Slow media宣言。不便だけど豊かさを味わえるものの力を信じている
以前、ここで手書き地図推進委員会として京都にトークショーに行ったときの模様を書きました。そのときに、再会&再開してしまったものがあります。もう、トップ画像を見れば、バレバレですね。はい、カセットテープです!
カセットテープ体験の贅沢さ!
手書き地図推進委員会長男の川村さんが持ってきたポータブルカセットプレーヤーを聴かせてもらったら、もう我慢できなくなりました。物理的に音楽を持ち歩くというめんどくささ、カセットテープの貸し借りが物理的にできて、音楽について語り合う時間。ガチャコンと動く機械としてのフィードバック。ただのノスタルジーではなく、今ポータブルカセットプレイヤーで音楽を聴くということの贅沢さを一瞬で理解してしまいました。
もちろん、アナログプレーヤーもレコードも持っています。カセットだって当時どれだけお世話になったことか。自分のアーカイブを掘れば、高校生時代にFM仙台でやっていたラジオ番組だってカセットテープで見つかってしまうでしょう。
でも、違うんです。繰り返しますが、これはノスタルジーじゃない!ストリーミングで音楽を楽しめる環境に慣れてしまった今の時代の自分にとって、こんな贅沢な音楽鑑賞はない。カセットテープを掘っている時間も、聴いている時間も純粋に自分の楽しみの時間というのがいい。これからは人生に、出かけた先でカセットテープを掘る豊かな時間が加わりました。
Slow Media宣言。Slow Mediaの本質へ
一周回って、この手のSlow Mediaの価値を再評価されてきているように感じます。先に言葉の定義をしておきたいのですが、Slow MediaとはWeb媒体やスマホアプリ、電子データなどの早く広く情報を届けるものの対抗にある物理的な媒体のことを指して使っています。僕の勝手な造語です。物理的な媒体ということでは、店舗などの場もSlow Mediaといえます。
一時期、この手のSlow Mediaに対しては、紙メディアの凋落、フィジカルな音楽メディアの衰退、店舗という売り場の減少など、ネガティブなことが語られれ続けてきました。しかし、その段階が過ぎて、Slow Mediaは「体験としての豊かさ」や「ブランドとしての価値」として本質が再評価され始めています。例えば、以下の記事とか紙メディアの価値や電子メディアとの役割分担が確立したことがわかります。
店舗に関しても、D2Cブランドがあえて店舗を持つ理由という記事が、Slow Mediaの得意なブランドのストーリーを表現する場としての魅力を紹介しています。
個人としてカセットテープ回帰の話を書きましたが、ここ10年ぐらいの自分の仕事を見直してみると、Slow Mediaの本質を活かした提案をし続けていると捉えることができます。ブランドのストーリー、ものづくりの背景を伝えるために作っている天童木工のカタログ。ANAのプレミアム会員に、世界観を伝え、豊かな時間を過ごしてもらうために作成しているana-logueという雑誌。手書き地図推進委員会として、目的地に効率的に到着することを目的としない、思ってもいなかったものに出会うこと目的とした手書き地図……。
機能だけで語る以上の価値を持っているものを、より知ってもらう・体感してもらうのにSlow Mediaほど適した媒体はありません。
不特定多数にたくさん売ることや、誰でもいいから多くの人に伝えるのではなく、特定の人に深く知ってもらったり、記憶に残るようなものを誘発するために、今後もSlow Mediaを活用していきます。個人的にも、法人としてもますますSlow Media宣言です。