超常現象を信じることは幸福につながるのか
ネットとITの普及によって,どんどん超常現象というものは少なくなっていくのではないかと予想していたのですが,なかなかそういうわけにもいかないようです。
海外のYouTubeやTikTokで投稿された恐怖動画の「まとめ動画」を何度か見たことがあるのですが,現代のように動画の加工も簡単でAIでフェイク動画も簡単につくれて,監視カメラも手軽に使うことができる時代でも,「怖い動画」はさまざまにあって,やはり見ると怖いものです。最近の恐怖動画は,幽霊的なものがうっすらとした煙のように映ったりすることが多いんだな,ということも学びました。
超常現象信奉
私は1970年代から1980年代にかけての日本のオカルトブームに,小学生から思春期にかけてどっぷりと浸ってきた世代です。今から考えると本当におかしなブームなのですが,当時,小学生だった私は台所からスプーンを持ってきて「曲がらないかな」と眺めてみたり,いとこと「1999年になったら世界が滅ぶんだよね。そのとき何してるんだろう」と真剣な顔をして会話をしていたものです……。
さて,超常現象への信奉は,現代の西洋社会や日本でも根強く残っています。2005年の調査によると,アメリカ人の7割以上が少なくともひとつ以上の超常現象を信じているそうです。また,人口のかなりの割合が,超常現象を経験したことがあると主張しています。
もう絶版だと思うのですが,『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』(スーザン・A. クランシー著,早川書房,2006年)という本があります。認知心理学者が記憶の研究から「どうしてアメリカ人たちはこんなに宇宙人に誘拐されたと言い張るのか」について書いた面白い本です。「なぜ人は」と書いてありますが「なぜアメリカ人は」としたほうが適切です。たぶん,日本だと違うものになっているのでしょう(つまり,同じ金縛りという現象に対する解釈の文化的な違いです)。
適応か不適応か
超常現象を信じることは「不適応的」だとされがちなんおですが,必ずしも超常現象を信じる傾向は,心理的な適応の低さや幸福感の低さに関連するわけではないことがわかっています。精神病理学的な特徴をよりもつ人たちの間では,超常現象を信じることが不適応や幸福感の低さにつながる可能性が高いのですが,一般の人々ではそうではない,という複雑な関係性もありそうです。
このあたりの複雑な関係性について,大規模に検討した研究があります。こちらの論文を見てみましょう(Variations in positive well-being as a function of the interaction between paranormal belief and schizotypy)。
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