サディズムとハラスメントの関連
21世紀に入ってよく研究されてきた枠組みのひとつが,マキャベリアニズム,サイコパシー,ナルシシズムという3つのパーソナリティ特性のまとまりであるダーク・トライアドです。そして,ここに加わってダーク・テトラッドという4つ組みにしたのがサディズムです。
日常的サディズム
サディズムと言っても,異常なレベルのものではなく,日常的によく見られるものを研究対象としています。日常的サディズムは,快楽に支配されており,他者に肉体的。精神的苦痛を与えたり,屈辱を与えたり,罰したり,支配したりする攻撃性を伴うものです。
日常的サディズムはときに犯罪行動や性的な問題として研究されていますが,いじめやオンラインいじめなどにもよく関連すると報告されます。
ハラスメント
論文の中でセクシュアル・ハラスメントは,敵対的,威嚇的,屈辱的,攻撃的,または品位を落とす効果や目的を持つ,歓迎されないまたは望まれない行為だと定義されるようです。
セクシャル・ハラスメントの背景にあるのは,権力関係と性差別的な意識です。職場でセクシャル・ハラスメントの加害者となった人の22%が女性であったのに対し,男性が加害者となっているケースは63%だという調査があるそうです。セクシャル・ハラスメントの被害者は女性でも男性でもなりえます。
レイプ神話
イギリスでは,女性の約20%,男性の約4%が,16歳以降に性的暴行を受けた経験があると推定されています。2021年にはイギリスの警察は性的暴行事件が過去最高の件数だったと発表したとか。しかしこの数値は,過小報告されている可能性もあります。
レイプ神話とは,性的暴行を矮小化し,一般化し,あるいは否定する傾向のある誤ったステレオタイプ的な信念です。レイプ神話は,「被害者にも落ち度があったんだ」という言い方で,加害者から被害者へと責任を転嫁するために用いられます。
研究
日常的サディズムは,レイプ神話の受容や,性的暴行の数にも関連することが報告されています。日常的サディズムとセクシャル・ハラスメントの認知,レイプ神話の需要の関連を研究することで,ハラスメントの背景要因を探ることが,今回紹介する論文の目的です。
では,こちらの論文を見てみましょう(Everyday Sadism as a Predictor of Rape Myth Acceptance and Perception of Harassment)。
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