001 闘いの始まり

皮膚の新しい見方 〜アトピー性皮膚炎から健康美肌へのパーソナル・レシピ〜

※最初のページをお読みでない方は、まずそこ(下のリンク)に書いてある注意書きをお読みください。

最終的な方法に辿り着いたのは、アトピー性皮膚炎が発症して10年以上も経ってからのことで、方法の部分を書き始めてみましたが、時系列を示した方がうまく伝えられそうなので、まずは発症当初のことから書いていきます。


発症

会社勤めを経て大学院に入って、なんとか博士号を取得して、ある公的な研究機関に勤め始めた2008年の秋のことでした。

ある日、膝裏が異常に痒くなり始めました。もともと夏にはよく湿疹のできていた箇所なので、最初はそれほど気にしていませんでした。ところが痒くなってきたのは晩秋から冬にかけてで、そのときにすぐに変だと気づくべきでした。

というのも、あとではっきりと認識したことですが、その原因が、当時継続的に摂取していたある"健康食品"であったと思われるからです。すぐに摂取をやめていれば、これほど長い間、アトピー性皮膚炎に苦しまずに済んだかもしれません。
この健康食品については別の記事に書きます。ひと言だけ書いておくと、それは副作用とかではなく、明らかにその健康食品の効果が発揮されたということです。

湿疹と我慢

湿疹は子供の頃からだったから馴れっこになっていました。痒くても引っ掻いてはいけないと親から言われて育ったので、しばらくは我慢していましたが、ついに我慢できなくなってきました。昼間、仕事中にもしょっちゅうズボンの上から膝裏を引っ掻くようになっていて、デスク下のリノリウムの床には、皮膚の残骸(乾いた皮膚片=角層の剥がれ落ちたもの)が目立つようにさえなってきました。昼休みなど居室に他の人のいないのを見計らって、こっそり掃除機をかけたりしていたほどです。

そのうち、膝の裏だけではなく、手首の机に当たりやすい部分(手のひら側)も痒くなり、やがてうなじ辺りからも皮が剥けるようになってきました(うなじ部はごく短い期間で、数日から1週間程度だったと思います)。この時には認識していなかったのですが、以前から悩まされていた湿疹のじゅくじゅくする皮膚の状態とは異なり、乾燥した皮膚片が次から次へと剥がれ落ちてくるという状態でした。

とにかく我慢できるだけ我慢して、我慢できなくなると引っ掻きました。入浴した際に膝裏から明らかに皮膚が剥がれているのが分かりました。それも何層にもなって剥がれます。残っていると痒くなるので、できるだけ皮膚を傷つけないように気をつけて、浮き上がった皮膚だけを丁寧に剥がしていました。でもその時点で、昼間や就寝中に痒くて引っ掻くため、すでに皮膚はところどころ傷がついて、傷口からは血液やリンパ液のようなものが滲み出すようになっていました。

やがて止まると思っていた、皮膚の剥がれも、痒みも、まったく止まりませんでした。まだ日常生活に重大な影響を及ぼすことはありませんでしたが、徐々に痒みで睡眠が十分取れなくなっていきました。

悪化

翌年の夏(2009年)、職場が変わり、引っ越しすることになりました。悪いことに、新しい職場があるのは、夏は暑く、冬は寒いという皮膚炎持ちには少々辛い中部圏の大都市でした。

引っ越し後、初めての秋を迎え、皮膚が悪くなって以来、初めての出張がありました。自宅では、剥がれてくる角層の除去は、(お湯が汚れすぎるので)浴槽ではなく浴室の洗い場でシャワーを出しながらしていたのですが、宿泊したホテルの浴室は基本的に浴槽しかないタイプでした。少々奮発して普段よりもいいホテルに泊まったので、浴槽はゆったりとしていたから、まだマシでしたが、それでも作業は大変でした。

まず浴槽に湯を張って、しばらく湯に浸かって皮膚を柔らかくしてから、湯を抜いて、手入れに取りかかるという手順です。洗髪をしたりしてからまた湯を張る。そこで仕上げの手入れをして、最後のシャワーを浴びるという感じだったと思います。

確か3泊4日くらいの出張だったのですが、2日目くらいに膝裏の状態がかなり悪化して、昼間には、ズボンの膝裏部分に血液とリンパ液の混じったようなものが滲み出していました。それまでは多少液が出ていても、他の人に知られるようなひどい状態にはなっていなかったのです。

それはショックでした。ついにここまで来てしまったか、と。でも逆にそこで僕は開き直りました。もうここまで来てしまったなら、むしろ積極的に削ぎ落としてしまおう、と思ったのです。

闘いの始まり

それまでは、健常と思われる皮膚が出る程度まで、剥《む》けかけた皮を丁寧に剥《は》がすというところまでしかしていませんでした。浮いた皮を除去しても、昼間に剥がれる皮膚は少なくなりますが、痒みは一向に治まっていませんでした。だから夜は痒みとの戦いとなり、睡眠不足は延々と続いていました。

それまで皮膚を傷つけないように細心の注意を払って作業していたので、たぶんその時までに僕は丁寧に皮を削ぎ取る技術を身に付けていたのだと思います。ズボンの膝裏が汚れた日の夜、お風呂で、膝裏の皮を削ぎ落とした後でさらに積極的に痒みの元に辿り着こうとしてみました。すると、垢の固まりのようなものが皮膚から次々と出てきたのです。

その時点になってようやく僕は、この痒みの元が何だったのか、理解し始めました。どうやら身体の中に溜まりに溜まった角栓が身体の外に出たがっていたことを。いや、身体の方が角栓を身体の外に出したがっていたらしいということを。

思い返せば、そこからが今に至るアトピー性皮膚炎との本当の闘いの始まりだったのかもしれません。症状——病気とは思っていないので、この言葉はあまり使いたくはないのですが——が出て、およそ1年後のことでした。

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