
親子の外向性の相関係数はどれくらいなのか
「親と子で,性格はどれくらい似ているのだろうか」
とても素朴な疑問だと思うのですが,じゃあ「どれくらいか」と尋ねられても,答えるのは難しそうです。皆さんはどう思うでしょうか。
似ている
ここで重要なのは,「似ている」をどのように考えるかです。
私たちはついカテゴリ的に捉えてしまいますので,たとえば「外向型」か「内向型」かで性格を捉えがちです。すると,どんなことが起きるでしょうか。
◎親「外向型」……子「外向型」 → 似ている
◎親「外向型」……子「内向型」 → 似ていない
◎親「内向型」……子「外向型」 → 似ていない
◎親「内向型」……子「内向型」 → 似ている
この4種類で考えて,たまたま自分自身や自分の近くに似ているペアがいれば「やっぱり似るものなんだな」と考えて,たまたま自分の近くに似ていないペアがいれば「やっぱり似ないものだな」と考えがちになる,ということが,よく見られることです。
連続
実際には,外向性と内向性は数直線の両極のように捉えることができます。人びとを数直線の上に並べて,「程度」を考えるというやり方です。先ほどの「型」で考える類型論に対して,特性論と呼ばれる考え方です。
そして,連続的に捉えると,横軸に父親(母親)の外向性,縦軸に子どもの外向性をとって,ひと組のペアを点で表現する散布図を描くことができるようになります。もしも親がより外向的であるほど子どもも外向的,親がより内向的であるほど子どもも内向的,という関係が見られるのであれば,散布図で描かれる点は右肩上がりで,より細い線に近づいていきます。たとえば下のグラフのように。相関係数が0.30,0.60,0.90となるにつれて,グラフの点が細い集まりになっていきます。
外向性
なお,外向性というパーソナリティ特性は,精力的で活動的,強い刺激を得ることが好きでひとりよりも集団でいることを好み,ポジティブな感情を抱きやすい傾向をもつ特徴があります。
ビッグ・ファイブ・パーソナリティの特性のひとつとしても知られていますし,歴史的にも非常に古くから研究されているパーソナリティのひとつです。精神分析学者ユングは「外向型」「内向型」と,人びとを分類するタイプとして捉えており,このユングの理論は最近流行のMBTIにも受け継がれています(ただし,ユングの外向型,内向型の説明は,今研究されている外向性の内容とは少し違っているのですが)。
現在の研究では,外向性の中心的な特徴は「報酬依存」ではないかとも言われています。刺激を求めて,刺激が得られると強く反応し,快感情を抱く,だからこそ刺激を求めて外に出るし,活発になるし,人と会うのが好き,という行動に表れてくるという考え方です。たぶん,ユングの考え方とは違うように思います。
親子の相関
さて,最初の疑問に戻るのですが,親と子で外向性にはどれくらいの関連が見られるものなのでしょうか。
今回紹介する研究は,本当は双生児を研究対象とした行動遺伝学の研究で,外向性に対する遺伝や環境の影響力を検討するものです。でも,この中に親子の相関についても報告されていましたので,今回はその部分だけピックアップして,確認してみたいと思います。こちらの論文を見てみましょう(Non-additive and Additive Genetic Effects on Extraversion in 3314 Dutch Adolescent Twins and Their Parents)。
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