もしも「孤独のグルメ」の五郎さんがストリップに行ったら
とにかく俺は日々の生活に飽き飽きしていた
輸入業の仕事も順調で、趣味の時間も十分にある
全てが順調
そう全てが順調というのは、刺激がないと言う事と
同じである
今日俺は、川崎に新しい倉庫を借りることになったので現地に行ってみたら、その倉庫がとんだボロ倉庫で無駄足であった
おまけにどうやら俺はまた路に迷ったらしい
飽き飽きした気持ちを心にぶら下げながら、たぶん川崎駅がこの先にあるであろう路をあるいてたら
「おっ?」
ここはロック座?
川崎ロック座?
ストリップ劇場!?
ストリップ劇場がこんな所に?
ストリップなんてモノは雑誌や何かの話の折に聞いたくらいで、実際見たことなんてない
まぁストリップなんて興味ないし、早く帰ろう
…
……
…いや
とにかく俺は日々の生活に飽き飽きしている
「う〜ん…」
どうするか、このまま帰るか
この飽き飽きした日々に新しい刺激を
どうするか…どうするか…どうするかっ
ええい!虎穴に入らずんば虎子を得ず
ストリップにいらずんば刺激を得ずだ!
入ろうっ
「大人1人で」
俺は出来るだけ物おじせずハッキリという、
聞き返されるのはやっかいだ
「は〜い、男性1人5000円ですぅ」
ふーん、5000円か
コレが高いのか安いのか
見終えた後の感想で決まるな
入場券を買う窓口も宝くじ売り場みたいな造りだな
あと入口の横で立ってるオッチャンは何の為にいるんだ?
まぁいい、ササッと入場して中を見よう
「はい、5000円ちょうど頂きます ではこちら
入場券です」
コレがストリップの入場券か
映画のチケット見たいだな
「はい、じゃあオニィちゃん、入場券こっちに
ちょうだい。」
「ん?」
さっき入口横にいたオッチャンか
「オニィちゃん、ストリップ初めて?」
「あぁ、はい」
「じゃあルール説明するね 会場に入ったらスマホの取り出しは禁止 盗撮すると罰金50万円ね
あと、一回外出るときは再入場券いるから俺に声かけてね」
ふーん なるほど
ルールは確りあるが、アナログな部分も所々にある
いい加減 だけどこのいい加減が心地よい
建物の外観も昭和っぽさがある
いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので
ストリップを観るの初めてだが、俺のイメージする
ストリップ劇場って古臭くて昭和の香りがムンムンする建物
うん、俺のイメージ通り
今のところ全てイメージ通り
なんだかワクワクしてきた
早く会場内に入りたい
早くこの目でストリッパーの女性達を観たい
観たい、観たい、観たい!
よし、いくぞっ!
「ん?…うあぁ…」
会場の入口扉の前で盛り上がってる男達がいるな
みんな満面の笑みでストリップの良さを話しているが、話が盛り上がり過ぎて扉を塞いでいる事を分かっていない
これだけ盛り上がっていると中々あの間を割って扉を開けづらないな
けど、声をかけないと扉まで行けなさそうだぞ
うーん、どうする、どうする
どうする、早く入りたい 入りたい! 入りたいっ! 早く入りたいっ! 入りたい早く!!
アァッ!焦れったい!
タックルしてやろうか
昔ニュースにもなったあの日大生のように油断してる後ろから腰辺りにドンッッッ!!!とタックルしてやろうかっ!!
あぁ…
ダメだ、ダメだ
焦るじゃない俺はストリップを観たいだけなんだ
慌てるな心と股間がつんのめってるぞ 俺!
ここは冷静に穏便に
「あっすみません。ちょっと前失礼します」
「うん?ああっ すみません すみません通せん坊してましたね。どうぞどうぞ」
「ありがとうございます」
なんだ、ストリップ来てる人達ってオッチャンばかりで最初ちょっと怖かったけど、話せばなんてこともない普通で良いオッチャンだな
よし、気を取り直して
会場入るぞ
ガチャッ
「ぉおっ」
中は意外と広いぞ
ちゃんと席もある
座ってみんなお行儀よくショーを鑑賞している
ガヤをいれる素振りなんて全くない
なんなら皆ステージ上にいる女の子の踊りに合わせて手拍子している
そして
きらびやかに輝くステージ
スポットライトの下で妖艶に動く裸体
…女体だ
ゴクッ
無意識に生唾を飲んでしまった
なんて美しいんだ
一瞬で心を奪われてしまった
エロさと言うより官能
吸い込まれてしまいそうな白い肌
柔らかで靭やかな手足
ボディービルダーのような角々とした筋肉ではなく
最小限の皮下脂肪とインナーマッスルが織りなす
彫刻の様なスラッとしたお腹
眩しい… 裸体が… 女性の裸体がこんなにも眩しいなんて…
これは…芸術の域に達している
…観たい
観たい
観たい、観たいっ、観たいっ!
もっと彼女を近くで観たいっ!
よし、ステージ近くの席が空いている
行こう
「あっ、前すみません。あぁ、ありがとうございます」
よし、ステージの真正面とは言わないが、さっきの立ち見より、よりクッキリと彼女の身体の全てが観えるぞ
「ふわぁ、、、」
なんて、なんて素敵なんだ
そして何より彼女踊りが上手い
この踊り普通の踊りじゃない
ただただ音にノッて身体を動かす一般的な踊りより
女性の身体を極限まで官能的に観せる踊り方をしている
イヤらしい
なんてイヤらしく挑発的な踊りなんだ
女体の神秘さも保ちながら、「性」の部分は常に何処かに潜んでいる
あぁ、興奮する
心拍数が上がっていくのが目に見えるように分かる
心臓から勢いよく飛び出した血液は、一瞬も見逃すまいと裸体を観る眼、興奮でグッと握り込んだ拳、男の象徴“股間”にドクドクと巡っていく
「ぅわっ!」
観れば観るほど血液が身体中を循環する
そして身体中が熱い 内側から熱い
そして股間が 俺の股間が熱い
まるで俺の体は製鉄所 股間はその溶鉱炉のようだ
あぁっ、綺麗にピンッと勃ち、小ぶりな胸の先端部にある桃色の乳頭
綺麗なカーブを描き豊満で原始的なエロスが潜む
お尻
そしてどれだけ控えめにしていようと圧倒的な存在感のある女性器
ピンッと勃った乳頭に豊満なお尻、存在感のある
女性器 この三本柱があればなんでもストリップ!
なんて奥が深いんだ ストリップ
そしてこの後も5人出てくるのか
計6人の色々な女性たちを観れて5000円は安い
安すぎる!
素晴らしい…
素晴らしい過ぎる!!
ストリップは
ストリップはっ!
エンターテインメントの1つの完成形だ!!!
そして全てを見終えた俺は、川崎ロック座を出た
興奮冷めやらぬまま、ただただ歩いていると
いつの間にか川崎駅が見える通りに出た
よし、この興奮を心の内にに秘め早く家に帰ろう
夕日を浴びながら駅に向かっていると
最初胸にあった、日々の生活に対して飽き飽きしていた重たい気持ちは無くなり
俺は得体の知れない奇妙な満足感を味わっていた
おれ、ラジオやってる。
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