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ダークな性格とBIS/BASとの関連

割引あり

「気質」と「性格」と「人格」という言葉の違いについては,歴史的にも心理学のテキストレベルのなかでも,さまざまなことが言われてきています。「性格」と「人格」という言葉については違いは曖昧で,研究のなかでも明確に使い分けられているわけではなく,言い回しの問題という部分も大きいように思います。「性格」と「人格」について,カタカナで「パーソナリティ」と言ってしまった方が,混乱が少ないのではないかとも思います。


気質

その一方で,「気質」については,比較的明確に区別されています。心理学の研究のなかでは,おおきく2つの「気質」という言葉の使われ方があります。

◎乳幼児期の心理学的個人差……赤ちゃんの性格のことを気質といいます。
◎生物学的要因に影響される心理学的個人差……成人であっても,概念的に生物学的・遺伝学的に強く規定されることが仮定されるものを気質といいます。

赤ちゃんの個人差については明確なのですが,大人に適用される概念で「これは気質です」というものは,少し曖昧です。「性格」のレベルの概念も,「気質」のレベルの概念も,どっちにしても測定方法は質問紙のアンケート形式ですからね。

BIS/BAS

さまざまな気質に関する理論があるのですが,成人に対しても適用できる気質の枠組みの一つに,グレイによるBIS/BASがあります。BIS(Behavioral Inhibition System)は行動抑制系と呼ばれており,罰や脅威に反応して自分の行動を抑制する傾向を意味します。BAS(Behavioral Activation System)は行動賦活系と呼ばれ,罰があいことや報酬があることによって行動を引き起こすシステムを意味します。

なおこれらは,イギリスのパーソナリティ心理学者アイゼンクの外向性と神経症傾向の組み合わせモデルから派生するものです。BASは外向性と神経症傾向の両方が高い方向性,BISは内向的で神経症傾向が高い方向性に位置します。

さらに,BISは一つの次元で収束するのですが,BASは3つほどに分かれることも知られています。BAS駆動(Drive)は,欲求に従って行動を引き起こしていく傾向を意味します。BAS報酬反応性(Reward Responsiveness)は,報酬があるとわかるとテンションが上がるような傾向です。BAS刺激探究(Fun Seeking)は,興奮や刺激を求める傾向を意味します。

ダーク特性とBIS/BAS

さて,なんとなく,マキャベリアニズム(自分の目的のために人を利用する),サイコパシー(衝動的で倫理観が薄い),自己愛(誇大な自己と他者に特別扱いを求める)というダークなパーソナリティは,BIS/BASに関連しそうです。自分を抑制することはあまりせず,衝動的なイメージではないでしょうか。

実際の関連はどうなるのでしょう。メタ分析で検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(The Dark Triad and BIS/BAS: a Meta-Analysis)。

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