
国によって性格って違いますよね?
「似ている」とか「違う」という言葉を,ふだん使う分には大きな問題が生じることはないと思うのですが,レポートや論文など明確な表現が求められるときには注意が必要です。
どうして注意が必要かというと,「似ている」とか「違う」の基準が曖昧だからです。何をもって「似ている」のか,何をもって「違う」のか,人によって感覚が全く違ってきてしまうことに問題があります。
似ている
「お母さん似ですよね」「女の子はお父さんに似るものですよね」なんていう言葉は,子どもが生まれるととてもよく聞く言葉です。
でも,何をもって「似ている」と判断するかは,はっきりとしていません。
そしてそこでは「何々よりも」という,比較を表す表現が不可欠だと思うのです。
「おたくの娘さんは,お母さんよりもお父さんの顔の方によく似ていますよね」
これなら,意図はとてもよく伝わるようになります。
比較が大事
「何々よりも」という比較をする言葉が大切です。
「この兄弟は,あの兄弟のペアよりもよく似ている」
「埼玉と千葉の人は,大阪の人と京都の人よりもよく似ている
「日本人と韓国人は,日本人とロシア人よりもよく似ている」
「人間とチンパンジーは,人間とほかのサルよりもよく似ている」
「人間とバナナの遺伝子は,人間とバクテリアの遺伝子よりもよく似ている」
などなど。「何々はよく似ているよね」という表現だけでは異論が出てきそうなところを、「何々と何々は,別の何々と何々よりもよく似ているよね」と表現することで,意図は明確になります。
もちろん,普段の会話の中でこういうことを気にするのは面倒だ,という意見はとてもよくわかるのですけどね。
国で性格は違うのか
この疑問も,とてもよくあることです。「国民性のようなものはあるのでしょうか」という疑問です。
言い換えると,「国によって人々の性格は違うのでしょうか」という表現になるのではないでしょうか。
この問題も「似ている」「似ていない」という問題を扱うことになりますよね。ということでこの論文(Personality traits across countries: Support for similarities rather than differences)を見てみましょう。
この論文では,英語を使う世界の22カ国で調査を行ったデータを分析しています。調査への参加者は実に13万人という規模です。ここまで大きな調査をすれば,「国によって違うのでは」という疑問への答えが得られそうです。
調査に使われたのは,質問項目が120項目含まれていIPIP-NEOと呼ばれる検査です。日本語版もありませんし,ほとんどなじみがない性格検査ですが,海外の研究ではよく使われるものです。この検査は,ビッグ・ファイブの性格特性を測定します。
3つの類似性
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