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オイルでうがいをすることに効果はあるのか

オイルプリングという言葉を聞いたことはあるのでしょうか。インドのアーユルベーダ発祥の健康法と言われていて,ココナッツオイルやごま油で口をすすぐというものです。

オイルプリングというのは,oil pullingですよね。pullですから,「引っこ抜く」「取る」「むしる」といった意味です。オイルではがす,ということでしょうか。

やりかたですが,まずオイルを小さじ2杯ほど口に含みます。そして,口のなかで動かしながら15分とか20分間続きます。最後はオイルを捨てて終わりです。

ということなのですが,15分から20分というのは,なかなか長いですよ……!

レビュー論文

さて,このオイルプリングですが,研究をレビューした研究があります。この論文です(Oil pulling for maintaining oral hygiene – A review)。

かいつまんで見ていきましょう。ざっと抜き出して要約しています。論文の内容そのままではありませんのであしからず。

◎オイルプリングはアーユルヴェーダの教科書「Charak Samhita」「Sushruta Samhita」の中で,「Kavala Graha」や「Kavala Gandoosha」と記載されている。
◎オイルプリングというのは,朝食前の早朝,空腹時に大さじ1杯のオイルを口に含み,約20分間おこなう。オイルを口のなかで回しながらすべての歯の間にオイルを引き込むように流す。その後,オイルを吐き出して食塩水や水道水で口をすすぐ。オイルを飲み込まないように注意する。
◎オイルプリングは口内炎,発熱,嘔吐,喘息,歯磨きの代わりになると言われている。
◎オイルプリングに使われるココナッツオイル,オリーブオイル,アーモンドオイル,ごま油,ヤシ油,それぞれに効能があると考えられている。
◎オイルプリングは口腔内の健康だけでなく,全身の健康維持にも効果があると考えられている。
◎ごま油を使ったオイルプリングを40日間おこなったところ,細菌数が約20%少なくなったという研究がある。
◎歯肉炎を持つ16〜18歳の60人を対象に行った研究では,ココナッツオイルのオイルプリングにより,歯垢と歯肉の指標が統計的に有意に減少することが確認された。
◎オイルプリングとマウスウォッシュを比較した研究によると,オイルプリングによって細菌数は減少したが,マウスウォッシュの方が減少率が大きかった。
◎ごま油を使ったオイルプリングは,マウスウォッシュと同等の口臭減少効果があるという研究がある。
◎オイルプリングは関節炎,アレルギー,喘息,片頭痛,神経麻痺,腎臓や心臓の病気などを治すと言われているが,科学的には証明されていない。オイルプリングをおこなった後のオイルには有毒な微生物が多く含まれており,飲み込まないように注意する必要があるが,誤って少量のオイルを飲み込んでしまっても心配する必要はない。

いや,それにしてもたくさんの研究がこれまでにおこなわれていることがわかります。

論文の結論としては,正しく定期的にオイルプリングをおこなうことで,口腔内の衛生状態が改善されることが期待されると述べられています。ただし,オイルプリングは歯科治療に代わるものではなく,米国歯科医師会も推奨していない点は注意喚起をしています。とはいえ,比較的好意的なレビューでした。

バッド・サイエンス

一方で,オイルプリングを「バッド・サイエンス」だと切って捨てる記事もあります。こちらの論文を見てみましょう(Bad science: Oil pulling)。BDJ Teamというのは,以前はBritish Dental Associationが発行していて,現在はネイチャーが発行している査読付のオンライン雑誌のようです。この記事は,Q&Aに答えるコラムのような体裁になっています。

この記事からも,いくつかポイントを拾ってみましょう。

◎オイルプリングが歯科衛生に有効だという証拠はありますか?
→ オイルプリングを賞賛する声はネット上にたくさんありますが,科学的な証拠はありません。最近のレビューでは,オイルプリングはクロルヘキシジン洗口液(リステリンのことですね)と同じくらい歯垢を減らす効果があるとされています。しかし研究者は「現在のところ,オイルプリングの利点と潜在的な有害性に関する十分な情報がないため,歯磨きに加えて毎日オイルプリングを行うべきかを判断できない」と述べています。また,研究デザインの不十分さも指摘されています。
◎オイルプリングは疑似科学でしょうか?
→オイルプリングの提唱者は,オイルプリングがアレルギーや喘息,慢性疲労,糖尿病,偏頭痛に効果があると謳っています。また,ニキビ,歯茎やあごの強化,歯茎の出血の改善に役立つという人もいます。このような主張の幅広さについては,疑問を抱かせます。多くの場合,科学的な証拠がないにもかかわらず,健康効果があると主張していますので,その点では疑似科学的だと言えます。

というわけで,有益な可能性はあるにしても,今のところは証拠不足だというのが結論のようです。くれぐれもご注意を……。

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