指の長さはスポーツパフォーマンスに関連するのか
今回も,指の長さの研究を紹介しましょう。
右手でも左手でも構いませんので,手のひらを自分のほうに向けます。人差し指と薬指の長さを見てください。人差し指は2D,薬指のことは4Dといいます。人差し指の長さを薬指の長さで割った2D/4Dという値が,研究で用いられています。kろのことから,この指の長さの比率を2D/4D digit ratio(2D:4Dと書かれることもあります)。
男女
2D/4Dの値は,民族を問わず男性よりも女性の方が高い傾向があるとされています。この差は,妊娠初期の段階ですでに見られて,生涯にわたってかなりの安定性を示すようです。
この2D/4Dの研究というのは,現象としてシンプルなこと,指を測定するという,比較的簡単な測定で研究が可能なこと,生まれる前の母胎内の環境の影響を受けるという生物学的な背景,男性ホルモンと女性ホルモンの影響という身体面への影響の可能性などなど,さまざまな観点から多くの研究者たちの興味を惹く部分があります。論文も非常に多いのですよね。
運動能力との関連
しかし,そもそも2D/4Dと運動能力との間に,どれくらいの関連があるものなのでしょうか。加えて,2D/4Dは右手と左手で出方が違う,また他の変数との関連の仕方も異なるという研究があったりします。性差と左右差という問題に,指の長さと運動能力との関連から迫ることはできるのでしょうか。
民族を問わず,男性の平均身長は女性よりも平均して約7cm高く,男性の筋力は女性に比べて標準偏差でおおよそ1.4から2.6分上回っているとされます。短距離走の世界記録は女性よりも男性の方が100m走で約7%,200m走で約19%速いそうです。
このような男女差は,思春期以降に大きくなることも知られています。小学校の中学年くらいまでは男女の差は小さいのですが,第二次性徴がはじまると男性の筋肉量が増えて男女の平均的な差が大きくなっていくのです。
では,メタ分析によって2D/4Dと運動能力について検討すると,どのような結果が得られるのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(A meta-analysis on 2D:4D and athletic prowess: Substantial relationships but neither hand out-predicts the other)。
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