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全英オープンゴルフ プレビュー③

 今回は欧州の優勝が狙える選手についてです。


1.失意の全米オープンから1か月、メジャー未勝利が10年経過する中でラストチャンスを掴むことができるのか、ロリー・マキロイ

 マキロイにとって”思い出したくもない”、先月の全米オープン。
 サンデーバックナインに入り一時は2位に2打差をつけ久々のメジャー優勝が見えてきた矢先の最終盤。
 何と上がり4ホールで3パットがあったり、最終ホールでは下り1mのパーパットを外すなど3つボギーを叩き2位に後退。
 マキロイがアテストルームで戦況を見つめ、デシャンボーがパーパットを決めた瞬間、何とも言えない表情でしばらくその場に立ち尽くし、プレスルームに寄ることなくコースを後にしました。
 10年前の8月に開催された全米プロ、この時も強豪選手達がリーダーボードを埋め尽くしましたが、一番上にはマキロイの名前がありました。
 メジャー通算4勝(全米プロ2勝、全英・全米オープン各1勝)を挙げ、全英オープン、全米プロとメジャー2連勝を飾ったときは「あとマスターズに優勝で6人目のキャリアグランドスラムだ」「マキロイはメジャーであと何勝して、タイガーにどれだけ近づけるだろうか」とファンならば誰しもが思ってきたことですが、まさかこれ以降優勝がないという未来を考える人はごく少数だったでしょう。
 全米プロ開幕前にエリン夫人との離婚も考えましたが、全米オープン直前で申請を取り消し、また家族一緒に暮らすことが幸いなことでしょうか。
 ともあれ全米オープンの”屈辱”を、早いうちに晴らしたいところです。

2.LIVゴルフ移籍は”本当にいい選択をしたのか?”、メジャーで満足に戦えない状況を全英オープンで打破したい、ジョン・ラーム

 今年からLIVゴルフに移籍、リージョンⅩⅢのキャプテンを務めトップ5に3試合入り個人ポイントランクで現在2位、団体戦では3勝を挙げ現在2位につけ、移籍は”合格”と見られるジョン・ラーム。
 しかしメジャーではその実力をなかなか発揮できていません。
 いつもと違う、強風のオーガスタで行われたマスターズ。
 前年優勝のためチャンピオンディナーを主催する立場にあり、マスターズ中は公私ともども疲れ切ったラーム。優勝争いに加わることなく試合を終了しました。
 そしてシェフラーにグリーンジャケットを着せるセレモニー、ラームの顔に寂しさがありました。
「LIVゴルフも4ラウンド制を実施すべきだ」と言わんばかりに。
 全米プロは18年の全英オープン以来のカット、そしてLIVゴルフヒューストン大会初日のラウンド途中で大声を上げました。
 左足の感染症により歩くのもままならず、ヒューストン大会を棄権。
 パインハーストに向かい、左足はサンダルを履いたまま公式インタビューを受けるも症状はよくならず、全米オープン出場をやめました。
 それからは左足がよくなってはきたものの、メジャー2試合で思うような結果が出なかったことに不服のラーム。
 今までの分を取り返したいところです。

3.今年のメジャーはすべて”完走”、PGAツアーと併せてメジャー初優勝を虎視眈々と狙いに行く、トミー・フリートウッド

 世界ランク11位に付け、今年の初戦・ドバイ招待でマキロイに競り勝ちDPワールドツアーでは7勝を挙げながらも、PGAツアーではまだ優勝したことがないトミー・フリートウッド。
 昨年のカナディアンオープンが今まで一番優勝に近いところまでは来ましたが、ニック・テイラーと4Hのプレーオフを演じ、最後はテイラーの長いイーグルパットが決まり、69年ぶりの母国出身選手優勝を一番近いところで見るはめとなりました。
 長髪がトレードマークのフリートウッド、ここ最近は短髪にしておりイメージを変えていますがプレースタイルは変わることはありません。
 フェアウェイキープからグリーンを狙い、グリーン周りのアプローチでショットのミスをカバーをします。
 全英オープンはこれまで9回出場し4年前に2位、一昨年は4位に入った実績があります。
 今年のメジャー3大会とも完走し、マスターズでの3位が最高です。
 ”地元”の声援を後押しに、初の栄冠に突き進みます。

