【日常生活】時計がない!
午後2時5分。出発しなければ会社に間に合わないというタイミング。本棚の上の段に置いてある時計をつけて、結婚指輪をつけて、家を出るというのが出社日のルーティンだ。
なのに…時計がない。指輪はあるのに。
時計はなくても、会社のフロアには掛かってるから、そんなに困らない。でも、そういうことじゃない。日々のルーティンだし、これは妻が指輪のお返しに買ってくれた大切な品だ。その所在がわからないのは気持ち悪い。
いつもと違うところに置いて、忘れてしまったのか。いや、それ以前に、前日に行ったテーマパークに置いてきてしまったかもしれない。はっきりは覚えてないぞ…まずい。
とりあえず出社はして、妻にLINEしたが、やはり、いつもの場所にはなさそうだ。テーマパークに置いてきてしまったのか…。食事処に…?
あ、一つ手がかりがある。テーマパークに行ったその日は最後に記念写真を撮ったのだ。その写真を確認すると…銀色の時計が光っていた。これで食事処の可能性は消えた。
記念写真を撮った後、家に帰るまでに、時計を外すような場面はあっただろうか。私たちはその後、自販機のある休憩場所で飲み物を飲んで、駐車場に向かった。そのときに時計、外した…? 普通は外さないけど、うーん、はっきりしない。
結局、テーマパークに置いてきたのか、単に家で埋もれているのかもつかめないまま、普段通りに仕事をこなし、帰宅した。妻に事情を伝え、まずは家の中を探すことになった。
と、妻は心当たりがあるのか、ふいに本棚の後ろに向かった。にやにやしている。
「…ここにあるよ。」
私の本棚は背板がないタイプで、壁とは隙間がある。時計はモノだらけの中段に置いていたみたいで、同じ段の他のものに押され、本棚の後ろ下に落っこちていたのだ。テーマパークがうんぬんというのは、やはり違っていた。普通にいつもの場所のすぐ近くにあった。
ホッとはしたが、同じようなことは最近もあった。
一人時間を過ごした日。駅前の有料駐車場を出ようと駐車券を取り出したそのとき。友人から電話が来た。鉄道に関する話題で盛り上がり、少し長くなってしまった。さて、こんどこそ出ようと駐車券を…あれ?
財布にも、スマホのカードケースにもない。まさかドリンクホルダーになんか…おいてない。あれっ、どこに置いたんだっけ…
10分ほど探し、さすがに焦ってきた。もし、これで本当に駐車券なくしたら、高額な料金になってしまう…これはまずい…。いや、冷静になりなさい。ないわけがない。ちょっと引いて見てみよう。
…あった。サンシェードに挟んでいた。電話に夢中になっている間に、無意識に挟んでしまっていたのだ。
こう続くと、情けなくなる。でも、人生振り返れば、こんなことはけっこうあった。妻は言う。
「ずっと同じ場所に置けばいいのよ」
核心をついた言葉だ。