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ワクチン接種に対する開放性と陰謀論との複雑な関係

地震が起きても,原発事故が起きても,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が起きても,必ずといっていいほど広まるのが,一種の陰謀論です。

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が行われる中でも,さまざまな説が世の中に広まりました。それは日本だけではなく,世界中でかなりの割合の人々が,医療従事者や医療研究者への不信感,ソーシャルメディアやネット上のワクチン関連の情報の拡散など,さまざまな理由からCOVID-19ワクチンの接種に消極的で,接種を躊躇するようになっていました。

個人の判断

ワクチンを接種するかしないかは,たとえ政府や自治体が推奨したとしても,最終的には個人(や養育している親)の判断です。個人の判断に委ねられているということから,心理学の分野ではこの判断の背景にある要因についてさまざまな研究が行われてきました。

そして,パーソナリティ心理学関連では,ワクチン接種の態度に関連するパーソナリティ特性についても数多く研究されてきています。

◎神経症傾向と勤勉性の高さが,ワクチンに対するネガティブな態度に関連

この関連については,けっこうはっきりしているそうなのですが,一方で,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの開放性については,結果がバラバラしていそうです。

◎開放性の高さがワクチンの安全性への信頼性の低さに関連
◎開放性の高さはワクチンを躊躇する傾向に関連
◎開放性の高さはCOVID-19ワクチン接種への意図の高さに関連
◎開放性が高い人々が居住する地域ではワクチン接種率が高い

いったい,ワクチンを接種しようとする方向なのかしない方向なのか,どっちに関連するのか……よくわかりませんね。

陰謀論に対する信念

ビッグ・ファイブ・パーソナリティの開放性は,好奇心の強さ,保守的ではない政治的志向,自由な思考を許容する傾向などに関連します。ここでひとつ重要な観点は,陰謀論との関連です。

陰謀論というのは,重要な出来事や社会の結果について,害をもたらそうとする意図をもつ人々や組織によって表に表れない陰謀が関係しているという信念のことを指します。そして開放性は,陰謀論の信念に強く関連していることが知られています。開放性の高さは珍しい考えに興味を抱き,それを受け入れる傾向があることに関連しています。ですから,突飛な考え方であっても受け入れやすい傾向があるのです。

では,実際に開放性と陰謀論,ワクチン接種との関連はどのようになっているのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Openness buffers the impact of Belief in Conspiracy Theories on COVID-19 vaccine hesitancy: Evidence from a large, representative Italian sample)。

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