引用するのは全体なのか一部なのか
世の中の情報は,どんどん多様化しています。旧来の媒体である論文,書籍,雑誌記事,新聞など紙媒体以外の媒体で提供される情報が,年々増加しています。
論文やレポートの著者となる際に,政府のプレスリリース,Podcastのエピソード,YouTube動画,Facebookページ,Twitterのツイート,ニュース記事のコメント欄など,従来ではあまり論文やレポートに引用することが望ましくないとされていた媒体であっても,利用する必要に迫られるかもしれません。
全体か一部か
引用した文献のリストを作る際にまず注意することは,引用しようとしている文献が「全体の一部」なのか「全体でひとつ」のものなのかです。
ただしオンラインの情報になればなるほど,全体の一部なのか全体でひとつなのかの判断は難しくなっていきます。しかし,基本は同じです。
今回は,この基本を確認しましょう。
論文は全体の一部
論文であれば,通常は単体で存在するのではなく,雑誌の「一部」として存在しています。ですから,どの雑誌の何巻何号の何ページに掲載されているかを書く必要があります(ただし最近の海外の雑誌では,オンラインだけで存在していてページ番号がない論文もあります)。
最近はオンラインばかりで論文を読んで,紙に印刷された論文雑誌を手にしたことがないという学生も増えているように思います。オンラインだと,ますます論文が「一部」ではなく「単体」で存在しているかのように見えてしまうかもしれません。要注意です。
本の場合
本の場合はもう少し面倒なことになります。一人あるいは複数の著者で1冊全体が書かれているのか,複数の著者が各章を担当して1冊になっているのかを考えます。
たとえば私がひとりで1冊を書いた本であれば,
小塩真司 (2020). 性格とは何か 中央公論新社
というかたちで文献を引用します。
複数著者で1冊の本を書いていて,誰がどの部分を分担したのかが明確ではない場合があります。たとえばこれも私の本で2人で書いているのですが,どの章をどちらが書いたのかが本の中に明示されていません。
杉山憲司・小塩真司 (2021). パーソナリティ・知能 キーワード心理学11 新曜社
たいていは編集をする人がいることが多いのですが,複数の著者がいて,それぞれが部分を担当しすることで全体として1冊になっている本があります。その場合は,引用したい部分(章,節,コラムなど)を引用文献に書くといいですね。こんな感じです。
小塩真司 (2021). パーソナリティ特性はいくつあるのだろうか—理論と予測— 繁桝算男(編) 心理学理論バトル:心の疑問に挑戦する理論の楽しみ 新曜社 pp. 33-47.
オンライン情報も同じ
オンラインのさまざまな情報も,基本は同じです。もちろんそこから細かい記載の違いにつながっていくのですが……まずは引用しようとしている文献が「全体の一部」なのか「全体でひとつ」のものなのかに注意を向けてみましょう。
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