年の大会を終了しました。
 マスターズに次いで今年のメジャーはクラーク自身全く想像しない”2連敗”という結果、連覇がかかる全米オープンで”3連敗”は免れたいものです。

4.タイガー・ウッズ
 初日のイーブンパーから巻き返しを図りたいタイガー。しかしその思いとは裏腹に序盤で大きく躓きました。
 2H(Par4)ではグリーン周りの深いラフからのアプローチとなった第3打が芝に絡みバンカーへ。そして第4打バンカーショットがトップしてしまいまたバンカーへ。
 結局5オン2パットのトリプルボギーで大きく後退。
 そして4H(Par4)でもグリーン周りで大苦戦しこのホールもトリプルボギー。
 3ホールのうちに2つのトリプルボギーが大致命傷となり、トータル7オーバーでコースを去りました。

〇最終日、日本勢のツーサム実現

 メジャー大会では初となる、日本人選手同士となった最終日。勝負は”後輩”に軍配が上がりました。
 勝負の分かれ目となった15H(Par4)、松山英樹はダブルボギーを叩いたのに対し、久常涼はこのホールバーディー。
 結局最終スコアはこのホールでの3打差となり、松山が8アンダー35位タイ、久常は11アンダー18位タイで大会を終えました。

 マキロイの離婚、シェフラーの騒動などいろいろコース外での話題に尽きなかった本大会、ゴルフの神様がこれまでのシャフリーに対する”ご褒美”ということで初のメジャータイトルを与えた今年の全米プロでした。

 来年はウェルズ・ファーゴ選手権開催コース、クエイルホロークラブ(ノースカロライナ州シャーロット)で開催されます。
 

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