【新聞社の仕事】見出しをつけるのは難しい
今回は、ふだんしている新聞整理(見出し・レイアウト)の話。いつも抽象的な言い方になってしまうので、今回は例文で見てもらえたらと思います。これは架空の内容です。
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ひまわり市あさひの中央公民館で4日、市内のNPOによるチャリティーバザーや清掃活動をパネルで紹介する催しが始まった。6日まで。
市民の暮らしにかかわる身近な取り組みを知ってもらおうと、市などでつくる連絡協議会が主催。ことしは15団体が参加した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、展示物同士の間隔をあけて動線を広く取り、消毒液を配置するなどの対策を取った。
廃品販売やごみ拾いなどの活動をするNPO、夕日が丘の自然を守る会の朝日光さん(65)は、「市民団体を始めとする一人ひとりの小さな積み重ねがあり、暮らしが成り立っていることを知ってほしい」と話していた。
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地域面に載っていそうなこの記事に、どう見出しをつけるか。次のような組み立てがありうると思います。
①「コロナ対策万全に NPOなど活動紹介 ーーひまわり市で展示」
②「バザーや清掃活動 NPO活動知って ーーひまわり市で展示」
③「暮らし支えるNPO 活動紹介のパネル展 ーーひまわり市で」
④「バザーや展示通じて NPOの活動知って ーーひまわり市で」
コロナが流行り始めた時期で、感染対策自体がまだ珍しいものだったときは、①が良さそう。
どこでも普通に対策されるようになったなら、②がいいかもしれません。いや、主催者や読者側にとっては感染対策をとっていることが目立つ方が安心するかもしれないけれど…
③はこの展示が行われる趣旨に踏み込んでいます。言いたいことが全部言えている感じがします。今の私なら、③にしそう。
さて、先日、私があやうくつけそうになってしまった見出しが④です。実際の内容はまったく違うけれど。例文をよく読むと分かりますが、この記事ではチャリティーバザーとパネル展が同時にあったのか、パネル展でチャリティーバザーと清掃活動を紹介しているのか、よく分からないのです。
そもそも複数に意味がとれてしまう文章がおかしいんだから筆者に書き直してもらえばいいじゃないという話なんですが、筆者のニュアンス、表現を尊重するのが流れのようで、ウチの職場では、整理側は、間違いのないものとして届いた記事からつけることができる間違いのない見出しをつける、ということになっています。
あったことをすべて見出しに入れる必要はないので、①〜③は間違いのない見出しということになります。少なくとも活動を紹介するパネル展があったのは間違いなさそうです。
一方、④を見出しにしてしまった場合。紙面になって、たとえば主催者や読者から「バザーはやっていません」と連絡があったりして誤りだと判明したら、訂正を出すことになります。住民の生活を伝える地域面でそういう訂正を出すことは悲しすぎます。
見出しで考えなければならないことはもっとたくさんあると思いますが、そもそもの大前提として、間違いのない見出しをつけることは、果たさなければいけないこと。それだけでも難しいことだと、日々思います。