【ニブセキの息子】出産前の心配 ー息子が産まれるまで③ー
妻のおなかは、はちきれんばかりだった。それでも、一番最初のクリニックで聞いた予定日よりも3週間ほど早い出産だ。
足がどれだけ動くか分からない、と医師からは聞いていたが、それに関してはあまり実感が湧かなかった。というのも、妻のおなかがよく、中から蹴られていたからだ。
それよりも心配だったのは、頭の大きさだ。ふつうなら、脳で作り出される髄液はうまいこと体の中を循環していく。ところが水頭症の場合、その循環がうまくいかず、脳の中にたまっていってしまう。液体が内側から脳みそを圧迫するイメージだ。そうすると、脳が障害を起こしたり、気持ち悪くなって吐き気を催したり…ということが起きるのだという。
聞くだけで、とてもかわいそうに感じた。
息子は出産前の時点で、フローチャートが用意されていた。
① 出産したら、腰に付いたコブ(髄膜瘤)を埋め込む手術をする。これは、体の神経のやりとりをする脊髄の一部が露出した状態。手術しなければ命すら危ない状態になる。手術後、痕が落ち着くまでは、ずっとうつぶせ。
② 手術、療養が終わった後、頭囲が大きくなりすぎる状態が続いたら、シャントという管を脳の中に入れ込む手術をする。シャントは脳みそとお腹をつないでいて、髄液をおなかの中に逃がす働きがある。やがて、逃がした髄液は体を循環していく。基本的に、シャントはずっと埋め込まれ、成長に合わせて入れ替え手術をしつつ、一生、付き合っていくことになる。
③ 落ち着いたら一般病棟に移り、退院。それから月一ペースで通院。
多くて二つの手術を、一か月の間にするのだ。私も妻も、一回も手術したことないのに。その妻も、帝王切開なので、はじめての手術になった。
初めてのことだらけではあったが、先生方の存在はなにより心強かった。出産前の時点で、たくさんの人たちが臨戦態勢で待っていてくれる。私たちとしては、身を委ねるだけ。
そして、いよいよその時がやってきた。
写真は、出産直前の結婚記念日のお祝い。このお店は妻ともどもお気に入り。