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ダークな性格の中心要素

割引あり

倫理に反する行動をしてしまうこと,道徳的に許されないことに手を染めること,社会的に問題のありそうなことをしてしまうこと,これらは特別な人が行うことではなく,日常的な生活の中でも見られることです。「自分は絶対に反社会的なことをしていない」と思いつつ,どこかで足を踏み外したり,ちょっと冷酷な気持ちが出たり,利己的なことを考えたりすることもあるものです。


反社会的特性

パーソナリティ心理学の中では,倫理的,道徳的,社会的に問題のある行動と結びついた安定した性格特性の研究が長い間行われてきました。たとえば1950年代には,アドルノによる右翼的権威主義の研究が行われ,1970年代にはアイゼンクによる精神病傾向の研究も行われています。

20世紀後半になると,マキャベリアニズム,サイコパシー,ナルシシズムなど,個別のパーソナリティ特性の研究も少しずつ行われるようになっていきます。

そして21世紀に入ると,倫理的,道徳的,社会的に問題のある行動に関連するパーソナリティ特性が,マキャベリアニズム,サイコパシー,ナルシシズムのまとまりであるダーク・トライアドや,サディズムを含めたダーク・テトラドというまとまりで研究されるようになります。


相互関連

ダークなパーソナリティたちは,互いに関連します。互いに関連するということは,「重なり」があるということです。

そのもっとも「重なる」部分に,「中心」があるかもしれません。太陽系の中心の太陽のようなもの,銀河の中心に位置するようなもの,でしょうか。大きなブラックホールのようなものかもしれませんが。

さまざまなダークな特性の根底にある,一般的な傾向としての構成要素を,パーソナリティの暗黒因子(D)と名づけている研究者がいます。

D

パーソナリティの暗黒因子は「ダーク・ファクター」つまり「D」ということです。Dの特徴は,自己の効用を最大化しようとする一般的な傾向だとされています。他者の不利益を無視したり受け入れたり誘発することもあるのですが,どのようなことをしても,自分自身の利益を最大化しようとする傾向です。

Dレベルが高い個人は,より高い地位や高い金銭的報酬といった目に見える利益だけでなく,権力や優越感,喜びや楽しさといった目に見えない利益の形をとることもありますが,これらを最大化しようとします。

またDは,他者に有害な結果をもたらす可能性を高めます。この中には,本来は他者に利益がもたらされるはず行動を積極的にとらない,という形での不利益も含まれます。さらに,Dが高い人は,自分の利益を最大化しようとするあまり,他の人の不利益を無視したり,受け入れたり,不利益を引き起こそうとしたりすることもあります。ここでは,他者起きずつけること,誰かを騙すこと,他者を搾取すること,詐欺など,援助を回避すること,他者の幸福を前提として自分が幸福になろうとしないことなども含まれます。

これらのように,Dの特徴のひとつは,自分の利益を追求するために,他の人に悪影響を及ぼす可能性のある行動を追求し,特に個人的なコストが発生する可能性がある場合には,他者に一方的に利益をもたらす行動を避けることにあります。そしてDが高い人は,このような行動を正当化する信念をもつ傾向もあります。

Dの可視化

共通因子であるDを,どのように導いていくことができるのでしょうか。複数のダークなパーソナリティの指標から,ダークなコアとなる共通部分を抽出することはできるのでしょうか。

Dの構造や機能について広く研究した,こちらの論文を見ていきましょう(The Dark Core of Personality)。

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