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変化を捉えることについて

本当は少しずつ変わっているはずなのに,「何も変わっていない」と思ってしまう,ということはよくあります。

たとえば子どもの成長です。

子どもとは毎日顔を合わせていますので,子どもが本当は日々少しずつ変化していても,親はその変化を実感できないこともあるのです。

1年ぶりに子どもと会う祖父母のほうが,「見違えるくらい大きくなったね!」と,子どもの変化に気づくことになります。


観察の精度

これって,けっこう皮肉なことのように思うのです。

毎日子どもを見ているという細かい観察をしているのに変化には気づきにくく,たまにしか見ないという粗い観察のほうが変化に気づく,という点がです。

この観察の精度のような問題は,研究を行う際にも生じると思います。たとえば,細かく測定していると差が些細なものになっていて検出できない一方で,しばらく時間をおいて観察すると大きな差になっているので検出できる,といったような問題です。

それはどれくらいの時間?

研究計画を立てるときも,「その変化は,どのくらいの時間間隔で生じると考えているのか?」ということが問題になることがあります。

仕事柄,「性格は変わりますか?」という疑問をもらうことがあるのですが,そういったときにはいつも「あなたはどれくらいの時間の間隔を想定してその疑問を言っているのですか?」という疑問を,逆に抱いてしまいます。

だって,すぐにコロコロと変化するわけはないし,何年も経ってまったく変わっていないという保証もないのですから。

ダイエットの時間

たとえば,ダイエットをしようと考えたとしましょう。

毎日少しずつ1年間かけて3kg減らそう,と考える人はあまりいなくて,できれば一気に2〜3kg減らしてしまいたい!と考える人が多そうなのです。

ダイエットをしようと考えたときにも,「どれくらいの時間を想定するか」という問題はけっこう重要で,それによって無理のないダイエットの計画ができるようになります。

でも,一気に変えたいと考える人は意外と多そうです。自分自身,健康診断の前などに一気に減ってくられたどんなに楽かと思いますからね……。

カテゴリカル思考

そしてここにも,ものごとをカテゴリカルに考える人間の癖が反映しているのではないかとも思うのです。

カテゴリカルに考えれば,「変わる」「変わらない」,「減る」「減らない」,「増える」「増えない」といったように,「あるかないか」でものごとを見ることになります。

そして,短い時間にその間をジャンプするように思えてしまうのではないでしょうか。

実際には,少しずつ少しずつ,積み上がるように(あるいは砂の山をほんの少しずつ削るように)変化していくものであるのに,ジャンプする思考がそれを妨げてしまっているのかもしれません。

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