見出し画像

レジリエンスの心理学—社会をよりよく生きるために—

今回は,『レジリエンスの心理学—社会をよりよく生きるために—』(小塩真司・平野真理・上野雄己編著,金子書房,2021発売)を紹介したいと思います。

レジリエンス

レジリエンスは,逆境に直面して一時的に精神的に不調な状態に陥ったとしても,そこから立ち直ることを表す言葉です。

ただし,この言葉はいくつかのことを指し示しています。たとえば,立ち直りそのものを指す言葉として使われることがあります。また,立ち直るプロセス,道筋のことを指す場合もあります。また,立ち直ることに関連する,人間の中に仮定される心理的な要因を指し示すこともあります。さらにいえば,立ち直るというよりもストレスをはねのけるような現象を指す場合もあります。

このように,レジリエンスという言葉は研究者によって違った意味で使われることがあります。まずは,どれのことを指し示しているのかを,慎重に見きわめることが大切かもしれません。

初学者にも

この本は,レジリエンスという概念について,概念の内容や測定方法など基本的な部分を押さえたうえで,臨床場面や教育場面,日常生活の中でどのように表れてくるのかについて,複数の著者が論じていく内容になっています。

1つ1つの章は短いもので,研究の内容が次々と紹介されるというよりはわかりやすく概説していくような内容となっています。ですので,レジリエンスという言葉は耳にしたことはあるけれども内容はよく分からない,という人にも手に取ってもらえればと思います。

研究についても

また,特に後半では比較的新しい研究成果についても紹介する内容となっています。心理学や周辺分野で,最近どんな研究が取り組まれているのか,研究の動向についても知っていただければ嬉しいですね。

表紙について

表紙には,木の枝にとまる2羽の小鳥が描かれています。なかなかかわいい雰囲気の表紙になっていますよね。

このイラストは,第1章に登場するものです。木に強風が吹きつけたとき,それにどのように対処するかということが,レジリエンスのたとえではよく使われます。表紙の絵は,木に強風がふきつけてきたときにたとえ木が折れてしまっても,それまでとはまったく違う機能をもつようになった(おかげで小鳥たちは強風の中でも穏やかに過ごすことができる)様子を表しています。

ぜひ

最後に,本書の目次を示しておきましょう。

書店で2羽の小鳥がきにとまっている表紙を見かけたら,手に取ってもらえれば嬉しく思います。ぜひどうぞ。

第Ⅰ部 レジリエンスの概念と測定
 第1章 レジリエンスとは
 第2章 危険因子と保護因子
 第3章 レジリエンスの測定
 第4章 レジリエンスに関連する心理特性
第Ⅱ部 レジリエンスと臨床・教育
 第5章 臨床場面でのレジリエンス
 第6章 教育場面でのレジリエンス
 第7章 レジリエンス介入の試み
 第8章 養育とレジリエンス
第Ⅲ部 レジリエンスと日常生活
 第9章 レジリエンスと人間関係
 第10章 レジリエンスとライフキャリア
 第11章 レジリエンスと身体活動・スポーツ
 第12章 レジリエンスと生涯発達
 第13章 レジリエンスと社会


ここから先は

0字
【最初の月は無料です】心理学を中心とする有料noteを全て読むことができます。過去の有料記事も順次読めるようにしていく予定です。

日々是好日・心理学ノート

¥450 / 月 初月無料

【最初の月は無料です】毎日更新予定の有料記事を全て読むことができます。このマガジン購入者を対象に順次,過去の有料記事を読むことができるよう…

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?