【毎週ショートショートnote】『ひと夏の人間離れ』
ヒマリの場合
ある夏の日の朝、パルがいなくなった。
パルは私が7歳のとき、我が家にやってきた子犬で、それから3年間ずっと一緒に生活をしてきた。何をやるにも一緒で、それはもう家族を超えた絆で結ばれていたと言ってもいいであろう。
少なくとも私はそう思っていた。
それなのにパルはいなくなった。
散歩に出かけるため玄関のドアを開けた時、突然駆け出し消え去ってしまった。私は泣きながら辺りを探し回ったが、結局見つけることはできなかったのだ。
パルの場合
ある夏の日の朝、僕はヒマリの家を飛び出した。
予定通りの計画だった。
きっかけはその前日だ。
いつもの散歩道で、ひそかに恋心を寄せているダンテに会った時、教えてもらったのだ。
最近、若犬の間では『人間離れ』が流行ってるんだって。
人間の若者の間でも『○○離れ』が流行ってるから、一緒にやってみようって。そうやって僕とダンテは同じ日に飼い主のもとを離れたんだ。
結局3日後には家に戻ったんだけどね。(421字)
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
*え、人間離れ違い?
ワンちゃんの世界でも多様化が進んでいるようです。