制限速度を守るドライバーの特徴
以前も書いたことがあるのですが,日本の道路で制限速度をきっちりと守って走っている車はほとんど見あたりません。制限速度を守っていると,むしろ自然な自動車の流れを妨げてしまうので,迷惑になってしまいます。日本は「タイトな文化」とされるはずなのですが,制限速度だけを見るとタイトというよりも「周りに合わせる文化」に見えてきます。
速度超過
自動車の速度超過は,世界的に見ても交通事故の大きな要因だと考えられています。アメリカのカリフォルニア州とメリーランド州で起きた若年ドライバーの自己に関する分析では,スピードの出し過ぎが自己の約20%を引き起こしていると推定されています。
スピードの出し過ぎは,交通事故における死亡リスクも増加させます。速度を上げると道路上の急な変化に対応する時間が短くなり,運転者の操作性が低下し,停止するまでの距離が長くなります。また事故の障害の程度と速度との間には,曲線的な関係があるようです。研究によると,事故が起きた時の衝撃の速度が速いほど,怪我の重さや死亡確率が上昇します。
性別
これまでの研究によると,性別は危険な運転に関係する要素のひとつです。走行距離を考慮に入れた場合でも,性差に基づく事故の発生確率や事故による重症度は存在しており,それは主に速度超過と交通規則違反に現れています。
全体的に,男性は女性よりもスピード関連の事故に巻き込まれる可能性が約1.4倍高いそうです。女性に比べて男性の運転者は自分の運転技術を過信する傾向が高く,スピード違反や飲酒運転をする可能性も高いとされます。また,不適切な速度管理による違反も男性の方が多く,速度超過の違反切符を切られる確率も男性の方が高いとのことです。
加えて,状況と性別の相互作用効果も見られるようです。田舎のような開けた道路では,女性よりも男性は危険な運転行動やスピード違反をする可能性が高くなるのですが,都市部では男女差はあまり見られないという結果が見られるようです。
衝動性
危険な運転をしやすい個人内の特性のひとつに,衝動性があります。パーソナリティ的な個人差としての衝動性は,結果について熟慮したり評価することなしに行動する傾向だと定義されています。衝突事故やスピード違反に関連する心理特性としては,衝動性が最も重要な要因だと指摘されることがよくあります。
衝動性をうまく制御すると,危険な運転を避ける可能性が高まります。計画や注意のコントロール,行動の制御などに影響する認知機能に,実行機能(Executive Functions)があります。実行機能がうまく働くことは,衝動性の抑制につながると考えられます。
実験
ドライビングシミュレータを用いた実験で,衝動性や衝動性のコントロールがどのように影響するのか,また性差が見られるのかを検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Sex difference in driving speed management: The mediation effect of impulse control)。
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