全体特性理論とは
今回は,アメリカのWake Forest Universityの心理学者William Fleesonが提唱する,Whole Trait Theory(全体特性理論)という考え方について紹介したいと思います。
理論がない
パーソナリティ(性格)の記述として,世界中でもっともよく知られていると考えられるビッグ・ファイブ・パーソナリティですが,これまでには批判もされてきました。
その大きな批判の一つは,「理論がない」「説明が不十分」というものです。特性論は,何を記述したのか,どのように導き出されたかについては示しているのですが,なぜそうなるのか,どのようにそうなるのかという理論が不足しているという批判のポイントです。
多くの研究がパーソナリティ特性と実際の行動との間の関連を示していますが,パーソナリティ特性がどのように日常の行動につながっていくのかという点については,明確な説明はありません。関連はあっても,その関連を説明する理論が不足しているのです。
全体特性理論
全体特性理論は,パーソナリティの特性論的なアプローチと,社会認知論的なアプローチとの橋渡しをするように考え出されたものです。
この理論には,5つのポイントがあります。
1.特性の記述的側面は状態の密度分布と考えるのが適切である
2.ビッグ・ファイブ・パーソナリティの説明をすることが重要である
3.ビッグ・ファイブ・パーソナリティに説明を加えることで,パーソナリティ特性には説明的な部分と記述的な部分という2つが生じる。この2つの部分は異なる実体でありながら,一方が他方に影響を及ぼした結果であるため,特性全体に統合することがでる
4.特徴のうち,説明的な部分は社会的認知メカニズムで構成される
5.ビッグ・ファイブ・パーソナリティの状態を生み出す社会的認知メカニズムを明らかにすることが重要である
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