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給料を下げても実は天引きの額は減らない

会社から役員報酬を出すにあたって、月々の給与を決められるのは年に1回だ。

会社経費とするためには、そこで確定した給与を1年間支払わなければならない。

弊社は今月がその月なのだが、会社の収支を鑑みて、何名か給与を大幅に下げた。

そして、いざ月末の給与支払いに向けて、給与と天引きの額、そして手取りを見てみると改めて気づくことがある。

それは、給与を下げても、実はすぐに天引きの額は下がらないということ。

給与の天引きの主な構成要素は、主に社会保険料、所得税、住民税だ。

この中で、今月分の給与をもとに納税額が決まるのは、実は所得税だけだ。

社会保険料は、給与水準を変えてから、4カ月後から天引きの額に反映される。

住民税に至っては、前年度の給与をもとに確定されているので、次年度の5月までは天引きの額は変わらない。

すると何が起きるか。

給与を下げた場合、ただでさえ額面の額が下がっているのに、天引き額が大幅には変わらないので、手取り額の減少額が半端ないという事態が発生する。

うちみたいな同族会社だと、会社経営の当事者の側面もあるため、減額対象となる関係者には理解をしてもらっているが、単純に会社から給与を受け取る者の立場として給与減額を捉えるとかなり厳しいなと思った。

分かりやすく説明するために、月収80万から40万に下がった場合を考えてみよう。(東京、介護保険あり、扶養ゼロの場合)

・月収80万円の天引き
 社会保険料 約11万
 所得税 約6万
 住民税 約5万
 手取り 約57万

・月収40万の天引き(給与変更後3カ月間)
 社会保険料 約11万
 所得税 約1万
 住民税 約5万
 手取り 約23万

つまり、給与減額後の手取りは、それまでの57万から23万に下がっている。

額面の減額は半分だが、57万の半分は28.5万なので、給与減額後の手取りは、額面以上にダメージが大きいことになる。

制度設計としては、給与減額後にはすぐに天引き額も変動するか、またはむしろ逆に天引き額の一時的な減少という援助制度があってもいいくらいだと思うのだが、いかがだろうか。

額面が下がっても、天引き額がしばらく変わらないというのは、より給与減額のダメージを制度が助長してしまってないだろうか。

こういったちょっとした制度設計から、日本がなぜ現在の形に硬直しがちなのか、変化を恐れるのか、ということのヒントが見えてくる気がする。

変化や新しいことを歓迎する土壌がないのだ。

今の状態でいることが一番楽なのだ。

結果、解雇規制などで従業員が守られすぎて、逆に会社経営者からすれば大胆に給与水準を上げることができないという事象が発生する。

大胆に給与を上げることができるのは、大胆にそれを下げるということも許容されている時だけだからだ。

結果、従業員の給与がダイナミックに変化するということは起きなくなる。

日本でそれが発生するのは、外資など外的な圧力がかかって、変わらざる得ない状況が発生したときだけだ。

日本人は、歴史を見ても、自発的には変わらず、外圧によってはじめてシフトチェンジできるという国民性がある。

ただ、一つだけ明らかなのは、外圧によって動き始めるより、自発的に動ける方が強いということ。

誰からに先んじられている時点でもう遅いのだ。

話が思わぬ方向に拡張して散らかってしまったが、今日はこれくらいで。


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