パーソナリティ尺度BFI-2の国際比較
パーソナリティ心理学の世界では,ビッグ・ファイブ・パーソナリティはもはや当然の枠組みとして用いられています。ビッグ・ファイブ・パーソナリティは,外向性,協調性(調和性),勤勉性(誠実性),神経症傾向(否定的情動性),開放性(経験への開放性)といった5つの次元で人間のパーソナリティ全体を記述する枠組みです。
ファセット
ビッグ・ファイブ・パーソナリティのそれぞれの次元は「ドメイン」と呼ばれます。一方で,それぞれのドメンの下には「ファセット」という,より細かい枠組みがあります。
BFI-2という尺度の場合,次のようなドメインが設定されています。
◎外向性:社交性,自己主張性,活力
◎協調性;思いやり,敬意,信用
◎勤勉性:秩序,生産性,責任感
◎否定的情動性:不安,抑うつ,情緒不安定性
◎開放性:知的好奇心,美的感性,創造的想像力
ファセットを測定することができるビッグ・ファイブ・パーソナリティの尺度は多くありません。NEO-PI-Rと呼ばれる尺度は有料ですし,海外で作成されていて日本語に翻訳されていない,ファセットが測定可能な尺度もいくつかあります。
その中で,Big Five Inventory-2(BFI-2)は,60項目でビッグ・ファイブ・パーソナリティの下に3つずつのファセットをもち,かつ日本語版も開発されている尺度です。
各国版
BFI-2はいくつかの国で翻訳されており,日本語版もそのひとつです。正直言って,尺度の翻訳は簡単なものではありません。単に翻訳すればいいというわけではなく,可能性のある翻訳語の中で何を選択するともとの構造や妥当性を維持できるかという点が,もっとも重要なポイントになります。
しかし実際に,測定がうまくいっているかどうかは,複数の言語版で比較していくしかありません。
そこで,日本を含む5つの国でBFI-2を実施して比較した研究を見ていきたいと思います。こちらの論文です(Adapting the BFI-2 Around the World – Coordinated Translation and Validation in Five Languages and Cultural Contexts)。
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