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花束みたいな恋をした、はあなたの物語。

※ネタバレ祭り

何となく今日しかない、と思い鑑賞。
土井裕泰監督、坂元裕二脚本の「花束みたいな恋をした」
私の大好きなドラマベスト10入りしている「カルテット」「最高の離婚」の脚本家であり、遡れば「東京ラブストーリー」等ヒットドラマを世に送り出してきた脚本家坂元裕二さん、監督も「カルテット」「重版出来!」「コウノドリ」を手がけた土井監督の映画、となれば行くしかないと。

緊急事態宣言のため20時までの上映だったから、終わった19:45にラーメン屋に駆け込んだのは余談。
あと、隣のおじさんが80代くらいで私と同じくひとりで観ていて、どんな感想なのか聴きたくなった。現代の恋模様をどう思ったのかなあ。

令和を生きるアラサーの我々一人ひとりのための物語だった

結果から言うと最高に良かったです。
一分一秒一言一言すべて漏れなく聞き逃したくない台詞たち。後半カラオケからはほぼ泣いてました。この脚本と監督のタッグは、ぶっ刺さる人にはぶっ刺さるヤツを作るのが本当に上手い…もうありがとうございます…

サブカル好きに「見せかけてる者」への痛烈な風刺

主人公の麦と絹は、サブカル好きに見せかけた「俄か」ファンの人々。大学生の時、時間があり余ると訪れる、それまで知らなかった沢山のコンテンツに触れる時間。それで、自分だけはこんな作家知ってるのよ、曲知ってるのよ。お笑いもこんな芸人知ってて舞台も好きなんだよねえ〜と周りに誇示したい時期。あるある過ぎて赤面してたw
お笑いのチケット取ってても、行かないってことはそんなに好きじゃないんよ。で、その温度感が麦と絹は同じだった。本当に好きだったら有給取って絶対に行きます。本当に好きな芸人のこと考えてたら空席なんて作らせません。
ただ、ファッションとしてサブカルが好き。こんなものも知ってる自分は尊いのよ。世間とは違うのよ、と自己陶酔しちゃう時期。誰にもあります。
ちなみに私は出てた作品全然知らなくて、いかにサブカル文化に精通してこなかったんだろうなと思いました。たぶんショーシャンクの空に側の人間です。笑 
押井守を知らない側の人間を嘲笑するシーン。あれって自分が詳しい分野になると途端に世の全てを知った気になる、あの現象に名前を付けてくれw

でも人によって好きな分野って全く違うのですべてを網羅するなんて無理な話。あの終電一緒に逃したビジネスマンとビジネスウーマンにしか知り得ない分野もあるというのに、たまたまサブカル詳しかった麦絹が馬鹿にすること自体が滑稽なんだけど、麦絹は学生だったからわかんないんだよなあ。
マウント取りたがりの現代若者への痛烈な風刺。くぅうぅう!恥ずかしくなるうぅう!!(身に覚えがありすぎて)

きのこ帝国の曲の歌詞で遊んだり、舞台の再演に行ったり、好きな作家の新作待ち侘びたり、ふたりはどこまでも似てた。でも「労働」が始まってそういうサブカル文化との付き合い方が変わっていく。麦は大切だったはずの本を車のトランクにぶん投げたり、パズドラにしか思考が向かなくなっていくんだけど、絹は相変わらず本を読むしゼルダをやるし舞台に行くし、「好き」を仕事にしようとする。趣味との付き合い方が根本的に違っていった。

田舎から出てきた者の「背水の陣」感

けどわたしはここで物申したい!

絹は都会の生まれ育ち、親は広告代理店勤め。
東京にしがみつく必要がない。もし何か失敗しても実家に戻ればいいじゃない。
けれど、麦は新潟から上京して、父さんも地元に帰って来いと言っている。
背水の陣!!!!
もう戻れない。あの場所には。と感じている地方出身の皆さんは麦に共感することが多かったのではないでしょうか。

わたしの出身コンプレックスはもはや言わずもがな。東京にしがみつきたい人間。
甘いこと言ってらんねーんすわ。ここで職を失ったら地元に帰る場所なんてねーんすわ。
だから、絹が転職したいって言ったとき麦はなーにを甘いこと言ってんだこのシティガールが!!!と思ったのだと。ひしひしと感じましたよ。東京に戻るべき場所があるヤツは苦手です。(ど偏見)
私も好きを仕事にしたタイプの人間なので、絹の言葉には少し甘さを感じました。別れの時も、派遣だし〜給料も下がるし、ここの家賃払えないし出ていくよ〜じゃねえわ。

麦が働きたてで心を失っていくさまも本当に痛々しいながら自分と重ねてしまいました。5年やれば余裕出てくるよ、って麦の会社の先輩が言うのですが、本当にいま私は5年目でようやく自分のペースが掴めてきています。きっと今なら麦も趣味に向き合う時間もあるんじゃないかな。最後のシーンでバロン(黒猫ちゃん)と過ごす姿は少し余裕を感じられた。結局タイミングなのだよなあ。とひしひし。
余裕ないときに自分でも思わぬ失言しちゃうときってあるじゃないですか。
舞台観に行く約束して、でも次の日には仕事があって、喧嘩して、「じゃあいいよ観に行くよ」って返しちゃう。「じゃあ」なんて言いたくもなかったのに。言ったことは取り返せない。何度それで泣いてきたか!!!

