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文化的なルーズさと投票行動

割引あり

政治の世界は「自分たち」と「あいつら」と二極分化しやすい特徴があります。アメリカの政治も,妥協と協力は弱さや幸福,敗北と受けとめられる傾向すら見られるそうです。



愛着

生まれて初期の社会的な経験によって,愛着は発達するとされています。愛着というのは他者との絆のようなもので,対人的な機能の重要な枠組みです。また愛着のパターンは,自分と重要な他者との間の内的作業モデルと呼ばれる心的表象に基づいて形成されると言われます。幼少期に培われた内的作業モデルは,成人した後でも重要な人間関係のなかで表出されます。

愛着のパターンは,不安と回避という2つの次元に整理されます。

◎不安:他者に対して肯定的な見方をし,自分自身に対しては否定的になる。分離や見捨てられることに対して反応しやすく,過剰に安心感を求めようとする。
◎回避:無反応な養育者との間で形成され,他者からの感情的な支援を受けることにネガティブな態度を取る。

政治と愛着

政治的な環境というのは,異なる政党メンバーとの間の対立やストレスを伴います。また,異なる立場であってもすりあわせを行ったり,相互に交流する必要も出てくる場です。このような場面でも,愛着が重要な役割を演じると考えられます。

たとえば愛着不安の高さは,集団が受け入れてくれるかどうかを頻繁に心配して確認したりする傾向に関連すると考えられます。また,他者との接近を過剰に気にすることから,このような人物の意思決定は他者からの影響を大きく受けると考えられます。

回避型の愛着スタイルは,他者を信頼することが難しく,感情的な距離や自立へと向かう傾向があると考えられます。たとえ集団の結束力が高くても,回避的な人物のネガティブな認知は発揮され,メンバーとの間に対立構造が形成される可能性もあります。

文化

加えて,私たちの文化的背景についても考える必要があります。ここでは,政治に関連する文化的な枠組みとして,文化的なタイトさ,ルーズさに注目します。

文化的にタイトで厳しいところでは,規範への遵守が強く,投獄率が高く,市民的自由のレベルが少なく,一人当たりの違法薬物使用力も少なく,暴飲暴食も少ないという報告があるそうです。

対照的に文化的にルーズで緩い地域では,規範が強くはないのですが社会的に不安定でホームレスも多く,いずれの文化であっても住みやすい面と住みにくい面が両立します。

アメリカの州レベルで文化的なタイトさ,ルーズさを見ると,愛着スタイルと政治的なスタイルとの間の関係性を調整するような役割を演じると予想されます。タイトな文化では,超党派的な取り組みは逸脱行為にみえますので,回避的な政治家にとってはより困難を感じるかもしれません。また不安の強い政治家は,集団に受け入れられたいという気持ちをより強くもつ可能性があります。

一方でルーズな文化のもとでは,超党派的な動きは受け入れやすい土壌があります。回避的な愛着スタイルを持つ政治家は超党派的な取り組みを受け入れやすい可能性があります。


愛着と文化

このように,愛着と文化の組み合わせが,政治家たちの行動にどのように関連するかを検討した研究があります。どのような結果が見られたのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Every vote you make: Attachment and state culture predict bipartisanship in U.S. Congress)。

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