
本来感はこころの健康に関連する
Authenticityという概念があります。日本語にするのはなかなか難しいことばのですが,辞書だと「信憑性」「信頼性」「真偽」「内容の真正」「確実」「自然度」といったように,いろいろな訳語がつけられています。とはいえ……これらの並んだ訳語を見ても,何のことなのかが今ひとつわかりにくいような......。
たとえばこの論文ではauthenticityを,自分らしくある感覚ということで「本来感」と名づけています。なるほど……それだとなんとなくイメージできそうです。どの訳語を選ぶのかというのは本当に大切です。
本来感というのは,周囲に左右されず,自分自身の意思や気持ちに従って,素直に生きている状態のことを指すということだそうです。
本来感の意義
自分が自分であるという感覚は,人間関係における幸福感に関連するともいわれています。
職場のストレスを軽減して幸福度を高めるとか,仕事でより高いパフォーマンスを示したり満足することに関係するとか,離職率の低さに関連するとか,オンラインでも良い自己表現をすることにつながるとか……なかなかよさそうな結果をもたらしてくれそうな概念になっています。
また本来感は,よくない状況の中でそこから受けるダメージを軽減するような働きもするということが指摘されているようです。男女差別や移民であるといった差別的な状況の中では,本来感をもつことでストレスを軽減する可能性のあることが指摘されています。
本来感とウェルビーイング
本来感がよりよい心理的な特徴にどれくらい関連するのかをメタ分析で検討した研究があります。この研究で注目しているのは,心理的によりよい状態をあらわすウェルビーイングと,活力にあふれており何かに持続的に没頭している状態を指すエンゲージメントという概念です。どちらも,よい心理状態を指す概念であることはたしかです。
これらの概念に本来感がどれくらい関連するのかを検討していきます。この論文を見てみましょう(Living the good life: A meta-analysis of authenticity, well-being and engagement)。
データベースで文献を検索し,502本の文献を手に入れました。そこから絞り込んでいき,最終的に51本の文献が分析の対象となっています。
結果は?
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