というわけで脱線しましたが、わたしは出身地によって人の価値観は大きく違うと思う派です。ちょうど学生時代から就活時代に付き合っていた彼を思い出しました。彼は東京出身だったからな。きっと相容れないことはあった、でも言い方も悪かったごめん。(自戒)

別れのファミレスで自分たちのストーリーは「ありふれたシーン」だったことに気づいて涙する

麦と絹が別れ話をするとき、趣味の話が止まらなくて、ファミレスに寄ってひたすら話す男女があの席に座ります。そして、ふたりの涙は止まらなくなります。わたしの涙も止まらなくなります。笑
もう、「話そう」と言わないと話も弾まなくなってしまった麦と絹との対比が辛かった。
そしてあの運命的なふたりの始まりは、そこらへんで起こってることに気付かされます。
昔の自分たちと重ね合わせて、5年の月日を思い出してしまって。もう洪水w
成長したんだよ。私たちも。そして何者でもない、普通のよくある男女だったんだよ。って思い知らされる。
でも、きちんと話して別れられるって素敵。大抵の別れはもう修羅場でこんなに綺麗なものではない。しかも、この二人は別れてからも3ヶ月一緒に過ごして気持ちの整理をしている。きっと家を退去して鍵を返すときは鼻水ダラダラで泣きますけどね私は。
言葉の節々が伏線だらけすぎてもう書ききれないけれど。「あと一歩」足りなかったのがふたりの関係。

2020年 偶然の再会

音楽はステレオで聴くもんや!!と言うのなら、カフェで聴くこと自体周りの雑音でしっかり聴こえてないのでどこか別の無音の室内で聴いてくださいとすら思ったけど。笑
イヤホンひとつでマウント取る姿勢は2020年現在のふたりも変わらない。というか、5年一緒にいた人なんて思考がどんどん似てくるよ。経験したことが一緒で、そこから自分の正義を見つけていくから。
そして、ふたりのそれぞれの隣にいた新しい恋人のこれじゃない感w
きっと今なら分かり合えるんじゃないかなぁ…とお節介にも思ったりしますが、私は復縁したことないタイプの人間なのでやっぱりもう戻らない、に一票かなあ。
絶縁するので、本当に偶然あんな風に会ったら元彼にどう接するだろうなと思った。別れ方によって対応は違うけれど、また戻りたいという感情にはならないと思う。やっぱり別れを選ぶっていうのはそういうこと。時は残酷だけど、今が一番幸せだし。

とにかくすんごいものを見せられました。これは映画館だわ。普段はSF以外は家で観ればいっか、と思うタチですがこれは映画館で大正解。

権利関係どうなっとるん

一番驚いたのは権利関係です。仕事上、権利のあるものの使用には人一倍気を遣ってるけど、あの膨大なコンテンツ達の権利をどのように取ったのか!!!凄すぎる。
しかも実際にゲームや映画のタイトルの映像とかも使ってるんですよ。こんなの初めて!
前田裕二の人生の勝算とかワンオクの使い方って少し冷ややかな使い方じゃないですか。これってどうやって使用許可取るんだろう…?
膨大な予算が使用許諾に使われているのかな、映画だからこそ為せる技なのでしょうか。

キラキラ⭐︎ラブストーリーへの揶揄

予告編から全く裏切られました。邦画ってとにかく予告編ダサい、よくある音編集によくある台詞の繋ぎ、よくある映像の切り取り方。そのことを逆手に取った作品だと思いました。よくあるラブストーリーみたいな予告編。中身を見れば、ドロッドロの恋愛ドキュメンタリーでした。
結局細部まで読み取るには自分の国の映画なんですよ。海外のジョークとか生活観って、わからないから全ては感じ取れない。
いよいよ、楽しくなってきました!!!今後の邦画も楽しみになっちゃう作品になった。

何度も繰り返し観たい作品がまたひとつ増えました。作り手の皆様本当にありがとうございます。

いつか映画に携わりたいなあ。

とりあえず私さわやかのハンバーグ食べてみたい。
御殿場のアウトレットの帰り。なんであんなに並んでるの?なぜいつも諦めるしかないの?
静岡に用事をください。日帰りの首都圏民にさわやかを体験させてください。


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