【ニブセキの息子】手術は本人も家族も大変だけど
先生はもっと大変だ。
息子2歳は生まれてからずっと、同じ病院で手術をしてもらっている。今回の手術は以前書いた通り、腰に埋め込んだ髄膜瘤の癒着をなくし、脊髄から水を逃す管をつけることで、脊髄に水が溜まりすぎている状況を改善し、将来、背骨が曲がらないようにするものだ。
手術は6時間
この手術、6時間くらいかかるらしい。手術の手順も、聞いただけで気が遠くなった。体の真ん中を通っている脊髄の外側には繊維状の神経が縦にびっしり走っているのだが、それらを傷つけないように管を通さないといけないらしい。水が溜まりすぎている部分は、神経繊維が比較的ばらけているので、そこを狙って管を入れるのだという。
説明を聞いていて、「わら納豆みたいな…」と私がつぶやいたところ、先生がそういうこと!と言ってくれた。わら納豆でたとえれば、息子の場合、脊髄に水が溜まりすぎているエリアが、わら納豆のわらのように神経がばらけているので、わらとわらの間から管を入れる…ということらしい。
リアル・ドクターX
こんな気の遠くなるような手術を、脳外科の先生はしないといけないのだ。人の体にメスを入れるということだけで大変なのに、集中力は切らせないし、失敗できないというプレッシャーもあるだろうし…。ずっと思っていたが、これはリアル・ドクターXだ。
でも先生はそういうことは言わない(言えないのかもしれないけど)。そこにはきっと、仕事だからという理由以上に、この子たちをなんとかしたいという、安っぽい言い方をすれば、使命感があるのだと思う。そうでなければ、とても続けていけないと思う。
お医者さんの資質
説明の最後に、息子が遊んでいたおもちゃの話から、若いときの先生が、なんとか病院の子どもたちを喜ばせてあげたいと、クリスマスに自腹でアルミ風船を買って病院じゅうに飾り付けていたという話になった。アルミ風船ってすごく高いんだけど、子どもがうれしくなるからと。さすがに病院も申し訳ないとなり、次の年からはきちんと予算が付くようになったらしい。こういう予算がもっと必要だよね!と先生はおっしゃっていた。この話、看護師さんも一緒に「へぇ〜」と聞いていた。
お医者さんというと、偉そうとか、儲けているとか、いろんなイメージがあると思うが、少なくとも、そうなりたいという欲望だけではとても務まらない仕事だ。まして小児医療は現在だけでなく将来にも大きくかかわってくる。こういう仕事を選び、続けてきている先生を尊敬するし、息子2歳のことを思い、メスを入れてくれることに感謝したいと思う。