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アトツギが紡ぐ自立型組織の可能性
少しずつ肌寒くなってきており、夜にはエアコンをつけずに過ごすことができるようになってきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今月もアトツギファースト事務局が気になったアトツギ記事をご紹介します。
【書き手】タイロン / ナレッジ開発マネージャー
外資系コンサルティング会社を経て、2023年4月一般社団法人ベンチャー型事業承継に参画。自身が地方中小企業の5代目であることを活かしたアトツギ目線での支援を実施中。
”中小企業型ティール組織”という新しい未来への挑戦
側島製罐の石川さんによる自己申告型報酬制度の導入という社運を賭けた挑戦を描いたnote記事です。
「MVVという内発的動機に基づくものを、外部から誰かが評価したりマネジメントしたりすることは正しいのだろうか」ということでした。みんなでつくったMVVは、各自の心の根底にある”良心”から湧き出るものであるはずなのに、それに評価という力学が加わることによって、MVVに即した行動をすること自体が目的化したり”やらされ”になったりしないか、という違和感です。
石川さんの強い想いと覚悟が感じられる感動的なnoteでした。自己申告型報酬制度の導入は中小企業の経営者としてはとても覚悟がいることだと思いますが、石川さんの取り組みは多くのアトツギにとって"従業員から見た自社の姿"を理解するきっかけとなるのではないでしょうか。
また自己申告型給与制度が気になる方は、アトツギ界隈でもファンの多い、木村石鹸の木村さんの取り組みも参考になると思いますのでぜひこちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。
いかに自分たちの「コア」をアップデートし続けられるか──虎屋が18代、500年にわたって愛される理由
ビジネスの目標は、10年後、20年後、100年後に設定するかで取るべき行動は大きく変わってきます。たとえば、私が大学で学んだ当時は「利益の最大化」が会社の一番の目的だと教えられました。ただ、仮に自分が当時学んだことを最優先とし、プロフィット・マキシマイゼーション(利潤極大化)や売上の最大化を目標にしていたら、現在と全く異なる行動をとっていたでしょう。
老舗企業のアトツギだからこその100年先を見据える圧倒的な"長期目線"は、スタートアップ起業家やサラリーマン社長だと中々持ちづらい、アトツギの最大の強みなのかもしれません。
【失敗しない事業承継】先代の企業理念は残すべき? つくり直すべき?
『理念経営2.0』の著者・佐宗邦威氏に寄せられた質問への回答をまとめられた記事です。
僕の周りでは、業績が安定している会社が事業を承継する場合、既に存在している企業理念はそのまま維持するよりも、時代に合わせて考え直すケースが多いです。
例えば、鹿児島にある小平株式会社という総合商社は、事業承継のタイミングで、先代ではなく「次世代のメンバー」が中心になって、ビジョン・ミッションを策定し直しました。
企業理念は残すべきか、つくり直すべきか。それぞれ会社の歴史や状況が異なるため明確な正解はないものの、組織をこれまで支えてきた先代と、事業を承継していく次世代メンバーとでは、生きてきた時代がまったく異なるため、アトツギが主導となって企業理念を再定義していくプロセスは場合によっては必要なことなのかもしれません。
本記事の事例で挙がっている小平株式会社の小平さんはアトツギファーストのメンターであり、どうようにしてミッション・ビジョンをつくっていかれたのか、noteで詳細にまとめられています。
地域企業の社長に博士号、三重大学大学院の計画とは
「経営者は日頃から事業について懸命に考えているが、経験に基づく我流のことが多い。博士研究を通じて客観的に自分を見つめ、考えを理論的に組み立て、明瞭な結論を導き、確信を持って次の事業に踏み出してもらいたい」
「博士号はPh.D(哲学博士)と表記されることがある。専門知識を多く持つ人を指すのではない。どの専門であっても研究の過程で培われた考える力、論理的にまとめる力の証が、博士号だ」
大人の学び直しが注目される今なお、教員側と、社会人学生の間にはギャップが生まれてしまっている大学も多い。三重大学の思い切った取り組みは、地域でイノベーションを起こせる人材を育成する仕組みとして、多くの地方大学の参考になるのかもしれない。
今月の一冊
最後はアトツギファーストで「ナレッジ開発」を担当するタイロンが選ぶ今月の一冊。
ベストセラーであるため、説明不要かと思いますが、今もなお色褪せることのない楠木さんの名著だと思います。
優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ、ということです。戦略を構成する要素がかみあって、全体としてゴールに向かって動いていくイメージが動画のように見えてくる。全体の動きと流れが生き生きと浮かび上がってくる。これが「ストーリーがある」ということです。
"時間的奥行き"のあるアトツギだからこそ響くものがあるのかもしれません。まだ読んだことのないアトツギはぜひ!!
以上、おわり!
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