子どもを三人も育てて国に貢献していますね!
これはよく言われることなのですが......
「何人子どもがいるのですか?」
「三人です」
「日本のために素晴らしいことですね」
いや,日本のために子どもを作ろうなんて考えたことはないのですけれども......。それに,「日本のため」というならもっとサポートしてもらいたいものだとも思います。金銭的にも時間的にも余裕はなかなかありません。
人口の減少
今や日本は,毎年数十万人人口が減少する時代に入っています。平成29年では,一年間の出生数が94万人なのに対して,死亡数は134万人でした。その差は40万人です。
人口40万人というのは,だいたい岐阜市や枚方市と同じです。アメリカの都市だとマイアミやクリーブランドと同じくらい。国で言えばマルタやブルネイくらいです。
大きな都市や小さな国が毎年ひとつ消滅するくらいのインパクトがある人口の減少になっています。
出生数を抑制しようとしていた
でも今から45年ほど前,ちょうど私が生まれた頃の新聞記事には,盛んに「人口が増えすぎるから抑制しなければいけない」と書かれていたのです。このままでは地球は人間で溢れかえってしまう。それに日本も食糧不足に陥ってしまう。だから,夫婦の子どもの数は二人以下に抑えましょう,と書かれていたものです。
「こうしなければならない」と盛んに言って政策をそういう方向に向かわせたのかどうかはよくわかりませんが,大きな国のやることですから方向づけるのに数十年かかるのもわかります。
そして私たち第二次ベビーブーマーたちは,見事にその教えを守ったのですね,きっと。そして第三次ベビーブームは起きませんでした。
そう考えると,40年以上前に「こうしなければ」とされていた目標が,見事に達成されつつあるとも言えそうです。もちろん,半分は皮肉です。
何年もかかる
今から「子どもをたくさん産みましょう!」と言っても,40年以上かけて人口が減少してきたことからもわかるように,効果が出てくるまで何十年もかかる可能性があります。大きな国はそう簡単に急な方向転換ができるわけではないからです。
私が子どもの頃はずっと「人口爆発が問題だ」と言われてきていて,大人になったら「子どもが少ない」と言われても,「それはないよね」と感じてしまいます。「じゃあ作ろう」と夫婦で決めたとしても,現実に子どもを授かるかどうかは,自分たちですらどうしようもないことなのですから。
視点の大きさ
私たち個人が「国の行く末」を憂いてしまう理由も興味深いと思います。なぜなら,どういう問題について話をするかによって,問題の大きさが随分変わってしまう,シフトしてしまうように感じるからです。
そして,国という大きな枠組みを前提にしてしまうと,そこから逸脱する人のことがどうしても許せないと考えてしまいがちであるようにも思います。「あなたは国なのですか?」とか「あなたは政治家なのですか?」とか,どの立場に立って話をしているのか,ということが,時々気になるのです。
子どもがいてもいなくても,結婚という選択をしてもしなくても,個々人がよりよい状態で,より幸福であるように生きることができることが大切だと思います。それは,社会のことや国のことを考えていないのではなく,社会や国はそれ自体が目的ではなくて手段だと思うのですがどうでしょうか。
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