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SDエイバル|「人間性で選手を獲る」わずか2万人の街で生まれた奇跡のチーム

こちらの記事では、バスク州ギプスコア県エイバルを本拠地とするSDエイバルの地域性や特徴をまとめています。みなさんのラ・リーガ 観戦の助けになれば幸いです。

【地域】 「鉄砲工の都市」、武器製造で栄えた小さな街

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地域名:エイバル(バスク語: Eibar、スペイン語: :Éibar)
州:
バスク州
県:ギプスコア県
人口:2.741万
※州>県>地域:バスク州ギプスコア県エイバル

スペイン北部のバスク自治州ギプスコア県のエイバル。ビルバオの東に位置し、美食の街「サン・セバスティアン」まで車で1時間ほどで行ける人口2.741万の小さな街だ。エイバルはバスク語で「谷」を意味する。その名の通り高低差のある地形は独特の街並みを作り出している。狭く坂道が多く、住民が行き来するための公共エスカレーターが設置されているほどだ。

歴史的には16世紀以降、銃などの武器製造でよく知られている。特に繊細な彫刻が施された小銃が有名。その他の冶金製品として、自動車部品、ミシン、手術器具などがある。1936年-39年にかけてのスペイン内戦では、武器工場が国民党の激しい空爆の標的となったほどだ。その特徴から、別称シウダー・アルメラ(鉄砲工の都市)とも呼ばれている。

【概要】 SDエイバル

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名称:SDエイバル(Sociedad Deportiva Eibar)
愛称:アルメロス(兵器製造者)
地域:バスク州ギプスコア県エイバル
創設:1940年
クラブカラー:赤紫&青
スタジアム:イプルア(Estadio Municipal de Ipurúa)<7,083人>
最高成績 :9位
公式サイト:http://www.sdeibar.com/

SDエイバル (Sociedad Deportiva Eibar)は1940年の創設以降、地域リーグからトップリーグ(プリメーラ)まであらゆるカテゴリーを経験してきた歴史あるクラブ。1988年-2006年まで2部リーグに在籍し2部の最長記録(18年連続)を達成し、2013-14シーズンの1部リーグ昇格決定以降、人口2万人ほどの小さな地域に支えられながら幾多のビッグクラブとしのぎを削っている。かつて兵器製造産業で栄えた地域にあることから「アルメロス(兵器製造者)」の愛称で親しまれるこのクラブは、歴史と文化を覗き見すると、その呼び名とは相反する温かく優しい印象を抱かせてくれる。

特徴1.ヨーロッパ最小スタジアム&革新的方針

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SDエイバルの特徴の一つがヨーロッパで一番小さなスタジアムと言われているイプルア・スタジアム。収容人数7,083人はFCバルセロナの本拠地カンプ・ノウ(99,786人)の1/10にも満たない規模で、「Jリーグスタジアム基準」に記載されたJ2の基準(8,000席以上の座席)もクリアしないというのだから驚きだ。裏を返せば、世界で最も近くでスター選手のプレーがみれる最高の環境と行っても良い。

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だがスタジアムおよびクラブの規模に反して、その方針は大胆かつ革新的だ。それを象徴するのが、2部に昇格した2013/2014年シーズン。スペイン政府から新株発行による200万ユーロ(約2億4000万円)の増資を義務付けられた。どうにかお金を集めなければならなくなったこの時、大株主を迎え入れるのではなく、小口株主を世界中から募り、計200万ユーロの増資を実現する。クラブは「Defend Eibar(エイバルを守れ)」というクラウドファウンディングを実施し、いまでは69カ国1万人以上の株主によって支えられている。小さな街で育まれたクラブは、いまや世界中に仲間をつくることで一部リーグという大海原で戦っているのだ。

特徴2.「エイバル・プリメラン」地域の夢を叶えたクラブ

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クラブ創設以降、2部Aと2部Bを行き来することがほとんどだったSDエイバルにとって2部Aの残留が目標として定着していた。しかし、2013/2014年シーズン2部Aで躍進していたチームはこれまで経験したことのない1部リーグ(プリメーラ)という夢の世界への扉が見え始めていた。この時、エイバルの街では「エイバル、春には1部昇格」「エイバル・プリメラン」(※プリメランはバスク語で「Very good」、「1部(プリメーラ)」に掛かっている)のスローガンが流行し、街中の窓に赤紫と青(チームカラー)の旗が飾られた。

そして2014年5月25日。ホームでアラベスに勝利したSDエイバル(厳密には同時刻、レクレアティーボ・デ・ウエルバがラスパルマスに勝利した瞬間)は創設以来はじめてスーパースターがひしめき合う1部リーグへの切符を手にした。歓喜に沸いた街はお祭り騒ぎとなり、一晩で市内中のCAVA(スペイン産スパークリングワイン)が飲み干されたと言われている。

特徴3.人間性で選手を獲得するファミリークラブ

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SDエイバルを日本で語る上で欠かせない乾貴士選手。日本人リーガ最多得点記録、日本人リーガ最多試合出場記録をもつ彼がSDエイバルの雰囲気について「選手を獲得するときに、人間性を大事にしていると聞いたことがあります。例えばプレーと人間性が7:3の割合でプレーが優れている選手よりも、5:5か4:6で人間性の高い選手を強化部は獲得するんです。(引用)」と語っている。その結果、SDエイバルには人間性に優れた選手が集まり、分け隔てないチーム作りの下支えをしている。

実際にその文化はクラブ施設の中にも浸透している。施設内にはバスク語で「角」という意味を持つ「チョコ」という場所がある。チョコは食事やコミュニティーを重んじるバスクにおいて大切な文化的空間とされている、いわゆる食堂だ。チョコは、毎シーズン新しい選手がはいってくるクラブにおいて、スタッフや監督、選手たちが一緒に食事をして親交を深めることに機能し、チームにとって大切なコミュニケーションをとる場所なのだ。人間性を重んじ、家族のようなチームを体現しているクラブならではの文化かもしれない。

おまけ:癖になるヘビメタ応援歌(日本語訳付き)

バスク地方出身のヘヴィメタル/スラッシュメタルバンドSU TA GARが歌うエイバルの応援歌「Ezina eginez(不可能なことをする)」が癖になるほど気持ちいなのでぜひ聴いてみてください。歌詞の日本語訳も載せておきます。

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【SDエイバル情報収集】オススメTwitterアカウント

▼SDエイバル(公式アカウント)

▼SDエイバル(日本語公式アカウント)

【あとんす的オススメ記事】SDエイバルをもっと知る!

▼躍進を支えた女性CEO・パトリシア・ロドリゲス氏(現エルチェ)

▼69カ国に散らばる1万1000人の株主に支えられるエイバル

▼スペインに認められた乾貴士とエイバルの関係性

▼エイバル施設、内部映像


関連note

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