冷夏の恋の話
もう10年以上前、冷夏に熱烈な恋をした。
と言ってもまだ若かった私は、学生時代の「恋に恋している」ような状態から大人の恋愛に移行する途中のような段階だったと思う。
だから、熱烈と言っても今の自分からみたら「若いなぁ」と思うような「青春!!」という感じの全力で向かっていく、胸キュン系の恋だった。
結局私の想いが強過ぎて離れることになってしまったのだが、年上の彼の優しい配慮もあり、とてもきれいなサヨナラができたおかげで、今でもとてもいい思い出だ。
でも、あの夏からずっと、日本は記録的な猛暑を更新し続けていて、冷夏が巡ってきていない。
だから、いつまで経ってもあの冷夏の恋は美化されて私の記憶の片隅に残ってしまっている。
さすがにそろそろ冷夏が訪れて、私の恋の記憶も更新して欲しいと思ったりもする。
今のままではきっと、夏が来るたびにあの冷夏の恋を懐かしんでしまう。
それはそれでいいのではないか、と年を重ねるたびに思えてきている自分もいるのだけれど。