「モリコーネ 映画が恋した音楽家」

https://gaga.ne.jp/ennio/

試写の案内はもう1か月以上前に届いていた。
が、僕は
後のお楽しみと大切にとっておいて
暦が12月になり「さて!」と昨日、極楽試写した。

多くの映画音楽に名作を送り出した巨匠エンニオ・モリコーネのドキュメンタリー。
ともかく、監督のジュゼッペ・トルナトーレ監督のモリコーネ愛が満載されている作品。
監督自身まだ新人に近い時期にあの「ニュー・シネマ・パラダイス」の制作をするのだが
その際に
すでに巨匠との名声を得ていたエンニオに音楽を要請した。
若手の監督に対し経歴とか名とかに関係なく、同じ目線で制作に取り組んでいるエンニオの真摯な姿勢に
ジュゼッペ・トルナトーレは心打たれ、そしてあの名作が生まれた。
その後も「海の上のピアニスト」等へとつながっていく。

エンニオは若い時期にクラッシックを学び、当初はその厳格な世界での活躍を期待されたが
1960年代、いわゆるイタリアの流行歌の世界に踏み込み
そこから映画音楽へと進んでいく。マカロニ・ウェスタンのあの音楽をはじめ。
ここで記しておきたいのが
この彼の音楽学のルーツの部分だ。
作品中でも度々本人が語っているが
彼の作品の根底にあるのは、若い時期に学んだクラッシックの作曲法にある。
(当時は)軽く見られていた映画音楽に
クラシックの世界からある意味ドロップアウトした彼、
もちろんコンプレックスはあったと思う、
しかし、そのコンプレックスをバネとして
かつ、常に、自身が学んだクラシックの作曲法を駆使し
というか
作曲の基礎を習得していたからこそエンタテイメントの音楽界であっても
その地位を確立できたということだ。

僕は度あるごとに言及することに、ピカソの例がある。
ある意味わけわからんキュビスムの現代アートの巨匠だが
実は彼はデッサンの天才である。
まだ10代そこそこの時に絵画の基礎、デッサンを完璧に習得していた。
その才能を父親が気付き
後の大天才、ピカソが生まれる。
何が言いたいかというと、
基礎、基本ができているか否により
その上に(そこから飛び出して)できたものの違いは大きいということ。
その可否により
百戦錬磨の世界でも生き残る、いや!トップに立てるということだ。
エンニオがまさにそれ。
曰く
「もはや音符は重要ではない。重要なのは音符で何をするのか」
彼のこの言葉は、『音符がなんであるかを学び知り尽くした』からこそ出てくる言葉なんだと、僕は理解する。

さて
作品は本人と70人以上の著名人のインタビューと関係する作品映像等で構成される。
タイミングごとに
(おおおお、おおおお、そうそう、そうそう)
とみるみる前かがみになってしまったことも確か。
ただし、願わくばもう少し短くしてもよかったのではと。
名監督監ジュゼッペに物申すのはなんだが
特に当初の10数分とラスト近くの10数分はもう少し整理できたのでは。
まっ、これもジュゼッペがいかにエンニオを愛し、尊敬していたことの証かな、とも。

残念ながらエンニオは2020年に亡くなっている。

2023年1月13日 公開

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