4.ホームシックにかかりそうになるが家族の後押しでPGAツアー初優勝、母国でレフティーの連覇を狙う、ロバート・マッキンタイア

 昨年有資格者を除くDPワールドツアー・レーストゥドバイ上位10選手に入り、今年からPGAツアーメンバーのロバート・マッキンタイア。
 DPワールドツアーでは選手皆が家族のような環境だったのに対して、PGAツアーは選手とチームが個で活動し、選手間同士の交流がなかなかない環境に慣れなかったのか、一時ホームシックにかかったこともありました。
 それを家族が察し渡米することを決意、ここから事態が好転します。
 グリーンキーパーだった父親が、急遽キャディを務めたカナディアンオープン。グリーンの読みに長けている父親のアドバイスでパットを決め、ついにPGAツアー初優勝を遂げるまでになりました。
 その間も母親の手料理を食べ英気を養ったマッキンタイア。今までホームシックにかかっていたのがうそのようでした。
 本来ならば翌週のメモリアルトーナメントにも出場可能でしたが、家族で優勝を祝いたいとのことでスコットランドに一旦帰りました。
 そして今年は母国でのメジャー開催、一回り大きくなったマッキンタイアが戻り、レフティーによる全英オープン”連覇”を狙います。
(7月15日追記)
 全英オープン前哨戦となったジェネシススコティッシュオープン、最終日逆転で母国のナショナルオープンを制し、調子は絶好調です。

5.親友とのペア戦優勝で気持ちが一区切り、5年前掴んだ栄冠をもう一度、シェーン・ローリー

 アイルランド出身のシェーン・ローリー。
 彼の名前を一躍有名にしたのは、09年のDPワールドツアー・3Mアイリッシュオープンです。
 当時アマチュアだったローリーがこの大会でロバート・ロックとのプレーオフを制し、アマチュア優勝を果たし話題となりました。
 5年前、69年ぶりに北アイルランド・ロイヤルポートラッシュGCで行われた大会でメジャー初優勝。2位に6打差をつける圧勝劇でした。
 その後DPワールドツアー旗艦大会である、BMWPGA選手権に2年前優勝。しかしその後なかなか栄冠を掴むことができませんでした。
 そんな時に転機になったのが、マキロイとチューリッヒクラシックに出場することです。
 アイルランド出身同士(マキロイは北アイルランド出身)の息はピッタリで、ペアの相性は抜群。
 プレーオフに持ち込まれましたが、慌てることなくこれを対処。
 マキロイの今季PGAツアー初優勝、そしてローリーのアメリカ本土9年ぶりの優勝を挙げました(15年WGCブリヂストン選手権以来)。
 フリートウッド同様フェアウェイキープを信条としたプレースタイルで、5年ぶりのクラレットジャグを狙います。

6.今年電撃的にLIVゴルフへ移籍、個人戦で1勝し調子は上々だが”キレテル”になったら要注意、ティレル・ハットン

 2011年にプロ転向して以降、PGAツアーやDPワールドツアーでは名高い大会を制してきたティレル・ハットン。
 セントアンドルーズやカーヌスティなど世界に名を知られているリンクスコースが大会会場のアルフレッド・ダンヒルリンクス選手権に2度優勝し、20年はBMWPGA選手権、21年はアブダビ・HSBC選手権にも優勝しています。
 そして18年はアーノルド・パーマーインビテーショナルで優勝、これがハットンにとって唯一のPGAツアー優勝です。
 今年も1月はDPワールドツアーとPGAツアーに数試合は出場しましたが、2月にLIVゴルフ移籍を発表しファンを驚かせました。
 ラームがキャプテンのリージョンⅩⅢに加入し、ナッシュビル大会で個人戦優勝、そして3試合の団体戦優勝に貢献しています。
 こちらもフェアウェイキープを信条に、いい位置からチャンスを作るプレースタイルですが、思うようにいかなくなるとアンカーマネジメントを乱してしまい”キレテル”状態に。
 ”キレテル”状態にならないようなマネジメントが、優勝に手が届くかどうかの分岐点になるのは間違いありません。

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