退屈さのふたつの側面
最近,海外では「退屈さ」の研究がよくおこなわれています。これもまた,良い面悪い面の両面がある,なかなか面白い概念です。
退屈
退屈というのは,注意の集中にかけることを特徴とする,主観的な状態です。ある状況下で退屈になりやすいかどうかには個人差があり,「退屈傾向」という一種のパーソナリティ特性,心理特性のような扱いを受けています。
研究が始まった当初は,退屈さは一次元の「高い」「低い」の程度で測定できると考えられていました。しかし現在では,複数の次元から多面的に把握することが一般的になっています。
尺度研究
退屈傾向を測定する尺度である,BPS(Boredom Proneness Scale;退屈傾向尺度)というものが開発されています。もともとこの尺度は,退屈さの傾向を単一の両極からなる次元で測定することを想定していました。
しかし研究が進むうちに,BPSには複数の因子が見出されるようになっていきます。これもまた,研究の流れとしてはよくあるパターンです。
ある研究では,「新規性」と「刺激」という因子が見出されています。また別の研究では,「外部刺激」「内部刺激」「制約」「情動反応」「時間の知覚」という5つの因子が見出されています。また,4因子を見出している研究もあるようで,「話題の必要性」「自己規制の欠如」「創造性の欠如」「自己制御の欠如」という内容になっています。2つから5つまでの因子が,退屈さとして見出されいます。
退屈さが高いと
普段の生活の中で退屈だと感じやすいと,何が起きるのでしょうか。
たとえば,精神的・身体的な健康状態に悪影響を及ぼすという報告があります。また,否定的な情動のレベルが高いことや,欠勤率の高さ,離職率の高さ,仕事への満足度が低い傾向,課題を最後まで遂行しない傾向や,勉強を避けることなども報告されているようです。
性格
退屈さとパーソナリティ特性との関連を見ると,神経症傾向とプラスの関連,外向性とはマイナスの関連つまり内向性方向に関連することがありそうです。また,怒りの抱きやすさも退屈さの傾向に関連するようです。
退屈さを複数の次元で測定して,パーソナリティ特性との関連をしっかり研究した研究はあまりないようです。実際にどのような関連が見出されるのでしょうか。では,こちらの論文を見てみましょう(The relations of two facets of boredom proneness with the major dimensions of personality)。
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